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相模・小田原城
「……シクシク……まだ終わらないの……」
氏政は、書物の山を前にして泣きそうになっていた。
「ダメです。しっかりと全部読んでくださいね」
多目元忠が、容赦なく次の書物を氏政の前へ置く。
「いやー!」
そこへ、風魔小太郎が戻ってきた。
「……調べて参った」
小太郎は腕を組み、険しい顔をする。
「方円は、正しさに執着する癖があるみてえだ。
あと、やはり実の兄のことは今でも根に持ってるようだな……」
「……実の兄弟も、復讐の際に失ってるらしいぜ」
小太郎はさらに続ける。
「間接的に村上を操って死に追いやったのは、方円だと言うに……」
「そうか。ご苦労……」
北条幻庵は静かに頷いた。
「それは、わしも聞いたことがある」
氏康も口を開く。
「以前、村上義清に大負けした時に影武者となって、信廉殿が亡くなられていたはずじゃ……」
幻庵が眉をひそめる。
「ふむ……何? なぜその時、村上にまた負けたのだ。
確か砥石城に真田殿が当時いたはずじゃ」
「どうも何らかの手を使い、封じ込んでいたようだ。
だが、それが分からねえ」
小太郎は悔しそうに拳を握る。
「武田信玄が最終的に諏訪に向かう最中に嵌められたのも納得がいくくらい、情報が出てこねえんだ。くそっ……」
「そうか……」
幻庵はしばらく考え込む。
「復讐に囚われて、自分を捨ててしまったのだな。
方円殿は……」
「えー、それじゃトラウマ突っつく作戦はできないじゃん!
本当に出てこないの? 情報、こーたーろーうー!」
氏政が横から口を挟む。
「黙っちょれ、お主は……💢💢」
幻庵の一喝に、
「:( ˙꒳˙ ):ヒェッ」
氏政は縮こまった。
「たしかに……」
氏康が続ける。
「小笠原の一斉蜂起の際といい、裏で糸を引いている者の姿は分からなかったと、以前信玄殿が嘆いておられていたような……」
「それが方円だったのだろうな」
「最後の最後に煽りの手紙が送られてきて、存在がわかっていたはず……」
幻庵は深く息を吐いた。
「わしも大概だと思っていたが……」
「それ以上の怪物がいたとはな」
「恨みとは、恐ろしいものじゃ……」
小太郎も唸る。
「くそっ……もはや忍びすら逃げる忍びじゃねえか……」
――その会話を、壁越しに聞いている者がいた。
成田の密偵は、息を潜めながら心の中で呟く。
(北条……恐るべし。
主の読み通りとはいえ、既にこちらを探っておるとは……)
(幻庵の分析といい、なんと恐ろしいのだ……)
そして、そっと氏政を見る。
(そして氏政はポンコツ、と……φ( ՞. ̫.՞)カキカキ)
(さて、見つかる前にさっさと出ていくか……)
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箕輪城。
広間にて、成田長泰から届いた書状を長野業正が読み上げていた。
富来 えび
122
#自分用
富来 えび
20
һагυ_彡
238
「成田長泰殿から書状が届き申した」
「どうやら、方円殿の過去を探られていたようだ」
景虎が書状を覗き込む。
「北条幻庵の分析力が危険とも書かれているな。
さすが、あの北条早雲の息子と言うだけはある……」
方円も書状を読み、
「ふむ……氏政はポンコツとも書かれておりますね……」
と、淡々と呟いた。
「あと、私の過去を探ったところで意味は無いでしょう」
方円は、自分の手元にある正蛇の槍へ目を落とす。
「父上からもらった、この正蛇の槍を手にした時点で――」
「私は、死んでいるようなものですから」
「…………」
業正と景虎は、何も言えなかった。
やがて業正が咳払いをする。
「こほん……しかし、これで謎が解けもうした」
「おそらく、あの返書を書いたのは氏政でしょうな」
「…………うむ」
景虎も頷く。
「おかしいと思っておったのです。
氏康殿にしては、幼い言葉遣いでしたからな」
景虎は少し複雑そうな顔をする。
「……少しだけ北条に同情するわ」
「まあ、方円殿も言っていた通り――」
「弁明が来ておらぬ以上、征伐は続ける」
「それでいいのですよ」
方円は微笑む。
「正してやりましょう」
「意味がないとはいえ、私の過去を覗こうとするとは……」
そして、目を細めた。
「深淵を覗く時、こちらも見ていると言うことが、分かっていないようですからね」
「ふふふふふ……」
景虎は、そっと目を逸らした。
(やっぱり怖い……)
業正も方円を見つめる。
(方円殿……ご無理なさらず……)
「ふーむ……」
方円は顎に手を当てる。
「以前、兄にやったことと同じことをして――」
「怒りで周りを見れなくしてやりましょう」
業正が少し考え込む。
「……ほう」
景虎は遠い目をした。
「前も言ったが……ついていけぬ……^^;」
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その頃。
北条へ向けて、一通の書状が送られていた。
『逆賊北条さんへ』
『あの返書送ったの、あんたらの息子でしょ?』
『バレてるよ^^』
『弁明が全くないみたいだから、
そっちも子供を庇ってるか、やり口が正しいと思ってるみたいなんで――』
『もう返書送ってきても、許しませんからね^^』
『あと、私の過去を探っても意味ないこと、わかったよね^^』
『でも、覗きみようとしたことは許さないですよ』
『まあ頑張ってください』
『正蛇 方円』
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小田原城。
