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ナオトが床に寝転がっていると、オレンジ色の長髪とピンク色の瞳と背中に生えている四枚の天使の翼と先端がドリルになっているシッポが特徴的な美少女……いや、美幼女『ミカン』がとなりにやってきた。
「ナオト、ダイジョウブ?」
「うーん、まあ、一応……」
ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)が覇気のない声を出すと、ミカンは彼の手を握った。
「ナオトハ、イツモ、キケンナミチヲ、エラブ」
「まあ、そうだな。けど、誰かがそれをしないと前に進めない時ってあるだろ?」
「ソウナラナイヨウニ、ミンナデ、カンガエレバ、モンダイナイヨ」
「そうだな。それができれば、いいよな」
「ナオトハ、ソレヲシナイカラ、イツモ、ヒドイメニアウ」
「あー、まあ、そうだな。あはははは」
「ワライゴトジャナイヨ」
「そ、そうだな。ごめん」
彼がミカンから離れようとすると、ミカンは彼の腕にしがみついた。
「ドコニイクキ?」
「あー、いや、ちょっとお手洗いに……」
「ナオト、ウソハヨクナイヨ。ホントウノコト、イッテ」
「……えっと、その……この雨を降らせているモンスターのところに行こうとしてました」
「ダトオモッタ」
「ちょっとだけ様子を見に行くのはダメか?」
「ダメ」
「偶然通りかかったとか言って、近づくのは?」
「ダメ」
「旅をしている者《もの》ですが」
「ダメ」
「まだ最後まで言ってないのだが」
「ナオトハ、ソイツト、タタカイタイノ?」
「あー、いや、その……はい、その通りです」
「ナラ、ダメ。ナオトハ、ココニイルベキダヨ」
「けど、なんかこう体の内側から、そういう気持ちが溢れてきて……」
「ダメッタラ、ダメ」
「どうしても、ダメか?」
「ウン、ダメ」
「明日、世界が終わるとしても?」
「ナオトガ、チカクニイナイセカイナンテ、ホロベバイイ」
「ええ……」
「ダカラ、オネガイ。ヒトリデ、ドコカニ、イコウトシナイデ」
ミカンの体が小刻みに震えている。
彼を失うのが怖いからなのか、少し寒いからなのかは分からないが、彼女が不安になっているのは分かった。
「分かったよ。ここにいればいいんだろ?」
「ウン」
「そっか。じゃあ、約束しよう」
「ヤクソク?」
「ああ、そうだ。もし、俺がみんなの言うことを聞かずに飛び出したら、お前のそのシッポで俺を痛めつけてくれ」
「ソンナコトデキナイ」
「もしもの話だよ」
「ワカッタ……。ジャア、ヤクソクダヨ」
「ああ、約束だ」
二人が指切りをすると、ミカンは彼を強く抱きしめた。
「な、なんだよー。そんなに強く抱きしめなくても、俺は逃げたりしないぞー?」
「……スゥ……スゥ……」
「え? ちょ、寝たのか? 俺は抱き枕じゃないんだが。まあ、いいか」
彼は幸せそうな笑みを浮かべているミカンの頭を優しく撫でた。
雨はまだ……止まない。