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続き
かつて冷静沈着で、誰よりも判断力があったはずのりうら。けれどリーダーを失ってからは、自分が決断するたびに「もし間違っていたらまた誰かを傷つける」と恐れるようになる。
会議では意見を言わなくなり、沈黙を選ぶ。
SNSも更新せず、スマホを見つめるだけの日々。
夜になると「りうらが傍にいれば、ないくんは助かったんじゃないか」と繰り返し自分を責める。
次第に、ファンの前でも「笑顔」が作れなくなっていった。
優しい性格だったほとけは、誰よりも深い罪悪感を背負った。
「僕が止めなかったから」「僕が気づけなかったから」と毎晩ノートに反省を書き殴る。
そのノートのページはやがて「ごめん」「ごめん」と同じ言葉で埋まっていく。
家では明かりを点けず、ベッドに横たわったまま動けない日が増えた。
表向きは「大丈夫」と笑おうとするが、その笑みは日に日に痩せていく。
いつも明るく場を盛り上げていたが、心にぽっかり穴が開いてしまう。
「俺が笑わせとったら、ないこも笑ってくれたはずや」そう思うたび胸が張り裂けそうになる。
大勢の前で冗談を言おうとしても、途中で声が震えて出なくなる。
鏡を見て「俺、もう誰も笑かされへんのやな」と自嘲する日々。
ファンに向けた言葉も減り、関西弁の軽口は過去のものになってしまった。
グループの支えであり続けたあにきは、責任感からさらに深く病んでいく。
「リーダー守るんは兄貴分の俺の役目やったのに」
夜は酒に頼り、気を失うまで飲み続ける。
朝起きると、枕元には空の缶が転がり、かすれた声で「すまん、ないこ」とつぶやく。
表では強がって「大丈夫や」と言うが、仲間は誰も信じられなくなっていた。
皮肉を言いつつも、実は誰よりも仲間を大切にしていた初兎。
ないこを失ってからは、その皮肉すら出なくなった。
ステージに立つと、観客の歓声に押し潰されて息が苦しくなる。
マイクを握る手が震え、声が出なくなってリハーサルを中断することも増えた。
部屋ではひとり、録音機に「ないこ」とだけ繰り返して吹き込み、その声を再生しては涙を流す。
「僕、もう歌えないかもしれない」――そう呟く声は誰にも届かない。
6人だったはずのグループは、リーダーの不在を埋められず、残された5人もそれぞれが壊れていく。
共に歌った日々の輝きは遠い記憶となり、今はただ「後悔」と「喪失感」だけが彼らを支配していた。