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「……はぁ、マジで散々な一日だった……」
トレーニングを終え、ようやく自分の部屋に戻った潔は、ベッドに倒れ込んだ。
朝の食堂での、あの「四方八方からの耳元攻撃」のせいで、一日中頭がふわふわして練習に集中するのが大変だったのだ。特に、玲王の前で思わず口走ってしまった「イッちゃう」という言葉を思い出すたびに、顔が沸騰しそうになる。
(……あれは、その……御影家の儀式の副作用だ。そうに決まってる。……寝よう。寝て忘れよう)
潔が毛布を被り、意識を手放そうとしたその時だった。
コン、コン、と控えめだが断続的なノックの音が響く。
「……ん、誰だよ、こんな時間に……」
身体を引きずるようにしてドアを開けると、そこには巨大な白い塊——ではなく、ジャージ姿で枕を抱えた凪誠士郎が立っていた。
「……潔。……一緒に寝ていい?」
「は? なんでだよ。自分の部屋あんだろ」
「……玲王が、なんか怖い。……さっきから部屋で『潔の耳……潔の……』ってブツブツ言いながら、ずっとスマホで『耳 感度 開発』とか検索してて、落ち着かない」
「あいつ何調べてんだよ!?」
潔は戦慄した。やはり御影家のマナー教育は、さらに深淵へと向かっているらしい。
「……それに、朝の潔の声……。あれから、俺もなんか寝付けない。……潔の隣なら、安眠できそう」
凪は眠そうな目をさらに細め、大型犬が甘えるように潔の肩に頭を預けてきた。
自分より15cmも高い図体でこれをやられると、なかなかの圧があるが、凪の無機質な体温はどこか落ち着く。
(……まぁ、凪は弟みたいなもんだしな。……俺よりデカいけど。……これ以上拒否して、玲王が部屋に突っ込んできても面倒だし……)
「……わかったよ。今日だけだぞ」
「……ん。潔、優しい……」
潔が道を開けると、凪はのそりと部屋に入り、当然のように潔のシングルベッドを占領した。
潔も溜息をつきながら、狭いスペースに潜り込む。
「……潔、あったかい」
「お前がデカすぎるんだよ、凪。……ほら、寝るぞ。おやすみ」
「……おやすみ、潔」
凪の長い腕が潔の腰に回され、背後から抱き込まれるような形になる。
潔は「やっぱりデカいな……」とぼんやり思いながら、凪の穏やかな寝息に誘われ、ようやく深い眠りに落ちようとしていた。
……が、それは安眠の始まりではなかった。