カフェテリアの入り口に、俺の背の二倍はあるクリスマス・ツリーが建っていた。テーブルにはそれぞれ、キャンドルが設置されている。
遠くから、繊細で美しいブルースが聴こえてきた。奈津美のピアノには個性が出てきた。短い間の割には、かなり上達したと思う。
奈津美の隣のアップライトピアノに座って、装飾音を加えた。そのハーモニーで、曲はクリスマスの電飾のようにきらきら輝きだした。
熱中していて気がつかなかったが、いつの間にかピアノの周りには人垣ができていた。その中に、デジュンの顔を確認した。演奏を終えて捜したときには、彼の姿はなかった。
クリスマスパーティが始まると、俺は奈津美と壁際の長椅子に移動した。そこはカフェテリアの隅っこで、客席からはグランドピアノの陰になっている。
奈津美の手をそっと取った。華奢な手が握り返してきた。
「今、とっても幸せ。あなたと一緒にピアノ弾くの、夢だったのよ」
彼女は微笑を浮かべ、肩に寄り添った。
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