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21 - 第二十一話「割れた鏡のむこうで 」

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2025年07月25日

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現実世界――


ないこは、再び鏡の前に立っていた。

昨日より深くひび割れたその表面は、どこか“境界”を越えようとしているように見えた。


ないこ(心の声):

「……まだ、いるんだよね……あの“わたし”が」


鏡の奥に、もう一人の“ないこ”がいる。

叫んで、泣いて、壊れそうなまま、そこでずっと立ち尽くしている。


ないこ(心の声):

「逃げたいのは、わたしじゃない。

 ……きっと、あの子のほうだった」


ないこは、そっと鏡に手を伸ばす。

その指先が触れた瞬間――


パリン


小さく音を立てて、鏡の表面が弾けた。

しかし、砕けることはなく、代わりに**“向こう側”の世界**が開いていた。



深層――鏡の裏側。


闇ないこは、鏡の前で立ち尽くしていた。

彼の目の前に、“ないこ”が立っていた。


現実の姿そのまま。

言葉はなくとも、その瞳に宿る想いは、すべてを物語っていた。


闇ないこ(眉をひそめて):

「……何しに来たんだよ。

 今さら、慰めでもしに?」


ないこは首を横に振る。

代わりに、胸元から取り出したのは、ギターピックだった。

かつて、ふたりが“同じもの”だった証。


それをそっと、鏡の床に置く。


ないこ(心の声):

「もう、ひとりで泣かなくていい。

 あなたは、わたし。

 ずっと叫んでくれてた……ありがとう」


闇ないこは、ピタリと動きを止める。

その頬を、一筋の涙が静かに流れていた。


闇ないこ(声を震わせながら):

「オレは……オレはずっと、壊れた“おまえ”を背負って、代わりに怒って、叫んで……

 それしか、できなかったのに……!」


ないこは、そっと歩み寄る。

声は出ない。でもその手は、まっすぐ差し出されていた。


ないこ(心の声):

「あなたが守ってくれた。

 今度は、わたしが……あなたを抱きしめる番」


その瞬間――


闇ないこは、初めて涙をこらえずに泣いた。

怒りでも憎しみでもなく、“救われた”涙を。


ゆっくりと、ふたりの手が触れ合い、光が、深層を満たしていく。



現実世界――


ないこの部屋の鏡が、音もなく割れ、静かに砕け散った。

粉々になった破片は、光の粒となって空中に消えていく。


そして――ないこは、喉に力が戻っていることに気づいた。


ないこ(ぽつりと):

「……ただいま」


その言葉は、しっかりと音になっていた。

闇と向き合い、そして繋がったその先で――

“ないこ”の声は、ようやく現実に帰ってきた。




次回:「第二十二話:壊れていたのは誰か」へ続く



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