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「…っアクアくん…なんで、」

「MEMの奴が、台風の中出掛けて、なのに全然帰ってこないって探し回ってんだよ、だからコンビニまでのルート辿ってたら……」

「…バカ野郎が、」


「ちょっと!君達!危ないでしょ!あんな所に…!何してんのさ!」






ーー〜〜

「……」

「呼ばれた時は色々覚悟してたけど、…よくやったわアクア、誇らしいわよ。他人に興味無さそうにしてて、ちゃんと見てたのね。」

「別にそんなんじゃない。…人は簡単に死ぬ。誰かが悲鳴をあげたら、すぐ動かなきゃ手遅れになる。……タクシー代は後であかねに請求する。」

「…ふふ、ケチね〜?」

「っ、あかね!!」

「…!?」

「…っ何よこんな心配させて…っ!なんでよもう、っ!!そうだんしてよぉ……っ!!」

「……っ、」

「あかね。…お前、これからどうしたい?」

「どうって、?」

「このまま番組を降りるって選択肢もあるってことだ。」

「「!」」

「!、…でも、契約とか…」

「これは、番組側が未成年者を扱うにおいての、監督責任を問われる問題だ。こういう状況になった以上、『辞める』って言われてもとやかく言わないだろう。」

「『黒川あかね』って本名晒して活動してるんだ。引き時はちゃんと自分で見極めろよ。」

「……私、もっと有名な女優になって、これからも演技続けていきたい…そのために頑張ってきた、…みんなにもいっぱい助けて貰って、…っでも、こんなことになっちゃって……」

「、あかね…」

「、怖いけど…っ、すごく、っ怖いけど……っ!…続ける、このまま辞めたくない!!」

「分かった。」

「だってさ。問題無いよな。」

「当たり前だろ?」

「最初からそう言ってるんだけどなぁ、」

「私達もできる限りフォローするから!」

「…仲がいい現場なのね」

「まぁ同年代だけの現場だからな。多分皆で協力して、色々言われながらも番組やりきるだろうよ。」

「…でも、このままってのは気分悪いよな。」


「煽った番組サイドも…好き勝手言うネットの奴らにも…」


「腹が立ってしょうがないんだよ。」


警察署には、記者クラブというものがある。各報道機関の記者が、24時間、最新情報を受け取るために待機していて、今か今かと、新ネタを待ち望んでいる。


ーー〜〜

「……やったわねあんた、褒めた私が馬鹿だったわ、…着地点は見えてるんでしょうね?」

「あぁ。…上手くいくかは分からないけど、……ここからが本当の『リアリティショー』だ。」

あかねの自殺未遂のニュースが流れ、界隈では様々な議論が起こった。

もちろんそれで引くやつも居るが、新たな火種に中傷も加速。

「注目度が上がってプラマイゼロ、…こういうのは、炎上対策としていい手とは言えないの。現に、今も黒川あかねは番組出演を見送っていて…復帰の目処は立っていないのだから。……勝手な子、こんなに話を大きくして…責任は取れるの?」

「…俺は分の悪い賭けだと思ってない。注目度というのは、盤上に賭けられたチップそのもの。このギャンブルから降りれば、あかねは勝負しないままボロボロになって負ける。

…ポーカーはレイズしなきゃ勝てない。俺はエースが1枚でもあれば勝負する。」

「……現実はポーカーじゃないわよ。」


ーー〜〜

「え〜っ?みんなが写ってる映像や写真って言われても…そんな沢山はないよ?言うて100枚あるかないか…「めちゃくちゃあるじゃねぇか」

「何に使うの?」

「今ガチはプロが編集したコンテンツだろ?そこには、『黒川あかねを悪役にしたら面白い』って意図が存在する。…どんな聖人も、1面だけ切り抜いて繋ぎ合わせれば、悪人に仕立てあげられる。それが演出っていうもの。俺には映像編集のスキルもあるし、素材さえあれば……」

「なるほど…つまりアクたんは、『私達目線の今ガチ』をやりたいんだ〜…それって誰の入れ知恵?自分で考えたの?」

「ん?自分だけど…」

「へぇ…勘所悪くない…

今のこの状況って、広告代理店風に言うと、『能動視聴者数が多く、強いインプレッションが期待できる状況』ってやつなの。

一見あかねへの叩きが目立っているけど、それって表面的なものでさー。実態としては、数%程度の物でしか無い。

『自殺未遂』というセンシティブな話題…ほとんどの場合は、叩くべきか擁護するべきか悩んでいる、『サイレントマジョリティー』。

つまり、答えを求めているユーザーが多い。そこに、共感性の高い意見を提供すれば、多くの人が、それを正義と思い込むマーケットになっている!

