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動揺して視線を激しく泳がせていると、ドックはリィラから離れて明るい笑顔と口調でリィラの不安を吹き飛ばす。
「あぁ、大丈夫ですよ。誰にも言いませんから」
「……なんで分かったんですか?」
「リィラ様の秘密を知った以上、僕も秘密を明かしますね」
別に秘密を自ら教えた訳ではないし、知られてもゼンティの力で何とかなる気はする。だがリィラは、純粋にドックが持つ秘密の内容が気になる。
「僕が研究しているのは『毒』です。毒の研究と開発をしてます」
「毒の……!?」
地下の研究室で行うくらいだから極秘任務だろう。しかも先ほど、レンティもドックと共に地下室から上がってきた。
どこまで突っ込んでいいのか分からないが、レンティが絡んでいるなら国家機密かもしれない。それを話してドックは大丈夫なのだろうか。
そんなリィラの心配の目線を何かと勘違いしたのか、ドックは照れ臭そうに笑った。
「気付きました? そう、僕は『毒のドクターのドック』なんです。面白いですよね?」
……そんな事はどうでもいい。
ドックは誰にも言わないと言うが、レンティに毒の種族である事はバレたくない。いや、ドックにバレた以上、レンティに話が伝わってしまう可能性は高い。
どこまで、このドックという男を信用していいのか分からない。
「あ、じゃあ、僕は休憩時間なので失礼します。今度、ぜひ地下の研究室に来て下さいね」
ドックは背を向けて、そのまま城の正門の方へと歩いて行った。
気付くとヒメが足元にいて、可愛らしい赤い瞳でリィラを見上げている。
(ゼンティに相談した方がいいかな……)
毒の研究。これはきっと重要な情報に違いない。しかしゼンティに話して敵だと判断されれば、ドックは躊躇いなく殺されてしまうだろう。
ドックはリィラの秘密を知ってしまったのだ。それだけでゼンティはリィラを守ろうとするかもしれない。
まだ何も起きていないのだから、ゼンティに相談するのはもう少し様子を見てからにしようと考えた。
……しかし、ゼンティはドック以上に鋭い。
リィラがヒメとの散歩を終えて、城内のゼンティの執務室へと入る。
ゼンティはリィラの姿を見るなり、椅子から立ち上がって壁に押し付ける勢いで迫る。
毒を吸いたいのだろうと思ったリィラは素直に大人しくゼンティの口付けを待つ。ここで禁断症状を出されても困るからだ。
だが、ゼンティはリィラに普通に軽く口付けただけで、それ以上の事はしなかった。
「ねぇ、リィラちゃん。僕に隠し事してない?」
「…………!」
どこで気付かれてしまったのだろうか。魔物の赤い瞳は人の心を読む力でもあるのだろうか。
何も答えないリィラに、ゼンティは不満そうに口を尖らせる。まるで子供だ。だがリィラも同じ表情を返したくなった。
「ゼンティは私に何も教えてくれないくせに」
リィラの拗ねた顔が可愛くて、ゼンティは思わず頬が緩んでしまう。
「あぁ、そうだね。じゃあ言ってみなよ。何を教えてほしい?」
ゼンティが素直に折れてくれるのは珍しい。基本的にリィラの願いは叶えるゼンティだが、魔物の人格の方だったら、こうはいかない。
これはゼンティの核心を聞き出すチャンスかもしれないので、リィラは慎重に質問を選ぶ。
「ゼンティの『復讐』って何?」
これは紛れもなくリィラが一番知りたい、ゼンティの真意であった。
するとゼンティは一瞬だけ赤の瞳を大きくした後、真面目な顔になってそっとリィラから顔を離した。
「分かった。話す前に見てほしい場所があるんだ。今から三人で行こう」
リィラの返事を待つ事なく、ゼンティは部屋の隅に控えていたアレンに視線を向ける。アレンは無言で頭を下げて同意を示す。
アレンはレンティの執事のはずだが、基本的にはゼンティの側にいる。やはりゼンティの下僕が真の姿だ。
そして、ゼンティとリィラの口付けも見慣れているので何とも思わない。
そうして三人が馬車で城を出発する準備を始めた頃、レンティは自室のテーブルで一人で紅茶を飲んでいた。
ノックの後にレンティの部屋に入ってきた兵の男がテーブルの前に立ち、レンティに報告をする。
「センティ様が馬車でお出かけになるようです」
「……そう」
レンティはティーカップをソーサーに置くと、長い睫毛を伏せて唇の端を上げた。
「では、兵団に連絡をお願いしますわ」
それだけを伝えると、レンティは再びティーカップを口元へと運ぶ。
コメント
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第16話、めっちゃ面白かったわ!毒の研究してるドックがリィラの秘密に気づいちゃった展開、ドキドキした〜。でもドックの「誰にも言いません」の笑顔が逆に怪しくて…。ゼンティに隠し事バレた時のリィラの焦り、すごく伝わってきた。そして「復讐って何?」って核心を聞くシーン、熱い!ゼンティが「見てほしい場所がある」って連れ出そうとする流れ、次が気になりすぎる。最後のレンティの「兵団に連絡を」の意味深な笑みもヤバい。続きが待ち遠しい🔥