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[彼女目線]
人混みから少し離れた中庭わき。
ゲーム研究会の展示を見ようとして立ち止まった時だった。
「ねぇ、すごい可愛いじゃん。何組?」
知らない男子が急に横から話しかけてきた。
「え、あ、えっと──」
「一人?案内してあげよっか?」
ちょっとしつこい。
笑いながら距離を詰めてくるのが怖い。
(研磨、どこ行ったの……
さっきまで横にいたのに……)
「ねぇ、LINE交換しよ?」
「す、すみません、人待ってて……」
言っても引かない。
「別にちょっとくらい──」
「…………何してんの」
背後から小さく落ちた声。
振り向くと、
研磨が立っていた。
無表情。
でも目だけがいつもより鋭く細くなってる。
「……その子、嫌がってるよ」
他校の男子は苦笑した。
「いや、別に嫌がってないっしょ?
ちょっと話しかけただけ──」
研磨は静かに、ふわっと前に出て私の手首を掴んだ。
その指がかすかに震えてる。
「……下がって。
1人にしてごめん」
私の方を見て、困り顔になりながら。
私は研磨の手に指を絡めて
「……うん」
答えた瞬間、
男子が「まじかよ」と舌打ちしながら距離を取る。
研磨はそれをじーっと見つめたまま、
ぽつりと落とす。
「……人の気持ち、読めないのに、
近づかないほうがいいと思う、けど」
怒ってる声じゃない。
でも“絶対に許していない”のが伝わるほど冷たい。
男子はその空気に耐えられず逃げていった。
二人きりになった瞬間、
研磨は無言で私の手を握り直して、指を絡めてきた。
「……こわかったでしょ」
小さな声。
眉がほんの少し寄っている。
「でも、……ごめん。
人、多くて……目、離した」
首元に顔を寄せてくる。
(研磨、珍しくくっついてくる……)
「……もう、離れないから。
ちゃんと、守るからね」
その“静かな執着”が胸にうずくほど優しかった。