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#大人の恋
鷹槻れん

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#ハッピーエンド
美凪ましろ
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「よかったら二人で庭を歩いてくるといいですよ」
経理部長がニコニコと私と目の前の男、新宮電機株式会社の専務である新宮海智(しんぐう かいち)を交互に見て言った。
どういうこと?
お見合いの日?
この場面を覚えている、男に騙されて捨てられた翌日に部長に食事会に参加するように言われ、行ってみると専務とのお見合いだった。
あの頃は多少の疑問はあったけど、男に捨てられた悔しさと玉の輿に乗れるということに舞い上がってしまっていた。しかも専務はイケメンの独身で社内の女子の憧れの的だったから。
でも、今思えば違和感だらけだ。
わざわざお見合いなんてしなくてもいくらでも相手に困らないはずだが、必要だったのは人畜無害で子供さえ出来れば簡単に捨てられるような女だったのだから。
この男は今だって夜には社長にバレないようにあの義母(おんな)を抱いているんだろう。
「山口さん行こうか」
そう言って専務は優しそうな笑顔で私の手を取った。
〜回想〜
新卒で新宮電機に入社して、第一営業課長である岸真司(きし しんじ)との交際も広報部の石井さんという女(ひと)に呼び出されるまで順調だった。
でも平穏で幸せな日常が壊れるのは瞬きするよりも速かった。
「山口・・・奈緒ちゃん」
彼女はバカにするような言い方で“ちゃん”をつけた。そもそも、初対面の人にちゃん付けするのはバカにしている様にしか見えないが、それに関して言い返すことなど新人の私にはできなかった。
「わたしのことは解らないんだっけ?」
その問いかけにうなづくだけしかできない。
「じゃあ先にこれを渡しておくわ」
そう言って白い封筒を渡されたので受け取り、裏返してみるとそこには岸真司と石井由貴という名前が連名で書かれていた。
開けなくてもわかる。
披露宴の招待状だ。
なんで
声が出なかった。
「慎司は結婚前に遊びたかったみたい。でももう終わりだから。披露宴に呼んであげる、ちなみにわたしたち3年付き合っていたのよ。3年目の浮気ってやつ?」
「まぁそういうことだから。じゃあ」
勝ち誇った様に笑顔で去っていく石井由貴の後ろ姿を見ていると涙が頬を伝っていく。
手の甲で涙を拭ってから、岸慎司に電話をするとツーツーツーという音が響く、電話中だろうか?もしかするとブロックされた?
今度は、ラインを起動して岸が絶対に持たなそうなLINEスタンプをプレゼントする。
スタンプはプレゼントできなかった。
その後、何度か試みるがプレゼントすることはできなかった。
ブロックされている。
涙が止まらなかった。
付き合ってほしいと言ってきたのは岸課長なのに、私の誕生日だって、課長の誕生日だって二人でお祝いしたのに。
最初から遊びだった。
封筒を開けて中のカードを見ると9月19日11時からと書いてある。
その翌日、経理部長に呼ばれ食事会に出席してほしい、それは休日出勤扱いにすると言われて行ってみるとそれは新宮海智との見合いだった。
〜現在〜
タイミングが良すぎる。
海智やあの女が現場を見ていたということはないと思う。そうなると、海智の秘書である神山圭が見ていたのか、何かしらの方法で知り弱っている私に付け込んだのかもしれない。
私は戻ってきたんだ。
どうせなら、岸課長と付き合う前に戻りたかったが、神様が私にチャンスを与えてくれた。
「結婚を前提に付き合ってくれないか」
レストラン自慢の美しい西洋風ガーデンにあるガゼボで専務は柔かに私に言った。
前回は何を食べたか、何を話したかもわからなくなるほど緊張をして、そしてこの優しい笑顔に惹かれたが、今回は騙されない。
