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「……もっとも君が、私に襲ってほしいのなら、そうして差し上げますが」


「いいえ…!」


からかうような軽口に、苛立った声を上げ、ベッドから身体を起こそうとすると、


「……そんなに簡単に、私の元から帰れるとでも思っているのですか?」


突然に、両方の手首を上から強い力で押さえ込まれた。


「……離してくださいっ」


必死に抵抗をして、ようやく片手だけを振りほどく。


「この私から逃げようとする女性がいるなど……信じられないですね」


さも不機嫌そうに政宗医師は眉間にしわを寄せ、かけているメガネを、ほどかれた方の手で押し上げると、


「……私にこうされたいと思う女性の方が多いのに、君はそうではないなど……。一体、私の何が不服なのですか?」


目を訝しげにすっと細めた。


「不服とか、不服じゃないとかではなく……」


微塵のコンプレックスも感じさせない自惚れた口ぶりに、反論をしようとするけれど、


「……こんな風に無理やりされるのは、好きじゃないです……。……別にあなたでなくても、他の誰でも……」


見つめる冷たくも美しい顔から目が離せなくなって、つい曖昧な言い方になる。


「……では私だから、嫌なわけではないと? そう取っても、よろしいのですね?」


言いくるめるかのような問いかけに、何も答えられずに口ごもっていると、


「……ならば、キスぐらいはさせてもらっても、かまわないですよね……」


政宗医師がそう低く呟くや、薄い唇を近づけ、


「んっ…」


濡れた舌の先で、唐突に私の唇を割り開いた。


そうして舌でこじ開けられた口の中に、不意に何かが入れられた気がして、


「……何を、飲ませたんですか?」


唇が離れた瞬間、咄嗟に手で口元を押さえた。


「……誘眠剤です。……ごく弱いものなので、どうかご心配なく……」


政宗医師が、ゾクリと震えるような冷ややかな笑みを浮かべる。


「心配なくって、どうしてそんなこと……」


飲まされた薬を吐き出そうとする私に、


「ああ、一度飲めば即効で溶けますので、吐くことは不可能です。ちょっと身体の動きが鈍くなる程度で、あまり害はありませんから」


政宗医師は、相変わらず何の感情も読み取れない、冷たく取り澄ましたような顔つきで、そう淡々と告げた──。

「責め恋」美形な医師は、サディスティックに迫る

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