テラーノベル
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カンナは臆する様子もなく、ラブホが集まっている区画の縁を通り、5階建ての古びたマンション風のビルの外階段を登る。
晶子はカンナの背中に縋りつかんばかりに顔を青くしてくっついて歩いた。カンナが二階の部屋のインターホンを鳴らす。不機嫌そうな男の声が聞こえて来た。
「どちらさんで?」
カンナはインターホンに向かって堂々と言った。
「ここの沙織さんて人に届け物です。カンナが来たって言ってくれりゃ分かります」
インターホンの通話がぶつりと切れた。中から足音が聞こえる。ドアの横に張ってあるプラスチックのプレートを見た晶子は息を呑んだ。
「デリヘル」と書かれている。それが何を意味するのか、晶子にもぼんやりとだが、見当はついた。
やがてドアが開き、若い女性が半身をのぞかせた。金髪に染めた髪、ド派手なネイル、胸元が広く開いた派手な色使いのトップスにミニスカート。
晶子には最初は分からなかった。だが、その顔立ちと面影は紛れもなく沙織の物だった。晶子が知っている沙織の、真面目そうな、清楚な表情はそこにはなかった。沙織はどんよりした目でカンナを見、晶子からはそっと目をそらした。
「先に階段降りて。すぐ行くから」
沙織にそう促され、晶子とカンナは隣のビルとの隙間の空間に入る。ハイヒールの音がコツコツと響き、沙織がやって来た。うつろな目でカンナに訊く。
「で、何の用?」
カンナはジャンパーの内ポケットからあの封筒を取り出して差し出す。
「高校のクラス会のお知らせ。ま、ねえさんには要らねえもんだとは思うけどさ。パチンコの景品で買収されちまったもんでね」
沙織は自嘲的な笑みを顔に浮かべて封筒を受け取った。そしてカンナに向かって言った。
「あのクソおやじが面倒かけたね。ありがと。けど、ここはあんたたちが来る場所じゃない。特にそっちのお嬢様はね。確かに受け取ったから、さっさと行きな」
沙織は掌を縦に振って、まるで犬でも追い払うかのような仕草でそこを去るように促し、振り返る事もなく、二階へ戻って行った。
カンナもくるっと背を翻し、晶子の手を握って足早に歩きだした。カンナに引っ張られるように歩きだしながら、晶子は震える声でカンナに尋ねる。
「ねえカンナ、どういう事なの? 前に会った時、沙織さんは大学に合格したって言ってたのに」
「あたいもその場にいたわけじゃねえから、おおまかな事しか知らねえけどね」
そしてカンナは事の次第を語り始めた。
コメント
1件
うわあ…第45話、重い展開だね😢 沙織さんの変わり果てた姿に晶子ちゃんも読者の私も胸が締め付けられたよ…「大学合格した」って言ってたのに、♡♡♡で働いてるなんて。カンナの距離感の取り方も切なくて、でも晶子ちゃんの手を握って歩き出すシーンでほっとした。この後どうなっちゃうんだろう、続きがすごく気になる!
#いじめ
るあ🩵🦊🌙
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菊池川詠人
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