ざわつく教室。
机の上に置かれたカッターを見て、皆の視線は一斉になつへと突き刺さった。
「……なっちゃん、本当に……?」
すちが一番に声をかけた。けれどその声音には、怒りよりも戸惑いが混じっている。
「俺は……できれば信じたいよ。でも……さっきの状況じゃ、どうしても……」
苦しそうに眉を寄せるすち。
その言葉に、なつの胸がズキリと痛んだ。
「信じたくないけど……現場を見たら、そうとしか……」
みことも目を逸らす。
らんとこさめも、無言のまま距離を置いた。
さっきまで仲良く笑っていたはずなのに、その一瞬で、教室の空気はなつを拒絶するものに変わっていた。
「違う!俺じゃない……信じてくれよ……!」
必死に声を震わせて否定しても、誰も答えない。
——その時。
「だから、違うって言ってんだろ。」
鋭い声が静寂を裂いた。
いるまが、机をバンッと叩いて立ち上がった。
「なつがそんなことするわけねぇ。俺が一番わかってる。」
真っ直ぐな眼差し。
なつの喉が詰まった。
誰も信じてくれないと思っていたその時に、ただ一人、揺るがない声でそう言い切ってくれた。
「い、るま……」
「安心しろ。俺がいる。」
その言葉に、なつの胸がじんわり熱くなる。
けれど疑いは晴れないまま、教室の冷たい視線は続く。
それでも——。
(大丈夫。いるまが信じてくれるなら、俺は負けない……)
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