今日は珍しく阿部ちゃんがご飯に誘ってくれた。
付き合いは長いけど最近2人ってあんまりなかったし、少し緊張する。
緊張をほぐすためにスウェットとサンダルとキャップで行ったら、身綺麗な阿部ちゃんが現れてすっぽかして帰ろうかと思ったくらいだ。
💚「翔太らしくていいじゃん」
そう言って笑う阿部ちゃんは綺麗だ。
昔からこのグループの中にいて、みんながいかつく尖ってた時期にもずっと綺麗で優しかった阿部ちゃん。
あんまりに1人穏やかで雰囲気が違いすぎるから、影で『顔可愛いし性欲処理担当なんじゃね』なんて言われてるのを耳にしてはそいつら端からシメてたっけ。
そんな可愛いをどんどん更新して、年齢も重なって、ずっと一緒にいるのに会う度に素直に今日も綺麗だなと思う。
そして、綺麗な格好をしてきたにも関わらず阿部ちゃんは俺のリクエストで焼肉に連れて行ってくれた。
国立の思い出やドラマの事なんかを話しながら、俺の胃袋に肉が吸い込まれるのを阿部ちゃんはニコニコしながら見てサラダを食べている。
💙「阿部ちゃんも食えよ」
💚「うん、ありがと」
勧めるとやっと肉に箸をつけた。気付かず1人でバクバク食べていたのが恥ずかしくなる。
デザートを注文して、店を出たらどこどこのカフェでコーヒー飲もうなんて話の中で、俺は急に思い出した率直な疑問を口にした。
💙「てかさ、阿部ちゃんと2人って珍しかったよな。なんかあったの?」
💚「それなんだけど」
阿部ちゃんは後ろに置いていた紙袋から何か取り出した。
中から出てきたのは、青い小さな花のブーケ。
💙「え、結婚すんの?」
💚「何でだよ。これ、翔太に渡したくて」
💙「俺に」
阿部ちゃんは、この小さくて青い花を勿忘草だと教えてくれた。
💚「今勿忘草が最盛期らしくて、翔太の色で綺麗だったし花言葉が…」
阿部ちゃんが話している間、青い花束を持つ姿がまた一段と綺麗で思わず見とれて、話を途中から聞き逃した。
💚「…翔太?」
💙「えっ、あっ、ごめん。考え事してた…」
そう言って見た阿部ちゃんの顔は真っ赤で、俺が話を聞いていなかったんだと解るともっと赤くなった。
💚「もう、2回は言えない…」
💙「えっ何、あの俺」
💚「とにかく、翔太にこれあげるから!」
半ば押し付けられるように花束を渡され、阿部ちゃんはバタバタと個室の外に行ってしまった。
トイレかなと思いながら待っていたら、店員さんが来て『お連れ様が先ほどお会計を済まされまして、御用がおありとのことで先に帰ると言付かっております。タクシーをご準備いたしましたので』と言われた。
悪いことしちゃったのかな、なんて思いながらタクシーに乗って花束を眺める。
ふと、花言葉が…と言っていたのを思い出してスマホで調べ、阿部ちゃんが真っ赤になった理由がわかった。
奇しくもタクシーが阿部ちゃんの家の近くを通ったので、慌てて降ろしてもらって電話をかけた。
💙「阿部ちゃん!」
💚『翔太、帰れた?』
💙「俺、今◯◯にいる。阿部ちゃん家この辺だったよな?」
💚『えっ』
💙「ちゃんと聞いてなくてごめん。車の中で花言葉調べて、会いたくて」
💚『…それって、OKってことでいいの?』
💙「バカ、会って言わせろ」
すぐ行く、と言って電話が切れ、少しして『ごめん、◯◯のどこ?』とかかってきた。
綺麗で隙がなさそうなのに抜けているところも魅力だ。
勿忘草の花言葉を知り、俺は自分の気持ちを自覚して、同時に阿部ちゃんの気持ちも知った。
会ったら抱きしめよう。そして、素直に俺も好きだって言おう。
心の中で何度もイメトレをした。
終
コメント
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阿部ちゃん言い逃げしてるし、追いかけるの大変だなw
あ〜💦もう〜💦 しょっぴー!追いかけてくれて、ありがとう🙏💖