テラーノベル
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それでは、
どうぞっ。
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今回のカムバックは、いつもより空気が違った。
曲の難易度も高い。
コンセプトも重い。
会社側の期待も大きい。
そして何より、
今回のコレオは、綺羅が中心になって作っていた。
💛「ここ、もうちょっと重く入りたいです。」
練習室。
振付師が動画を見ながら、頷く。
綺羅は息を整える暇もなく、また音楽を流した。
💛「もう一回やります。」
額から汗が落ちる。
何十回目かも分からない。
でも止まれなかった。
自分からやりたいって言ったから。
今回のステージ、絶対成功させたかったから。
ーーーーー
最近、綺羅は誰より早く事務所へ来ていた。
そして、誰より遅く帰る。
🧡「綺羅、寝てる?」
💛「寝てる、寝てる。」
💜「嘘だ。」
💛「バレた?」
笑って誤魔化すけれど、目の下のクマは隠せていない。
柚葉はそれを見る度、胸がざわついた。
同じ部屋だから分かる。
深夜に帰ってきて、シャワーだけ浴びて寝落ちする日。
朝方までイヤホンをつけて動画を確認している日。
全部知っていた。
だから、少しでも支えたかった。
ーーーーー
その日の練習は特に過酷だった。
何度踊ってもOKが出ない。
フォーメーションも細かく変わる。
汗で床が滑るくらい踊り続けて、みんな限界だった。
『今日はここまで!』
スタッフの声で、空気が一気に緩む。
メンバー達がその場へ座り込んだ。
💜「やばい、足死んだ…」
💙「お腹空いた〜、…」
そんな中。
綺羅はタブレットを見ながら、まだ何かを書き込んでいる。
柚葉はその横顔を見る。
疲れてる。
でも、集中しすぎて周りが見えていない顔。
🧡「柚葉、帰る?」
柚葉は一瞬迷った後、首を横に振った。
🩵「、…もうちょっと残るね。」
🤍「そっか。でもあんまり遅くなりすぎないでね。」
メンバー達は先に帰っていく。
広かった練習室が、急に静かになる。
残ったのは綺羅と柚葉だけだった。
ーーーーー
綺羅は鏡の前で音楽を止めたり流したり繰り返していた。
💛「ここ、動線遠いな……」
小さく独り言を呟く。
柚葉は少し離れた場所で見守っていた。
声をかけるタイミングを探して。
そして。
🩵「綺羅、」
小さく呼ぶ。
反応がない。
柚葉はもう一歩近づいた。
🩵「綺羅、少し休_」
その瞬間。
💛「今忙しいの、分かんない?」
空気が止まった。
鋭い声だった。
綺羅自身も余裕がなかった。
焦っていた。
完成しない振り付け。
迫る日程。
全部が頭を埋め尽くしていた。
でも、柚葉はビクッと肩を揺らしたまま固まる。
💛「あ、…」
綺羅もすぐに顔を上げた。
しまった、と思った時には遅かった。
柚葉は無理やり笑う。
🩵「……ごめん。」
その笑顔が、痛いくらい弱かった。
🩵「邪魔、…しちゃったね。」
💛「いや、柚葉_」
🩵「私、先に出てくね。」
柚葉は頭を下げ、そのまま練習室を出ていった。
扉が閉まる音。
綺羅は動けなかった。
ーーーーー
最悪だ。
綺羅は髪を掻き上げながら深く息を吐く。
なんであんな言い方をした。
柚葉はただ心配してくれただけなのに。
綺羅は別の練習室へ移動した。
1人になって、振り付けを整理しようとした。
でも、音楽を流しても集中できない。
頭に浮かぶのは、さっきの柚葉の顔だけだった。
傷ついた顔。
無理やり笑った顔。
💛「はあ、…」
綺羅はとうとう音楽を止める。
だめだ。こんなんじゃ。
スマホを見る。
連絡は来ていない。
宿舎へ帰った?
