テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
昔好きだった乙ゲーのパロ
最後にやったの数年前&プレイした時まだ子供で、ストーリーが難しすぎて理解できてなかったのでほぼうろ覚えです。
ちょい史実が混じって来ないような来るような
日曜日の午後三時
四季折々の季節に合わせて、姿形を変える庭先で週に一度だけ開かれるお茶会。
空と海が肩を並べながら、それぞれが持ち寄ったお茶菓子を会話の合間につまみ、時折楽しげな笑い声を上げる。
少し離れた場所に用意された日帝専用のガーデンチェア。
彼女はいつもそこで目を閉じて、完全にリラックスしながら、2人の声をBGMに右から左へと聴き流す。
当たり前の光景。
それは、彼女にとって世界でいちばん穏やかで、どんな記憶よりも鮮やかに胸に残る、かけがえのない時間だった。
心の底から、大好きだと断言出来る唯一の時間。
「……ずっと、こうしていられたらいいのに」
小さくこぼしたその言葉は風に乗って溶けていった。
その願いに、誰かが答えることはなかった。
当然である。そもそも日帝は、誰かに叶えて欲しくて呟いた訳ではないのだから。
けれども、謝意の代わりだと言わんばかりに聞こえてきた聞き慣れない声。
『日帝、起きてください。
早く行かないと手遅れになりますよ!』
それはやけに甲高くて、現実味のない声。
目を開けた彼女の目の前には、人の言葉を話し、2本の足でしっかりで立ち上がる真っ白いウサギ。
人のように前足でトントンと、軽く肩を叩きながら白ウサギが自身の顔を覗き込んでいる。
真っ白い顔に真ん中に赤い丸。
こんな特徴的な顔つきは1人しか知らない。
「…………日本?」
日帝は、ゆっくりと身を起こし、目を何度もぱちぱちとさせながら、白ウサギ…もとい日本をまじまじと見つめる。
『はい。どうしました?』
日帝の問いかけに対して、日本が返事をしながら首を横にこてんと傾げる。
と同時に、忙しなくぴくぴくと動くウサギ耳。
「え…?どうしましたって…
いや、お前その姿…」
『?なんですか?
まだ、寝惚けてるんですか?』
「………夢か」
これは夢だ、夢。そうに違いない。
でなければ、二足歩行で人語を話すウサギなど現実世界に存在するわけが無い。
よく出来たものだ、現実と夢の境界線があやふやになってしまうところだったと安堵の息を吐く。
『貴女が心から望むから、わざわざこんなところまで迎えに来たのに…』
不躾な視線に気を悪くしたのか、それとも勝手に夢と決めつけられた事が気に食わないのか。
日本の眉間に皺がより、丸々とした赤い目が少しずつ釣り上がり、もふもふな頬がぷくっと膨らんでいく。
無意識のうちだろうか、後ろ足でタンッ、タンッと強く地団駄を踏んでいる。
日帝は、機嫌を取るという訳では無いが、ぷりぷりと怒っている日本の頭を撫でてみた。
予想通り毛はきめ細かく柔らかで、お風呂に入ったばかりのようにふわふわで、指の通りも良い。
日本の怒りも徐々に治まったようで、目を閉じてされるがままになっている。
鼻もピクピクと動いているので気持ち良いらしい。
『…!』
日帝のされるがままとなっていた時だった。
パチンと目を見開いた日本が、突然首を左右に振って彼女の手を振り払う。
『悠長にしてる場合じゃないんですよ!!』
耳がぴくぴくと逆立ち、声が裏返るほどの勢いで叫ばれる。
それまで撫でられて、光悦とした表情を浮かべた時とはまるで別人…いや、別ウサギのようだった。
ウサギは、思っていたよりも感情表現が豊からしい。
『早く行きますよ!
道が閉じたらどうするんですか!!』
「行くってどこへ?
道が閉じられるとはどういうことだ?」
日帝の疑問は最もだ。
道というものは、勝手に閉じられるものではない。
1度施工されれば、時が経つにつれて老朽化さえすれど、余っ程のことがない限り持続する。
定期的なメンテナンスを実施していれば、半永久に持続するとも言えるだろう。
『詳しいことは、あちらの世界に行ってからします!
さぁさぁ!早く立って!!』
「目的地も教えられてないのにそんな急かされても…
それに私は空と海に、ここで待っててと言われているんだぞ?
