テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
iroha
159
暇人
6
瀬那
4
時間あってかけたので作品投下…!
第6話「白い現実を、共有する日」
病院の自動ドアが開く音は、どうしてこんなに冷たく聞こえるんだろうか。
「……ここか」
なつが、少しだけ声を落とした。
「らん、平気?」
「……うん」
平気じゃない。
でも、嘘でもそう言うしかなかった。
今日は、一人じゃない。
それだけで、足が前に出た。
「らんくん、こさめ、隣でいい?」
こさめが自然に並ぶ。
「……ありがと」
その一言を言うだけで、喉が少し詰まった。
待合室。
静かすぎて、時計の音がやけに大きい。
「……」
椅子に座った瞬間、胸がざわつく。
「……は……」
無意識に、浅く息を吸う。
「らん」
いるまが、すぐに気づいた。
「呼吸、ゆっくり」
「……わかって……る……」
そう言いながら、肩が上下する。
「大丈夫だよ、らんらん」
みことが、らんの手元を見た。
「ほら、手、握ってもいい?」
「……うん……」
指先に、温度が伝わる。
「……っ」
少しだけ、呼吸が落ち着いた。
「らんらん」
すちが、真っ直ぐな声で言った。
「今日は、全部聞こう」
逃げ道を塞ぐ言い方じゃない。
一緒に受け止める、という声だった。
「……ごめん……」
ぽつりと、らんが呟く。
「こんな……」
「謝るなって」
なつが、即座に被せた。
「ここに連れてきたの、俺たちだ」
その言葉に、胸がぎゅっと縮む。
「らんさん」
名前を呼ばれ、全員が立ち上がった。
診察室。
白い壁、白い机。
——前に来たときと、同じだ。
「今日は……」
医師が、ちらりとメンバーを見る。
「ご本人の同意があったので、説明します」
らんは、ぎゅっと拳を握った。
「……お願いします」
声は、震えていた。
「病状は、進行しています」
はっきりした言葉。
「治療で進行を遅らせることはできますが……」
一瞬、間が空く。
「期限があることは、変わりません」
空気が、重く沈んだ。
「……期限?」
なつが、静かに聞いた。
「……数か月から、一年ほどです」
その瞬間、
らんの耳が、じん、と鳴った。
「……っ」
喉が、きゅっと閉まる。
「……は……」
呼吸が乱れ、視界が揺れる。
「らんくん!」
こさめが、すぐに肩を支える。
「……ひっ……」
小さな嗚咽が漏れた。
「……ごめ……」
「違う!」
なつが、強く言った。
「謝る話じゃない」
みことは、唇を噛みしめていた。
すちの目は、逸れていない。
「……らんらん」
みことが、震える声で言う。
「一人で聞いてたんだね……これ……」
その言葉に、らんの涙が止まらなくなる。
「……怖くて……」
「……っ、は……」
息が詰まり、胸を押さえる。
「……言えなくて……」
いるまが、静かに一歩前に出た。
「でも、今は言えた」
低い声。
「それでいい」
医師は、少し声を落とした。
「今後は、活動との両立を慎重に考える必要があります」
「……歌えますか」
らんが、必死に聞いた。
「……ステージに……」
「体調次第ですが……」
医師は、正直に答えた。
「負担は大きいでしょう」
その言葉に、らんは俯いた。
「……そっか……」
「らん」
なつが、らんの前にしゃがむ。
「歌うかどうか、決めるのは今じゃない」
目を見て、はっきり言った。
「まず、生きよう」
その言葉が、胸に落ちた。
「……っ」
らんの喉が鳴る。
「……生きたい……」
初めて、素直に出た言葉だった。
「……まだ……」
涙をこぼしながら、続ける。
「……みんなと……」
誰も、否定しなかった。
白い診察室で、
一人じゃない現実を知った。
♡150
コメント
1件
えぐい、感動する。テスト期間ですよねっ、 投稿ありがとうございます。 お疲れ様です、