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朝の柔らかな陽光がカーテンの隙間から差し込み、俺を優しく包み込む。
(ん……もう朝か……)
俺は軽く伸びをして体を起こした。
隣の枕に手を伸ばすと、もう既に冷たく、空っぽだった。
いつものように、日本が先に朝食を準備しているのだろう。
ベッドから降りると、キッチンからほのかな出汁の匂いが漂ってくる。
俺の好みに合わせて、毎朝薄めに作ってくれる、あの味噌汁だ。
俺は寝間着のままキッチンへ向かうと、白い割烹着を身に纏った菊がフライパンで卵をひっくり返していた。
左手でフライパンを支える指先に、結婚指輪が静かに光っている。
「お早うございます、アーサーさん。今日の卵焼きは少し甘めに作ってみましたよ」
振り返った菊が微笑む。
その笑顔に、俺の心は溶ける。かわいい。
「モーニン、菊。しかしなあ、よく毎朝こんな早く起きれるな。もう少し寝ていてもいいんだぞ」
本当のことを言うと、菊の温もりを感じながら一緒に目覚めたいのだ。もちろん本人には言わないが。
そう言うと、菊はふふっと笑みを溢す。
「いいんですよ。私、アーサーさんと一緒に朝食を食べるのが、一番の幸せですから」
その言葉にじんわりと胸の奥が温かくなる。ああ、菊。好きだ。
「それはそうと、昨夜はずいぶんとお楽しみでしたね。
私、腰がまだズキズキしてるんですよ。爺に無理をさせるなんて……アーサーさんのおたんこなす」
頬をぷくりと膨らませて言う菊に、言いようがない愛しさを感じる。
……まあ、それは、菊が可愛すぎるせいなんだけれども。
「悪かったって、今夜は優しくするから、な?」
後ろから抱きつき耳元で囁くと、菊は顔を真っ赤にして、何かモニョモニョと呟く。
後半はうまく聞き取れなかったが、同意ってことでいいだろう。
「〜〜もう、早くしないと会社遅れますよ!!」
ちらりと時計を見ると、出発時刻の30分前を示している。
いけない。もうこんな時間か。
朝食を終え、コートを羽織りながら玄関へ向かった。
菊も割烹着のままついてきて、俺のネクタイを直してくれる。
「アーサーさん……今日も一日気をつけてくださいね」
少し寂しげな様子に、俺まで悲しくなってくる。
ああ、できることなら会社になど行かず、ずっと菊のそばにいたい。
「もちろんだ、できるだけ早く帰ってくる。今夜もたっぷり可愛がってやるからな」
菊は照れながら「はい……」と言うと、ちゅ、っと俺の口にキスをした。
最初の頃は、破廉恥であるやらなんやらと言って恥ずかしがってしてくれなかったが、最近は自分から出社前のキスをしてくれるようになった。菊が俺色に染まっていくようで、大変嬉しい。
「じゃあな、お前も気をつけるんだぞ」
名残惜しく唇を離すと、鞄を受け取り、ドアを開けた。
菊が微笑みながら手を振る。ああ、お前をここに一生閉じ込められたらなんて幸せだろう。
誰にも邪魔されず、ここでずっと俺と愛を育むんだ。この幸せが永遠に続けばいいのに。
「じゃあな、菊」
カチャリ、この二人だけの愛の巣を守るように、鍵を閉めた。