テラーノベル
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ジャスティンはさびれた最上階のビジネスホテルにいた
熱めのシャワーを浴びて、バスタオルを腰に巻いて、マルボロのタバコに火を付ける・・・朝から頭痛がする・・・鎮痛剤のアスピリンを二錠、口に入れてかみ砕き、薬が早く効いてくれるのを待っていた
赤い夕陽が大きな窓からジャスティンの肌を赤く染めていた、そこから黒のTシャツに黒のジーンズに着替え、ホテルに入る時に着て来た服を丸めてダッシュボードに放り込んだ
部屋の灯りを消し、そこから長い時間待った・・・じっと窓枠に腰かけ・・・石のように動かず・・・ただひたすら赤い太陽が地平線に沈んで行くのを待った
午後十時、辺りに動きがあった、銃声の音が激しく鳴り響き、目下の通りを見るとマフィア同士の抗争が起こっていた
この地域一帯に良くある光景だった、誰も火の粉がかかるのを嫌がって、警察さえもこの界隈には近寄らない、人々は一歩も家から出ず、ただひたすらおかしなチンピラ達がどこかへ消えてくれるのを待っていた
しかし今日は例外だった、激しく打ち合っている中心に 「バジリスト・フランシーノ」がいた、二人の構成員に包囲されて、怯えもせず壁際に立っていた、もちろんこの打ち合いは、酔っ払ったチンピラがバジリスト達に絡んで始まったことだが
実はこれがコンチネンタルが仕掛けた、この場所にバジリストを誘い込むためだけのものとは、誰も知らなかった
ジャスティンの目はバジリストを捉えた、大柄でロングコートを着て我が物顔で銃を撃ちまくっている、その風貌はいかにも悪党に見える、チャックとは大違いだ
もう頭痛は消え、ジャスティンの頭は冴えていた、ありがたいことにバジリストの動きは鈍かった、止まっている的を撃つようなものだ
―ドキン・・・ドキン・・・―
自分の心臓の音が聞こえる・・・何度か深呼吸をし、反動に備えて腕を伸ばした、遥か数十メートル下の地上で派手に抗争相手に銃をぶっぱなしているバジリストの頭に焦点を定めて、ジャスティンは反射神経よりも素早く引き金を引いた
ズガ―――――ンッ
弾丸は数メートル下にいるバジリストの眼の横を綺麗に貫通し、反対側に目玉が飛び出した
バタリと倒れたバジリストの周辺には血だまりができ、激しく打ち合う中、部下が駆けつけた時はバジリストの命の灯は消えていた
仕事は終わった、ジャステインは素早くカーテンをサッと引き、エレベータ―を使わず駆け足でホテルの裏側に出た、誰も後を付けていないし、誰もジャスティンの事を気にしていなかった
ジャスティンが角を曲がると、ヘッドライトがチカッと灯り、古ぼけたセダンが近づいてくるなりドアがサッと開いた、すかさず車に飛び乗ると、車は轟音と共にその場を去って行った
その間、数分・・・彼らを誰も目にした者はいなかったし、実際、この古ぼけたセダンはどこにでも走っている普通の車だった、運転席にいるのはクーパーだった、彼は火の付いていないタバコを口に咥えて聞いた
「バジリストをやったかい?」
「やったよ 」
ジャスティンが答えた
「確かかね?」
クーパーがタバコにライターを近づけた、返事次第で吸おうかどうしようか考えているようだ
「目玉が飛び出るのを見たよ」
ジャスティンは答えた、すがなくクーパーはタバコに火を付けた、足のつかない銃はクーパーに渡し、車の中にはジャスティンの着替えが置いてあった
.。 .:・.。.