でも、なんとなく違う気がした。
柚葉は落ち込むと、1人になる癖がある。
綺羅は急いで立ち上がった。
ーーーーー
事務所の非常階段。
誰も来ない場所。
柚葉はそこでしゃがみ込んでいた。
暗い。
少し寒い。
膝を抱えて、顔を埋める。
涙がポタポタ落ちる。
🩵「っ……」
泣くつもりなんて無かった。
でも。
あの一言が思ったより、苦しかった。
迷惑だったかな。
邪魔だったかな。
最近の綺羅、本当に余裕なかったし。
分かってたのに、支えたかっただけなのに。
鼻を啜る。
涙で視界がぼやける。
その時。
💛「柚葉。」
階段の扉が開く。
柚葉がビクッと顔を上げる。
そこには、息を切らした綺羅が立っていた。
ーーーーー
💛「なんでここ…」
綺羅がゆっくり近づく。
柚葉は慌てて涙を拭った。
🩵「別に、…」
💛「別に、で泣く?」
優しい声だった。
さっきとは全然違う。
🩵「…ごめんなさい、」
💛「それ、私の台詞。」
綺羅は柚葉の前へしゃがみ込む。
近い。
柚葉は目線を合わせられなかった。
💛「ごめんね。」
静かな声。
💛「余裕無くて、当たった。」
🩵「…」
💛「柚葉は悪くない。」
柚葉の喉が小さく震える。
綺羅は続ける。
💛「心配してくれてたんでしょ?」
その瞬間。
また涙が溢れた。
柚葉は慌てて顔を隠す。
🩵「…だって、綺羅最近ずっと無理してるから……」
声が掠れる。
🩵「ちゃんと寝てないし、ご飯も適当だし、」
💛「うん。」
🩵「私、少しでも助けたかっただけなのに……」
涙でぐしゃぐしゃになりながらも、一つずつ言葉を落とす。
🩵「邪魔だったんだって思って…」
💛「違う。」
即答だった。
綺羅はそっと柚葉の手首を掴む。
💛「全然違う。」
柚葉が泣きながら顔を上げる。
綺羅は苦しそうに眉を寄せた。
💛「むしろ、柚葉に甘えてた。」
🩵「、え」
💛「柚葉なら大丈夫って思ってたから。」
その言葉に、柚葉の目が揺れる。
綺羅は静かに息を吐いた。
💛「だから、雑にしちゃった。」
💛「最低、…だよね。」
自嘲みたいに笑う。
柚葉は首を横に振った。
🩵「そんなこと、ない…」
💛「あるよ。」
綺羅はそっと柚葉の頬についた涙を拭う。
💛「柚葉、泣かせたし。」
指先が優しい。
その温度に柚葉の涙がまた溢れた。
🩵「ごめんなさい。」
💛「だから、なんで柚葉が謝るの。」
綺羅は困ったみたいに笑う。
それから少しだけ迷って。
静かに柚葉を抱き寄せた。
🩵「っ、…綺羅」
💛「ちょっとだけこうさせて。」
疲れていた。
本当に。
身体も、頭も、心も。
でも、柚葉を抱きしめた瞬間張り詰めていたものが少しだけ緩む。
💛「、私さ。」
🩵「うん。」
💛「今回、いいステージ作りたい。」
柚葉は黙って聞く。
💛「みんながカッコよく見えるやつ。」
🩵「うん、…」
💛「柚葉のパートも、1番映えるようにしたい。」
その言葉に、柚葉が目を見開く。
綺羅は小さく笑った。
💛「だから、必死になりすぎた。」
非常階段の静かな空間。
柚葉はゆっくり綺羅の服を掴む。
🩵「…、じゃあ」
💛「ん?」
🩵「今度から、1人で抱え込まないで。」
🩵「私、ちゃんと支えるから。」
泣いた後で少し赤い目。
でも真っ直ぐだった。
綺羅はその顔を見つめる。
本当に敵わない。
💛「…うん。」
小さく頷く。
すると柚葉が少しだけ安心したように笑った。
綺羅はその笑顔を見ながら思う。
ちゃんと帰らなきゃ。
この子のいる場所に。
end.
コメント
1件
うわ〜〜〜〜😭💕 もう最初から最後まで胸ギュッてなった…!! 綺羅の必死さと柚葉の優しさが痛いほど伝わってきて、非常階段のシーンで涙腺崩壊したよ…「柚葉なら大丈夫って思ってたから」の言葉、重すぎるよ…💔 でも最後にちゃんと抱きしめて「帰らなきゃ」って思う綺羅が尊すぎる…😢✨ 2人の関係性がすでに深くて、これからどうなっていくのか気になりすぎる!! ゆあ。さん、このエモさをありがとうございます…!!! 続きを全力待機してます💫📖