ふふーん、これだけ注目されてる中だもん!世の中の意見まるっと上書きできちゃうかもね!

アクたんの作った動画を、私達なら公式アカウントにアップできるし、導線は確保出来てる!動画のクオリティ次第では、デカ目のバズも期待できる!」

「完成したらデータちょうだーい☆アップしとくよ〜☆」

「いや、それくらい自分で……「アクたんは何曜日の何時に投稿するのが1番RT数稼げて、何文字程度の投稿が一番インプレッション高いか知ってるの?」

「いや…」

「私はネット上のマーケティングと、セルフプロモーションでここまで来たんだよ?こう見えて、バズらせのプロなんだけどぉ?」

〜〜

「ん?じゃあ俺、楽曲提供するよ。」

「そんなの出来るのか?」

「いや俺、レーベル所属の音楽で飯食ってるプロなんだけど…自分のバンドで作詞作曲してるし、よそに提供してたりするんだけど、、」

「なんかエモい感じで泣かせりゃいいんだろ?得意得意!」

「おー。」

「でもやっぱさー、あのシーンは欲しくない?」

「どのシーン?」

「ほら〜!あかねが私叩いちゃって、それを私が優し〜く抱きしめる所!」

「あ〜、あ、でもあそこカメラ止まって……「ふっふ!甘いな!」

「プロモデルの私が、定点カメラの位置を気にしてないと思う?一応、カメラに気持ちよ〜く映るポジでやってたんだよ〜?」

「……色々、台無しなんだけど……」

「…絶対スタッフは取っといてる!分かって隠してるんだよ〜?ズルいよね〜!」

「……」





ーー〜〜

「いやまぁ、あるにはあるけどね?映像データは持ち出し厳禁、流石に渡せないよ。」

「そうですね。表に出れば、出演者達を悪役に仕立て上げる演出をしたって白状するような物ですから。……これだけ注目されてる中、そんなことをすれば、あかねへのバッシングが番組へ向かいかねないですもんね。」