勝手に動いたら2人が心配してしまう。」
空と海は、ボードゲームを取りに家の中へ行っており今この場には居ない。
唐突に日帝が居なくなってしまったら、2人は嘸かし驚愕し、慌てて探し回るに決まっている。
余計な心配をかけない為にも、ふたりが戻ってくるまではここを動く訳にはいかない。
『夢ですよ』
「え…?」
『これは、貴女自身が望んだ夢だ。
先程、自分自信でそう言っていたじゃないですか。』
『これは夢だと、現実じゃないと。
だから大丈夫。
貴女がどう動こうと、どんな結果になろうとも誰も貴女を責め立てる者はいない。』
『ここでは貴女が唯一無二
何事にも変えがたい存在』
だから、行きましょう?と再度日本が手を伸ばす。
日帝は、差し出された白く小さな手をしばらく見つめた。
─これは夢だ。
─現実じゃない。
─だから大丈夫
耳の奥で、彼の声が何度も反響している。
それでも彼女は、ゆっくりと首を左右に振った。
「それでも私は行けない。」
ここで、日帝が待っていると信じている人達がいる。
また、あの2人を勝手に置いていく訳にはいかない。
『そうですか…』
先程までピンッと立っていたウサギ耳は、今や地面に着いてしまうのでないかと思うほどに、へにゃんと力無く倒れてしまっている。
目尻に涙が浮かび、ウルウルとした上目遣いで日帝を見上げている。
「泣き落としは私に通じないぞ」
わざとらしく、泣き落としで懐柔してこようとする日本にため息を返す。
身内贔屓が発動してしまって、少しばかり揺らぎそうになってしまったのは、墓場までの秘密だ。
昔から彼女は日本に甘い節がある。
日帝は、彼にそのまま背を向けて二度寝の体勢に入った。
夢の中でまた寝るなんてまるでおかしな話だが、今の彼女にはこの悪夢予備軍から目を逸らす方法はそれしか思い浮かばなかった。
「まぁ、そう簡単に着いて来るとは思ってませんでしたよ」
背後から、先程の高いだけの声とは違う、男性にしては少し高めのけれど、女性にしては低すぎる中世的な落ち着いた声が聞こえる。
─ごうっ、と。
強い突風が吹いた。
庭の木々を大きく揺らし、地面に敷き詰められた落ち葉が紙吹雪のように宙を舞い、日帝の視界を覆い尽くす。
春の訪れを告げるには、少しばかり勢いが良すぎる気がした。
激しい突風も治まり始め、日帝は漸く少しずつ目を開いていく。
ぼやけていた日帝の視界がある場所に定まった。
「おい…日本。
ちょっと待て。」
「なんですか?」
ガーデンチェアに寝転んでいたはずなのに、目を開けると、いつの間にか日帝は日本の腕の中にいた。
見上げれば、彼はいつも通り穏やかな笑みを浮かべている。
先程までの可愛らしい小動物だった時の姿は微塵もない。
「日帝さん」
視線を合わせながら、名前を呼ばれ思わずドキッとする。
常日頃から、線が細いとか、華奢な体型だなとか思っていたが、どうやらそれは見かけ倒しだったらしい。
その証拠に彼は、顔色一つ変えることなく、涼しい顔で日帝を軽々と抱え上げていた。
背中と脚の裏に回った腕は、予想以上に固くがっしりとしている。
「そろそろ時間なので、強硬手段取らせて頂きますね?日帝さん」
…は?
彼は今なんと言ったのだろうか。
「あまり、手荒な真似はしたくなかったのですが…。
社畜の合間に、どうにか時間を作って貴方を迎えに来たのもので。
今回逃してしまうと、何時になるか分からないんですよね!」
あっけらかんと笑いながら、そう言った日本が視線を上げる。
つられるように、日帝もそちらを見た
2人の視線の先。
そこに広がっていたのは、黒よりも濃い、底の見えない奈落だった。
現実の地面があったはずの場所は、いつの間にか黒のペンキで塗りつぶされたような漆黒に変わっていて。
風も、光も、音さえも、何一つ届かない完全な無がぽっかりと口を開けていた。
それが、まるで自身を待ち受けているかのように感じて日帝は身震いする。
……嫌な予感がする。
でも、口に出してしまえば現実になってしまいそうで。
それでも確認せずには居られなかった。
「なぁ、日本…そこって」
言いかけた瞬間だった。
日本はゆっくりと、腕を差し出す。
突き放すでも、放り投げるでもない。
まるで、眠る子どもをベッドにそっと寝かせるような仕草で自身のそっと腕を引き抜いた。
彼女の身体は、そのまま音もなく闇に沈んでいく。
重力の感覚が消える。
足も、手も、何もかもが空に浮かんだようで。
落ちているのか、吸い込まれているのか、それすらも分からない。
「――――っ」
叫ぼうとしても、声は出なかった。
空気すら通さない静寂が、全身を飲み込んでいく。
眼下はただ、真っ黒な闇。その底は見えない。
けれど最後に。
ほんの一瞬だけ、上を見上げた日帝の目に映ったのは
「……いってらっしゃい」
微笑んで手を振る、日本の姿だった。
「 お前えええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!
いきなり何するんだああああああああああ!!!!!!!!!」
「いやあ”あ”あ”あ”あああああああああああああぁぁぁぁ!!!!!!
死ぬうううううううううう!!!!!!!」
日帝の絶叫が、狭く無限に続く穴の中で虚しく反響した。
ここから始まるヤンデレ、監禁、R15ぐらいの日帝さん受け某乙女ゲーパロ
誰が攻略対象はお楽しみに。
勉強の気分転換がてらに、書いてたら止まらなくなってしまいました。
続かないよ!
コメント
7件
「いや"ぁぁあぁぁぁしぬぅぅ!!」で不覚にも笑いましたw 続きます(?)
ウサギになりたい(切実)

続き楽しみにしてます!