テラーノベル
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春休みが終わって、新学期が始まる。
今日から、高校三年生。
新学期が始まると、受験と青春の日々で、世間一般は喜ぶだろう。
それでも、僕にとっては、地獄の一年でしかない。
心臓病となって、夢を叶えることも出来ず、未来もなく、ただひたすら死ぬのを待つことしか、僕には出来ない。
だから、本当は、新学期なんて来てほしくなかった。
学校では、何事もなかったかのように過ごす。
先生は、心臓病であることを知っているが、他の生徒たちは知らない。
「るぅちゃーん!!今日体育だって✨️」
そう言って目を輝かせるのは、幼稚園からの幼馴染である莉犬。
「そうだね(笑)」
「一緒に走ろ!」
そう、笑顔で言われるけど、僕は運動することも出来ない。
「ごめんね、膝を怪我しちゃって、運動できないんだ。」
適当な言い訳をする。それでも、純粋な莉犬はそれを信じてくれる。
「分かった!!治ったら、一緒にやろうね。」
去っていく莉犬の後ろ姿を見ながら僕は_、
「治る日なんて、一生来ないのにボソッ」
体育が終わって、数学の授業中。
僕にとっては、なにの意味もない、つまらない授業だ。
<ワーワー
なんとなく、騒がしくなっている、外を見やる。
サッカーをやっているみたいだ。
僕には、皆がキラキラと輝いて見えて、なんだか、やるせない気持ちになってしまった。
「外見てると、起こられるで!コソッ」
そう言って、小声で耳打ちしてきたのは、莉犬と同じく幼馴染のジェルくん。
昔は、よく、三人で遊んでいた。
「分かってます…」
そう言うけど、僕は授業を聞く気なんてさらさらない。
仕方なく、前を向いて、なんとなくノートを開く。
そう言えば、新曲を書いてみようかな。
なんて、ふと思って、ノートに歌詞を書きつづる。
しばらくして、チャイムが鳴って、僕はお弁当を持って屋上に行こうとする。
「あれ?るぅちゃんどこ行くん?」
ジェルくんに聞かれて、僕は立ち止まる。
「屋上に行こうかなって思って。」
「そっか、今日は一緒に食べないの?」
莉犬にも続けざまに質問される。
「うん、ちょっと一人になりたい気分で、」
適当に理由をつけて、去る。
去り際に、二人がなにか言いかけてたけど、それを無視して屋上に向かう。
一人、イヤホンを付けて、屋上に座り込む。
僕が書いた曲を聞くのが、最近では生きている中で一番楽しい時間だと思った。
ふと、前を見やると、一人の男の子が居た。
確か、数学の授業中に外に居た気がする。
水色の髪で、一際輝いて見えた子で、いつの間にか目で追っていた。
そんな子がため息を付きながら、手には紙を握りしめている。
僕がかすかに見えた字は『遺書』と書かれていた。
しばらく、その場に立ってから、フェンスに手をかける。
でも、やっぱり怖いのか、帰ろうと振り向く。
ちょうど目があってしまう。
気まずくなって、すぐに視線を逸らしたけど、相手から話しかけられる。
「見てた?」
嘘を付く必要はないと思って、正直に答える。
「見てました。」
相手はでかいため息をつく。
「皆には、内緒にしといてね。」
そう言い残して去ろうとするところを、いつの間にか呼び止めていた。
「待ってください!!」
びっくりして振り返る。
水色のきれいな髪がさらさらとなびく。
「死にたいんですか?」
僕の口からいつの間にか、溢れてしまった。
だけど、驚く素振りもなく、普通の返事が返ってきた。
「うん、そうだよ。」
僕は逆に驚き、死にたい理由を知りたくなってしまった。
「なんで、死のうとしてるんですか?」
こんなこと、聞いてはいけないと思っているのに、聞いてしまっていた。
「話すと、長くなるよ。」
「じゃあ、いいです。」
そこまで聞いたのに、長くなると聞いて、僕は立ち去ろうとする。
「いや、聞いていってよ、そこは。」
そう言って、笑う彼。
僕には、それが眩しく感じた。
なんでこんな人が、死にたいなんて思うんだろう?
そんな疑問が浮かぶ。
「生きることに、疲れちゃったんだ。」
彼はそう言って語りだすと、僕の隣に座る。
「いつもいつも、同じ日々ばっかり続いて、」
「いつしか、人生というものに飽きてきて、死にたいっていう気持ちが湧いてきた。」
「でも、いざ死のうってなると、怖くなって。」
「毎日、死のうって思ってくるけど、結局は死ねずに何もなかったように振る舞ってる。」
それだけ言って、無言になる。
そんな、そんな理由で死のうとするなんて、
そう思うと僕は真剣になって聞いたのがバカバカしく感じて、ぶっきらぼうに言った。
「そんな理由で、死のうとするなんて、死にたくないのに、死んでしまう人もいるのに。」
言ってから、ハッとなって気まずくなる。
彼は大きく目を見開いて、それから、
「そっかぁ、そんなこと、考えたことなかったな〜」
彼は立ち上がって、僕の方を見る。
「良かったら、友だちになってよ。」
「僕と一緒に、生きるための道を考えてほしい。」
僕に手を伸ばしてくる彼。
僕の余命はあと一年。だけど、その一年で彼を救うことが出来るのかも知れない。
ちょっとは残りの余生を楽しむことが出来るかも知れない。
そう思って、僕は彼の手を取る。
「いいですよ。僕が君を、楽しませます。」
僕がそう言うと、君は嬉しそうに笑って、
「今更だけど、僕はころん。よろしくね!!」
太陽みたいな笑顔だなって思った。こんな人が死んでしまうのは、もったいない。
「るぅとです、よろしくお願いします。」
これが、余命一年の僕と、死へ急ぐ君との出会いだった_。
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