「理解が早くて助かるよ、…僕らがやってるのはリアリティショーというエンタメだ。みんなリアリティーのあるいざこざが楽しみで番組を見ている。

…僕らはあかねに何も強制していない。それはあかねの選択で、僕らは視聴者に向け分かりやすく演出してるだけ…。

嫌ならNGを出せば、こっちだって使わなかった。違うかい?」

「あかねは責任感強いんですよ。」

「……知ってるよ。ずっと撮ってるんだし。あかねはプロで、僕らも仕事でやっている。」

「…プロねぇ……。Dは今幾つですか?」

「35だけど?」

「…あかねは17だ。プロだろうとなんだろうと、17歳なんて間違いばっかのクソガキだろ。……っ、……」

「大人がガキ守らなくて、どうすんだよ。」

「………はぁ……言えてるなぁ、」

























ーーー〜〜〜

「あぁあっ!違う違うちがうーっ!そこ長尺の方が、素人が頑張って作った感出るって!」

「そこで俺の曲でしょ!」

「バーン!って感じで行こうぜ!!」

「うっ、せぇなぁ……」


「てかスタッフさんこんな写真くれたんだけど!」

「やっばーw使お使おーっ!w「いや構成……」



〜〜〜

「いいよぉ!!」



〜〜〜

「すごくいいっ!!」







〜〜〜〜〜〜

「ぅ”ゔぅ”ぅ”ぅ……」

「ほら監督〜!エンコード終わったよ〜。投稿しちゃうから〜っ!」

「くそっ……いいスペックのマシン使ってるな……もうすこしねかせろ……」

「どんぐらい伸びるかな〜、最低でも5000は言って欲しいよね〜!」

「それも結構難しいよ〜?気合い入れて作ったものほど意外と伸びなかったりするからね〜」

「最初の1分で100RTくらい行けば、最終的には結構なバズになると思うけど……」

「100なー!」

「まぁこんだけやったんだ!さぁ!ショーダウンと行こうぜ!!「お前がいちばん何もやってねー癖に、」

「リーダーヅラが酷いね…」

カチッ、とマウスのクリック音が響く。


「「「「……っ!」」」」

「「「「…っ、……!」」」」


「「「「「…っ!!!」」」」」


「!」

「イケる〜っ!!!これイケるキタ━(゚∀゚)━ッ!」

「「「「よっしゃあ〜〜〜〜!!!」」」」


この動画は、24時間後に7万4000RTを達成、黒川あかねのイメージを変革すると同時に、今ガチの人気を決定付けるものとなった。




『今ガチメンバー仲いい…』

『多分このあかねバッシングはゆきも望んでないんだろうな』

『あかね応援したくなったわ。頑張れ!』

『なにこれw今は番組を叩く流れwww?お前ら掌返し早すぎwww?』

『全員で一斉になっていそがしいな』

『他人の意見に合わせてないと怖いんだろう』







ーーー〜〜〜

炎上騒ぎは、ある程度の終息を見せた。そういう歯切れの悪い言い方になるのは、炎上に完全な解決は無いからだ。

「「あかね!/!」」

これからも、事ある毎に蒸し返されて、

「動画、見た、まだ色々言われるけど…」

言い続ける奴は10年後も言い続けるだろう。

「だけど、うん……次の収録から復帰する。」

「よかったぁ〜!」

「でも、無理して出なくてもいいから!…あぁ、今のは嫌な意味じゃないからね!?私としては、無理してでも出て欲しいんだから!!」

「分かってるっ!」

「はぁ…言葉が難しい世の中になったって思うよ〜、今のTwitterで言ったら軽く燃えるんだろうなぁ、ほんと気を付けないと……」

「これからはさ!あかねもちょっと、キャラつけた方がいいんじゃない?やっぱ素の自分で出て叩かれると、ダメージ大きいし!」

「キャラ?」

「…そうだな。何かしら演じてたら、その“役”が鎧になる。素の自分を出しても傷付くだけ…これは別にリアリティショーに限った話じゃない。社交術としても重要な概念だ。」

「アクたんも何重に演じてるもんね〜、もう少し奥底見せてくれてもいいんだよ?「断る」

「私、演技は得意だし…やってみようかな。」

「そうだよね!あかねって地味に女優だし!「むしろそれしか取り柄無い…」

「…でも、どんな役演じればいいんだろう、」

「うーん…アクたんは、どういう女が好み?」

「なんで俺……」

「今“男”君だけだから〜!理想の女性像を教えてあげてよ〜!」

「…理想…」

「……顔のいい女、」

「うっわ最悪」

「ルッキズムの権化出たな」

「…太陽みたいな笑顔、」

「完璧なパフォーマンス…まるで無敵に思える言動、」

「「…?」」

「…吸い寄せられる、天性の瞳……」

「難しいこと言うなぁ、」

「抽象的です、……」

「ん〜…でもあれかな?『B小町のアイ』みたいな?」

「!」

「アイって、昔死んじゃったアイドルの人?」

「そうそう!違うー?」

「いやまぁ、大体合ってる、」

「あーこういう系好きなんだー!」

「面食いだ〜!」

「……、アクアくんの好みの女の子、やってみるね、!」

「…!やれやれ〜っ!」

「アクアを落とせ〜!」

…アイの真似なんて誰にも出来ない。あれは天性の物だ。……












































ーー〜〜

「黒川あかね。大変だったわね。大丈夫そう?」

「あぁ、何とか持ち直した。」

「そう……あーあ、あのままリタイアしてくれたら良かったのに…」

「お前さぁ……」

「あっ、違う違う!そういう意味じゃなくてだよ!?商売敵として…!!……あ〜、日本語怖いねぇ〜、今のTwitterで言ってたら、炎上だよ〜…」

「商売敵でも口の悪さなんのフォローにもなってないぞ。」

「いや、同い年で同じ女優業やってる人間としては、…目の上のたんこぶって言うかさ〜?『ちょっとは落ちてこい』って気持ちも、分かるでしょ〜?」

「はぁ……いわゆる『シャーデンフロイデ』ってやつよ。」

「……黒川あかねに、有馬かなが?」

「そりゃそうでしょ。」

「…」

「、!」

「あ〜、あんた演劇興味無いんだっけ。カメラ演技の人だもんね。」

「…『劇団ララライの黒川あかね』って言えば、『天才役者』として、演劇界では有名でしょうが。」



























ーーー〜〜〜ーーー

「本日より、あかねさん復帰になられます」

「皆さん、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。頑張りでお返ししたいと思っています!よろしくお願いします、!!」


「それでは、スタンバイよろしくお願いしまーす!」

「…行くぞ。」

「うん……」

「『そうだねアクア。』」

「!?」

「『ふぁ、あぁ……眠いんだよねぇ〜、収録早すぎてさ〜?☆あ、もうカメラ回ってる?☆』」

「…っ、…!?」

「『てへっ☆』」




























































「さて、『黒川あかね』はどう出るかな…?」

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