書状を読み終えた氏康の顔から、表情が消えた。
(う……じ……ま……さ💢💢)
隣では、幻庵も額に青筋を浮かべている。
「こやつ……わざわざ煽りの手紙を送ってくるとは……💢💢」
小太郎も歯を食いしばる。
「くそっ……どこまでもバカにしやがって!」
「しかも、なんでバレてやがる……💢💢」
多目元忠は、ただ静かに書状を眺めていた。
「幻庵様を本気で怒らせるとは……方円、恐るべし……」
その横で氏政は、父の様子を見て首を傾げる。
「あれ……父上、なんで真顔でこっちに来るの?」
「いやー……」
「書庫へ連れていかないで😭」
氏康は笑顔を浮かべた。
「話は向こうで聞くから」
「行こうな^^」
「いやあああああ😭」
多目元忠は、そんな二人を見ながらため息をついた。
(若……お労し……)
(……プッwww)
「……とりあえず」
元忠は咳払いをする。
「なぜこちらの動きがバレているのかを探らねばなりますまい」
「ひとまず、皆さん怒りを鎮めて頂いて……」
「…………💢💢」
幻庵は、まだ怒っている。
「おめえは、なんで冷静なんだよ!」
小太郎まで元忠へ食ってかかる。
「普通、切れるだろ💢💢」
「えええ……」
元忠は困惑した。
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成田の密偵は、ひとまず小田原城から離れようとしていた。
「方円とか言うやつが少し手紙を送るとは、主から聞いていたが……」
「めちゃくちゃ効いてて草なんだが( ᐛ )」
「そして多目元忠は挑発が効かない、苦労人と……φ( ՞. ̫.՞)カキカキ」
その時――
ヾ(・д・` )㌧㌧
「ん……?」
振り返ると、そこには出浦盛清が立っていた。
「(^^)こんちわ」
「主の名前が聞こえて飛んできました」
「……!」
密偵は慌てて口を押さえ、叫び声を抑える。
(ぎゃーーーー!!)
出浦はにこやかに続けた。
「成田の密偵ですよね(^^)」
「うちも用事のついでに、北条のやつを独断で探りに来たんです」
「あと、盗み聞きは良くないし――」
「既に知らないやつが入ってるって、一部の北条兵には勘づかれてるよ」
「とりあえず、直接聞かないと見ておきな^^」
「これが密偵の仕方だ」
そう言うと、出浦はさっと北条兵の姿へ変装した。
「……申し上げます」
「先程、ここらでは見かけない人物がうろついておるのを目撃しました」
幻庵が振り返る。
「なにっ💢💢」
「それは本当か!」
変装した出浦は、もっともらしく頷いた。
「はっ」
「実は先程の話を全て聞いてしまったのですが……」
「もしや、そいつのせいで動きがバレたのでは……?」
「…………」
幻庵の顔がさらに険しくなる。
「………さっさと追わんか💢💢」
「このばかもの💢💢」
「はっ! 申し訳ございませぬ!」
その様子を少し離れた場所から見ていた成田の密偵は、思わず笑ってしまう。
(あいつ何やってるんだ笑)
(幻庵、さらにブチ切れさせてて草)
変装した出浦は、そのまま逆方向へ歩いていく。
そして、さりげなく手で合図を送った。
(さっさと行け)
「……!!!」
密偵は小さく頭を下げる。
(かたじけない……!)
その直後――
「ちっ……面倒な」
小太郎が立ち上がった。
「幻庵殿」
「俺も少し、そいつを探してくる」
「こうなった以上、忍び込んだやつを始末して、首を向こうに送ってやる」
「そうか」
幻庵は頷いた。
「小太郎が探してくれるなら助かるわ💢💢」
「絶対に逃がすなよ」
「わしも聞き込みしてくるからの」
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その頃――
忍城。
成田長泰のもとへ、密偵が戻ってきていた。
「なにっ!」
「別の密偵に出くわしただと?」
「はっ」
密偵は、先程の出来事を思い出しながら話す。
「いきなり背中を㌧㌧されて……」
「ニコッと背後に立っておったので、叫びそうになりました」
「……あー、もしや出浦か」
長泰は苦笑する。
「そうやって風魔を始末したようだからのぉ」
「恐ろしいやつを使いおる……」
「それと――」
密偵は続ける。
「小田原城内には、当分は入ることができなさそうです」
「一部の兵に感づかれていたようで……」
「それを助けていただいたのです」
「そうか……!」
長泰は驚いたように目を見開く。
「ということは……」
「小田原城内の動きを、向こうの方が把握できていたということか」
「……むむ……」
しばし考え込む。
「仕方あるまい」
「お主は天井に登ったりはできんからな」
「忍びではないのに、むしろよくやってくれている」
「少し休んでくれ」
密偵は深々と頭を下げる。
「はっ……」
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小田原では北条が方円の過去を探り、
箕輪では北条の動きを探り、
忍城の密偵が暗躍する。
そして――
誰もがまだ知らない。
この情報戦が、やがて次なる一手へ繋がっていくことを。
コメント
1件
うわあ、このエピソードめっちゃ面白かった…!✨ 方円の「深淵を覗く時〜」の台詞、重くてドキッとしたよ。 過去を探られても動じない強さ、逆に煽りの手紙で北条を怒らせるやり方、完全に心理戦でリードしてる…。 氏政♡♡♡すぎて草だけど、幻庵のブチギレ具合とか出浦の神フォローとか、キャラ立ちがすごくいい。 情報戦の駆け引きがじわじわ熱くなってきて、次が気になる…!