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最終話「ヒーローインタビュー」
秋の澄んだ空の下。リーグ優勝がかかった最終戦、
ハヤブサは1点ビハインドで迎えた9回裏、2アウトランナー2塁。
バッターボックスには、背番号33――小郷健斗。
スタンドには、りなの姿。
手の中には、キューがそっと寄り添っていた。
「おい、りな。ここが、恋のクライマックスだぞ。泣くなよ?」
「泣かないよ……けど、胸がぎゅってなる」
球場中に応援歌が響き渡る。
> 「栄光つかむために 」
ピッチャーの投じた初球――ストライク。
小郷はバットを構え直す。
ふと、頭をよぎる。
(ここで打てたら、言おう。りなに。俺の言葉で)
2球目――
フルスイング。
乾いた音とともに、白球は高く、高く舞い上がり――
センターバックスクリーン直撃の、逆転サヨナラホームラン!
球場が割れるような歓声に包まれ、
仲間に迎えられながらホームインした小郷は、
胸を叩き、空を指差した。
(見ててくれたか、りな)
そして、グラウンドの中央。
ヒーローインタビューのマイクが向けられる。
「今日のヒーロー、小郷健斗選手です!」
歓声が沸き起こる中、インタビュアーが尋ねる。
「今シーズンは小郷選手に取って辛いシーズンでした」
「そのシーズンの辛さを払拭する。劇的な一発でした。今の気持ちを聞かせてください」
「……最高の瞬間です。でも、このホームランは俺だけじゃない。
ずっと支えてくれた 監督やコーチ、スタッフ、そしてどんな時もスタンドから声援をくれたファンの皆さん そしてもう1人この場を借りて伝えたい人がいます」
スタンドで見守るりな。
カメラが、彼女を映していた。
「りな――」
小郷は、照れも迷いも捨てて、はっきりと叫んだ。
「君に会ってから、もう一度野球が好きになった。
君がくれた言葉が、俺のバットを動かしてくれた。
……だから、これからも俺のそばにいてください。
結婚、しよう」
球場がどよめき、そして大歓声に包まれた。
りなは涙をこらえながら、大きくうなずいた。
その夜、りなの部屋。
キューがしみじみと言った。
「いやぁ、恋って、ほんとに、すごいな」
ハチもテレビの前で、尻尾を振りながら「わん」と鳴いた。
恋が生まれたのは、カエルの一声から。
でも、それを育てたのはふたりの“心”だった。
🐸 ― 完 ―
『カエルが運ぶ恋』
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