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cisyp
教室の窓は、
午後の光で少しだけ白く飛んでいた。
黒板の文字がやけにゆっくり頭に入ってくる、
そんな眠い時間。
「_なぁ、それさ」
後ろから小さな声がして、振り向く。
そいつは俺のノートを指でつついていた。
その指先だけが、なぜかやたらはっきり見える。
「ここ、答え違ってる」
「ほんとだ」
「ほんとだ、じゃなくて…」
呆れた顔をしてるくせに、
消しゴムを貸してくれる。
そういうところ優しさが滲み出てると思う。
「ありがとう」
「‥別に」
そう言いながら、ちょっとだけ視線をそらす。
——その一瞬が、やたら長く感じる。
休み時間になると、
窓の外では運動部が走っていた。
その音が遠くて、
教室だけが別の世界みたいに静かになる。
「ねえ」
今度は俺から声をかける。
「なに」
「今日さ、帰り道こっち?」
やつは少しだけ間を置いてから、
「……たまたま同じ方向なだけ」
と言った。
絶対わざとだろ、と思ったけど言わない。
校門を出ると、夕方の空気が一気に近くなる。
夏でもないのに、少しだけあたたかい風。
二人で並んで歩くと、靴音がやけにうるさい。
「今日さ」
俺が言う。
「うん」
「ノート、ありがとう」
「さっき言ったじゃん」
「もう一回」
そいつは小さく笑った。
その笑い方が、なんか反則だと思う。
「どういたしまして」
沈黙が落ちる。
でも気まずくはない。むしろ、ちょっとだけ落ち着く。
駅に着く少し前、やつがぽつりと言った。
「ねえ」
「なに」
「明日も、同じとこ間違えてたら勉強会な」
「…じゃあ、間違えてもいいかも」
「…ふっ」
そう言うと、ショッピはちょっとだけ目を細めた。
「じゃあ……期待してる」
その一言が、やけに軽くて、やけに重い。
駅のホームで電車を待つ間、風が髪を少しだけ揺らす。
そのたびに、距離が少しだけ近づいた気がした。
ぬん
154
あべべ
69
電車が来る。
「じゃあな、ち―の」
ショッピが言う。
「うん、また明日」
ドアが開く直前、ショッピは一瞬だけこっちを見た。
——ほんの一秒。
それだけで、今日がちょっと特別になった気がした。
電車が走り出しても、その一秒だけが頭から離れない。
明日も、たぶん同じことが起きる。
同じような顔で、同じように笑って、同じように少しだけ近くなる。
それだけでいいと思った。
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