「どうして私なんですか?」
「立場上、早く身を固めたほうがいいということで引っ張り出されたと言うのが本心だけど、山口さんと会って考えが変わりました」
「どう言うことでしょう?」
「一目惚れです」
よく言う。
どうせ気に入られなければこの先あんな結末を迎えることもないし、ここで断ったところでクビにはできないだろうから、言いたいことを言わせてもらおう。
「そんなメルヘン信じるわけがないじゃないですか、本当はもっと違う理由があると思いますが聞きません。ただ、披露宴を9月19日の11時からにして欲しいことと、仕事は結婚後に辞めることを約束していただけるのならお受けします」
海智は一瞬眉が上がる。
どのみち、こんな見合い失敗したって構わない。
前回は岸の結婚が辛くてすぐに退職して新宮家に入った。そこで、家政婦のように使われながら12月に披露宴を行った。
「何か理由でも?」
白々しい、どうせ専務の犬である神山圭から連絡が入っているくせに。
何も答えない私に、含みのある笑みを浮かべ
「俺の理由を聞かない代わりに、君は君の理由を言わないということだね」
「はい」
「解った。じゃあ、それでいこう」
見合いの後、海智は私を家まで送ってくれた、それは前回も同じ。
岸を忘れるために海との結婚を決めたが、優しくて紳士的な海智にどんどん惹かれ愛するようになった。
でも、その優しさの理由を知っている今は、どんなに優しくてもどんなに紳士的でも全てが白々しく感じる。
海智が自らハンドルを握る車内でお互いの呼び方を相談したが、前回はそんな話は出なかった。
きっと、私の言動が変わったことで少し変化しているようだ。
前回ではあの女は海智を“海くん”と呼んでいた。私は、大人な海智を尊敬もしていたから海智さんと呼んでいたが、あんな男の名前を呼ぶのはヘドが出そうだし、あの女よりも親しげな呼び方にしたくて“カイ”と呼ぶことにした。
海(かい)は私のことを前世と同じく“奈緒”と呼ぶことになった。
「急いで式場を探さないといけないな」
「お願いします」
「約3ヶ月、決めないといけないことがたくさんあると思うから時間がある時はなるべく会うようにしよう。結婚前から家に来てくれてもいいけどね」
「ご両親は?」
「同居になるけど、二世帯住宅でつながっているようでどちらも独立した造りだから、構える必要はないと思う。」
「そうですか、わかりました」
もちろん知ってる。逢瀬の為の巧妙な二世帯住宅。
私もあんなことになるまで気づいてなかった。
「でも、結婚式までは同居はしないという約束です」
「そうだったね」
少し語気が強かったのか、この後はお互い何も話すことなく家に着いた。
結婚前に住んでいたマンションの部屋、凄く懐かしい。
ベッドに仰向けになる。
今日は”今日だけ”なのに1日が何年にも感じる。
実際、一度目の結婚生活の四年間を1日でかけ抜けたようなものだから。
前回は婚約が決まって結婚前に仕事を辞めて同居をした。
家政婦の様に使われたが、そんなものかと思っていたが、自分が海の奥さんになれない鬱憤を私を虐めて発散していた訳だ。
気持ち悪い女。
海はマメにデートに誘ってくれて、結婚前は必ず外で抱かれた。
籍を入れるまでは避妊をしようと言ってくれて紳士的だと思った。
でもあれは、あの女に気を使ってバレない様に避妊をしてエッチをしてただけ。
あの家で海はあの女を抱いていたんだから。
まったく紳士なんかじゃない。
性欲の塊じゃない。
今回は婚前交渉は絶対にしない。
そして、海の子供は作らない
私の子供は永遠だけ
永遠に会いたい。
コメント
1件
奈緒さんの「どうして私なんですか?」と問い詰める場面、すごく好きです。前回の人生で飲み込んだ悔しさや違和感を、今度はちゃんと声にできている。それに「披露宴は9月19日11時から」と条件を出すしたたかさ、彼女の成長を感じました。でも、最後の「永遠に会いたい」で一気に胸が締め付けられました…。あの子は一体誰なんだろう。海智の裏の顔も気になるし、次が待ち遠しいです。