テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
.。 .:・.。. .。.:・
日の照りつける、美しい薔薇が咲き乱れる、シカゴはナルシソカジノホテルの庭園・・・
そこにチャックコンチネンタルは一人佇み薔薇に囲まれていた、ダブダブの灰色の作業つなぎに大きな麦わら帽子には、黒いリボンがついていた、チャックは庭の手入れを愛していた、今では一列に並んだ外国品種の真っ白い薔薇が美しく花びらを広げ、その周りに赤や黄のバラまでが、語りかけてくるかのように咲き乱れている
水道の栓をひねり、丁寧に一輪一輪、水をやりながら、チャックは頭の中の問題ごとを一つ一つ整理していった・・・もう何十年も続けている日課だった
そして、ここ数年・・・どうしても彼の頭と心情を悩ませている人物に思いを馳せていた・・・その男の名前は「バジリスト・フランシーノ」イリノイ州でもシカゴの隣のデトロイド暗黒街の、大物の一人として、つとにその名前を知られていた
チャックの使者は以前から双方の組織にとって、有利となるような平等の協力関係をバジリストに提案していた。コンチネンタル側は、その組織と力と警察、並びに政界に対するコネによって、バジリストの賭博と売春事業に強力な援護を提供することが出来るし、その代わりにバジリスト側はデトロイドの一角に、コンチネンタルの武器密輸の確固とした足場を提供して欲しいというものだった
しかし、バジリストは目先のことにしか頭の働かない男で、チャックのこの申し出をにべにもなく拒絶した、自らの力の組織と兵隊と膨大な軍資金を持っているバジリストは、根っからのギャング気質で、真のマフィアの中でも警察と政治家に精通し、合法商業に世評のあるチャックを「腰抜け」とバカにしていた
そして、このバジリストの拒絶こそが、チャック率いるコンチネンタルファミリーが新しく事業として拡大しようとしている武器密輸に、大きな癌としてはびこっていた
さらにバジリストは、市民に対する威圧的な態度や犯罪で私服を肥し、バジリストの構成員は我が物顔で街を闊歩し、高額なシャバ代を払えない店を壊して回ったり、家賃の払えない住人から無理やり家を取りあげたりとやりたい放題で、街は廃れ、観光客の足は遠のき、まっとうな職にありつけない人間がゾンビのように街中に溢れていた
コンチネンタルとバジリスト勢の小さな小競り合いは日常茶飯事で、今やバジリスト管轄の住民が、引きも取らずチャックの元に連日助けを求めて訪れている始末であった
そして・・・とうとうチャックは、長年続けて来た和平交渉を決別する決意を固めた
チャック・コンチネンタルの、必殺の一撃を打ち込む時が来たのだ
彼の唯一の心の安らぎの場の丹精込めて育てたバラ園に佇み・・・チャックは未来と自分の運命を憂いて祈り、一輪また一輪と赤い薔薇の花を摘みながら祈りをささげた
「神よ・・・私の聖なる使者が、滞りなく使命を果たせるように・・・どうか導きたまえ・・・」
.。 .:・.。.
「もし失敗したらひどくなるかな?」
ジャスティンが尋ねた
「とてつもなくひどいことになるだろうな」
クーパーは大きくタバコの煙を、歯の隙間から吐いた
「つまり、それはコンチネンタルとバジリストの全面戦争ということだな」
「他のファミリーがいくらコンチネンタルにつくと言っても、少なくとも見積もってこの戦争は3年は続く、この冬は衛生課の連中は、多くの死体をミシガン湖に投げ捨てることになるね」
クーパーは肩をすくめてみせた、そしてニコチン中毒の彼は二本目に火を付けた
「十年かそこらに、一度必ずこういうことが起こるもんさジャスティン、それが悪い血を取り除いてくれるんだ、ゴッドファーザーは多くの血を流さずにこの戦争を終わらせようってんだ、どんな小さな事であれ、相手の言いなりになっていたら向こうはつけ上がって何もかも欲しがるようになるんだ、お前の仕事は芸術的に美しいとゴッドファーザーから聞いている、期待してるよ、首尾は全部覚えたかい?」
「すべて頭に入っているよ」
ジャスティンが無表情で応えた
「幸運を祈るよ兄弟」
クーパーは三本目のタバコに火を付けた
コメント
1件
うわ、このエピソード、まるでハードボイルド映画のワンシーンみたいですね。チャックがバラ園で水やりしながら、頭の中で冷たく戦略を整理しているギャップが痺れます。一番印象に残ったのは「一輪また一輪と赤い薔薇の花を摘みながら祈りをささげた」という描写。美しいものに手をかけながら血の匂いのする決断をする——その背中にゾクッと来ました。全面戦争の空気もひりひりしてて、この先どう転ぶか、続きが気になります!
柊トワ
2,825
#サレ妻
都築七美
763
117