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「ウソ、本当にあのサークル? 私の退学と一緒に、部員が一人ってことで無くなったんじゃないの!?」
彼女は驚いた様子だが、それにはむしろ僕のほうが驚きだ。東雲先輩や同級生らは、あの出来事をだれ一人として話さなかったのか。
「そうなりそうだったところを東雲さんが止めたらしいですよ。なんでも、『人数不足はもともとだったが、実績で評価され、サークルと認められていったのだから。部員が減ったといってサークルとして認めないのはおかしい』ということを主張して、委員会を言い負かしたようです」
それを聞いて、少し悩んだり考えたりする仕草を見せた後、かのじょは「あの子らしいっちゃ、らしいかも」と納得した。ただそれは彼女にとって、雪が春になると溶ける事のように、少し考えてみれば至極当然であったようだ。
「しのちゃん。サークル愛強かったからな……」
「そんなにですか?」
「ええ、もう盲目的に崇拝的だったわ。まるで恋のように」
僕は小ばかにするように笑う。
「たしかにそうかも。これは内緒なんですけど……。本当は言い負かしたんじゃなくて、大会とコミケで荒稼ぎした一部を『学校の資金に』と寄付したんですって」
すごく悪い話だが、二人は何も変わらずアオハルに笑う。
これは僕らの間に共通理解があるから、東雲弦とはそういった人間だからのものだろう。そう、東雲弦とはそういった人間性の持ち主なのだ。
「申し訳ございません。それは間違いなく私でございます!」
「申し訳ございません!」
晃一と玲奈は九〇度に頭を下げ、できる限りの誠意を見せた。今できる事などその程度しかなかった。
だがその際、実のところ晃一に自責の念はあまりなかった。いや、完全にないと言えよう。先ほどから思考し続けていた答えが、ついに浮き彫りとなったからである。
俺の人生。今思えばはっきりとしていた。美蘭だ。誉田美蘭との結婚が、俺のすべてを狂わせたのだ。