一時間後、ジャスティンは自分の服に着替え、ミシガン湖のふもとに停めてある、コンバーチブルを運転して帰路に着いた、その頃にはジャスティンの頭痛は再びピークに達していた
ガチャ!「おっかえりぃ~~~♪ ジャスティン! 」
ドアを開けた瞬間、真っ赤なバラの花束を抱えた竜馬がジャスティンの視界に飛び込んできた
「さっき!チャックから届いたんだよ! 見て!綺麗でしょ~♪ ジャスティン今日お誕生日だったの?言ってくれればよかったのに 」
竜馬が大きな花束を抱えて、上機嫌でくるくる回っている
「本当にチャックって優しいね、一従業員のお誕生日にこんな素敵な花束を贈るなんて、ほら!君にメッセージカードもついてるよ」
そう言って竜馬がジャスティンに赤い薔薇の花束の中に刺さっているメッセージカードを見せた、ジャスティンはカードを見つめたそのカードにはチャックの筆跡で
―Great―(すばらしい)
と一言だけ書かれていた・・・一瞬赤い薔薇の花びらがバジリストの飛び散った血に見えた・・・ジャスティンは息が出来なくなった
「ジャスティン!! 」
バサっと床一面にバラの花が散らばった、グラリとジャスティンがよろけ、間一髪で倒れる所を竜馬が支えた、見るとジャスティンの顔は真っ青だった、額から冷汗を流し、咄嗟に竜馬を突き飛ばしてバスルームに駆け込み、便器に顔を突っ込んで吐きだした
「ジャスティン!大丈夫?」
竜馬は必死でジャスティンの背中を撫でさする、やがて出るものを全部出してぐったりとしているジャスティンの口を、竜馬が水ですすいでやった、ジャスティンは何も力が入らない様子で、彼を背中に背負って竜馬がベッドに連れて行った
「ほら、横になって」
ハァ・・ハァ・・ 「すまない・・・」
ジャスティンは疲れ果てていた・・・竜馬はなんとか彼を支えてベッドの端に座らせた、ジャスティンはまるで自分の部屋を初めて見る場所のように目の焦点は合っておらず、ただ天井をぼんやり見つめていた
「僕に出来ることある?」
心配そうに自分を覗き込む竜馬の真っ黒い瞳を見ているうちに、バジリストの呪縛の様な赤い血はどこかに消えていた
「・・・頭が痛いんだ・・・」
ジャスティンの息遣いは荒く・・・身体ははりつめ、あらゆる筋肉がこわばっていた、竜馬は焦った、常に自信たっぷりの彼がこんなにも途方に暮れて不安そうにしているのをはじめてみた、何とか楽にしてあげたくてガタガタ震える彼の靴を脱がせた
着替えを手伝い、ズボンを脱がし、柔らかいスウェットのズボンを履かせて楽にさせた、冷蔵庫の横の引き出しに入っている 鎮痛剤と水を持ってきて飲ませた
荒い息遣いが少し収まると、竜馬はベッドに入り、ジャスティンに腕枕して後頭部を揉んでやった
「ジャスティン・・・医者を呼ぼうか? 」
あまりに心配で竜馬も不安になる
「医者などいらない、抱きしめて・・・竜馬・・・腕枕して・・・さっきみたいに頭の後ろ揉んで!」
上半身裸のジャスティンが、子供のように竜馬にすがりついてくる
「竜馬・・・・俺にはお前が必要なんだ・・・」
なんだかよくわからないが、ここはジャスティンに合わせた方がいいだろうと竜馬は思った
「傍にいるよ・・・ジャスティン・・・ 」
眉をしかめて苦悩の表情を浮かべているジャスティンの首の付け根を竜馬が必死で揉んだ
「お前だけが・・・」
そう言ってため息をついたあと、ジャスティンは眠りにつき、石のように動かなくなった
コメント
1件
いやあ…読んだ直後、ちょっと息が止まりました。前半の冷徹な暗殺シーンと、家に帰ってからのジャスティンの崩壊っぷりのギャップがすごい。あの“Great”の一言と赤い薔薇が、飛び散った血に重なる瞬間の描写、本当に巧いなと。竜馬が何も聞かずにただ寄り添ってケアするシーンも、優しさが沁みます。この人の内面、もっと知りたくなりました。
柊トワ
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#サレ妻
都築七美
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