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第4話 絶望の底の夢
時間が3ヶ月ほど進みます。
「抱負を書く…か」
毎週月曜日の朝、看護師の人が朝食と一緒に持ってきてくださるお便り。
そこには、もうすぐ年を越し、新年を迎えるということが書かれていた。
病院に入院していて、外に出られないと、
テレビと、病室の窓と、カレンダーからしか季節がわからないのだ。
ふと外を見てみると、はらはらと雪が舞い落ちていた。
「わぁ…‼︎雪だ…‼︎」
僕にとって、雪は幻に近い。 触れることもできないし、冷たいことしかわからないから。
雪を見ていると、うわずった声になってしまう。
窓辺の椅子に座って見惚れていると、部屋のドアがノックされた。
「失礼します〜」
ガラガラとドアが開いて、ドズル先生が入ってきた。
「先生見てください、雪‼︎」
「雪だね…‼︎おんりー君、雪好きなの?」
「はい…‼︎」
「いいなぁ…雪…」
思わず、じっと見惚れてしまう。
「そういえばおんりー君は抱負書いた?」
おんりー君は、じっと窓の外を見つめて、小さい声で呟いた。
「抱負…かぁ…」
「抱負とか…ないや…」
「僕って、ずっと入院してるじゃないですか?退院もできない、外出もできない…」
「みんなみたいに、学校にも行けないから…」
「…目標とか、ない…です」
「…すみません、こんな事ばっかり話して。」
彼は、僕から顔を背けてしまった。
優しく背中を撫でて、病室を出た。
「…抱負…外に出たいな…」
叶わない夢のことをひたすら考える。
雪も溶けて、大晦日になった。
僕はキッズスペースの子達の様子見や、遊びに付き合ったりしていた。
この後はおんりー君の様子を見に行こうかなぁ。朝はとても調子良くて安心したな…とか、おんりー君について考えている。
その時、 PHSに着信が入った。電話に出ると、切羽詰まった看護師さんの声。
「おんりー君が、部屋にいません‼︎お手洗いや、他の病室、他の病棟も全て複数人で探しましたが、どこにも居ません‼︎」
「…‼︎部屋の窓は開いていました?」
「…はい、抜け出したかもしれません…‼︎」
そんな馬鹿な。
あの子は呼吸器系と心臓がとにかく弱い。
院内で着ているような薄い服だけで外に出れば、10分で倒れてしまう。
それに、彼が居る病室は2階にある。
窓から脱走するというのは、かなり危険だ。
どうやって抜け出したのだろうか?
とにかく、彼を探す為、急いで外に出た。
次回、きっと2000文字行きます。
お楽しみに‼︎