白いバージンロードの先にいるのは、君と――兄。
 
 
 
 
 拍手が鳴り響くたびに、どこか現実じゃないみたいで、
ふみやは少し離れた席からそれを眺めていた。
 
 
 
 
 
 
 笑ってる。泣いてる。幸せそうに。
 
 
 
 
 
 ふみやは、ふっと息を吐いた。
 
 
 
 
 
 
 「…やっぱ、綺麗だな。」
 
 
 
 
 
 
 
 誰に言うでもなく、グラスの水面に視線を落とした。
浮かんだ自分の顔が、少しだけ笑ってるのがわかった。
 
 
 
 
 
 
 
 ずっと、気づかれないように好きでいた。
 ちょっとの視線、ちょっとの言葉。
 届かないってわかってても、それでも、君の隣にいたかった。
 
 
 
 
 
 
 でも――
 
 
 
 
 
 
 
 君が颯斗を選んだとき、
 ふみやは、不思議とちゃんと「よかった」って思えた。
 
 
 
 
 
 
 
 だって、その人といる君がいちばん幸せそうだったから。
 
 
 
 
 
 
 「俺じゃ、だめだったって…ちゃんと分かってたし。」
 
 
 
 
 
 
 もう、この気持ちは終わりにしなきゃって、
自分に何度も言い聞かせてた。
 それでも、今日みたいに“決定的な瞬間”を見ると、
どこか置いてけぼりにされたような寂しさが、心の奥からじわじわ染みてくる。
 
 
 
 
 
 
 
 式が終わって、会場を出た瞬間、
君が見つけてくれて、小さく手を振ってきた。
 
 
 
 
 
 
 「ふみやくん、来てくれてありがとう。」
 
 
 
 
 
 
 
 その声に、笑って頷いたふみやは――
 
 
 
 
 
 
 
 
 「…うん。ほんとに、おめでとう。」
 
 
 
 
 
 
 
 それだけ言って、
 最後まで君には気づかれないまま、気持ちをしまった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 誰にも知られない片想い。
 それでよかったんだ。
 それでしか、なかったんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 夜、家に帰ってひとりになって、
ふみやはBUDDiiSの「Love Me」を再生した。
 
 
 
 
 
 
 
 流れるサビに、ふっと笑う。
 
 
 
 
 
 
 
 「ねぇ、こんな好きなのにね。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 もう、二度と届かない人を思いながら――
画面の明かりをそっと消した。
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