テラーノベル
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ある日の朝─
「急がなきゃ遅刻しちゃうっ!」
主は朝からバタバタと仕事に行く支度をしていた。仕事は嫌いじゃない、でも執事達に甘やかされるようになってから自堕落な生活を送っていた。
ムーはまだベッドで眠っているのを見て、主は良いな…と思いつつ持って行く物をカバンに入れ乱雑にベッドの上に置いた。
「主様、ヘアセットするので座って下さいっす♪」
アモンはそう言って、主の髪を綺麗にまとめた。主はベッドの上に置いたカバンが倒れたせいで、いくつかベッドの上に荷物が散乱しているのを見て、かき集めてカバンに乱雑に入れた。
「行ってらっしゃいませ、主様!早く帰って来るんすよ?」
「行ってきます、アモン。」
アモンは主との一時の別れの挨拶をした。
「ふぅ…行っちゃったっす。主様が出かけてすぐは、テンション下がるっすよね〜。なんかやる気出ないっす。
ま、そうも言ってられないっすよね。さて、庭で花の手入れでもしようっと…。」
そう言って、アモンは庭に向かって行った。
†††
主はいつも車で職場に向かう。車の運転も今では慣れたものだった。最初はおっかなびっくりで運転してバック駐車もなかなか出来なかったものの、今はバック駐車も簡単に出来るようになった。
主は職場の自分のロッカーにカバンを置いて白衣を着て、準備をした。
主の仕事は─
「◯◯さん!おはようございます。」
「△△君!おはようございます。」
病院の医師として働いているのだった。
午前中は外来患者さん、午後は入院患者さんを診るのだが、午前中の患者さんの人数が多く、目まぐるしい毎日だった。
「やっとお昼休憩…」
外来患者さんの診察が長引いて、少し遅めのお昼休憩に入れた。よくある事だし、早く終わる事なんてほとんどない。
午後の入院患者さんのカルテを見ながら、ロノが作ってくれたお弁当を広げた。 いつも、美味しいご飯を作ってくれるし、栄養をちゃんと考えてくれてるおかげで毎年の健康診断もほとんどがAだった。
一部を除いては─
「わぁー!本当いつも、すごく美味しそうなお弁当ですね!◯◯さんってお料理、上手なんですね♪」
「う、うん!まぁね…。」
(…実は私が作ってる訳じゃないんだけどね。でも話すのが面倒くさいし、いっか。)
人懐っこい後輩はやたらと主に絡んで来て、お弁当を褒めたり暇が出来ると一緒に居ようとする事が多い。
主にとっては仕事を教える程度であまりプライベートな話をしないので、可愛い後輩としてしか見ていなかった。
主がロノが作ってくれたお弁当を食べている時に、ロッカーの方から ガタンッと音が鳴った。
(…え?何の音?)主は恐る恐るロッカーの方へ行き、自分のロッカーを開けると、ムーがカバンの中から顔を出した状態で居た。
「あ、あるっむぐ!」
主はムーが喋り終わる前に、ムーの口を塞ぎ人差し指を口元に当て静かにするように促した。
そして、主とムーは小声で話し合った。
「なんでムーがここに居るの!?」
「僕も分からないんです…気付いたらここに居て、何が何やら分からなくて…」
主はベッドに散乱したものを適当に入れてカバンの中を確認せずに、仕事に来てしまった事を思い出す。
まさかとは思ったが、それ以外考えられなかった。どうしようかと少し考え、ムーもお腹が空いただろうしお弁当を分けてあげようと思いお弁当を持って人けのない所に移動しようとした。
「あれ?◯◯さん!?」
後輩に声を掛けられたが、ちょっと用事を思い出したと言い、その場から離れた。ここなら大丈夫、と思いムーをカバンから出してあげた。
「ごめんね!私が朝慌ててたせいで…ロノが作ってくれたお弁当あるから一緒に食べよ♪」
主は謝りムーは美味しそうなお弁当を目の前にし、はいっ!と返した。それから主とムーは一緒にご飯を食べ、主は午後の仕事、ムーはロッカーの中で大人しくする事になった。
幸いムーもお腹いっぱいになったのか、主の仕事の間は寝ていたりカバンに付けてあるチャームで遊んだりしていた。
†††
「あれ?ムーが居ないっすね。」
アモンは執事の食堂でキョロキョロしながら自分のご飯を食べていた。他の執事達も、今日は見ていないという事で皆不思議がっていた。
いつもなら、ササミを欲しがりにキッチンにまで来るのに…とロノも戸棚の中を探したりしていたらボスキはそんな所にはいねぇだろ、とつっこんだ。
執事達は午後からムーを探したり、各々の仕事をしたり過ごしていた。
───
主は今日の仕事が終わると、急いで屋敷に帰らなきゃと思い、お疲れ様です!と挨拶をするとロッカーに白衣を掛け、カバンを持って急いで車に向かおうとした。
その時─
「あの、◯◯さん!今日、お食事でもどうですか?最近、良さげなレストラン見付けたんです。良かったら一緒に…」
主は後輩の言葉を遮り、今日は用事があってと言ってバッサリと断った。その場に居た医局の人達は、またかと思いその内の1人が後輩に声を掛けた。
「お前もよく諦めずに誘い続けられるな!俺も何度か誘ったりしてたんだけど、同僚としか思われてない感じで諦めたんだよな…」
後輩は貴方と一緒にしないで!と心の内で思いながらも、一応先輩であるので角は立てずに気持ちを押し殺した。
「だって俺、本気で◯◯さんの事が好きなんですからしょうがないじゃないですか…」
職場では後輩の告白宣言から、その場に居た医局の人達で飲みに行ったとか…
†††
主は車に乗り込み、カバンからムーを出してあげた。いつまでも狭いカバンの中に入っているのも辛いだろう、と思ったのだった。
「ムー、ちゃんと座っててね!」
主はシートベルトをし、エンジンをかけて運転し始めた。普段見ない主を見て、ムーの心は高鳴った。
「主様なんだか、格好良いです!それに、この箱の中って意外と広いですね!他の執事さん達も乗れそうです。」
「箱じゃなくて車って言うんだよ!」
ムーはキョロキョロしながら車の中を見ていた。主の車はバンタイプなので確かに、他の執事達も乗せられそうだが、他の執事達がこっちに来る方法なんて…と思いながら運転していると、住んでいるマンションの駐車場に着いた。
主はシートベルトを外し、ムーと一緒にエレベーターに乗った。一応、ペット可のマンションだからムーが監視カメラに写っても問題はないだろうと思い、ムーには歩いてもらった。
主は部屋に着くと、疲れがどっときたのかソファーに倒れ込んだ。でも、ムーの事もあるのでムーの事を抱き締めながら、早速指輪をはめた。
†††
アモンは主の部屋で帰りを待っていると─
「おかえりなさいませ、主様。って…え!?ムーがなんで主様と一緒に居るんすか!?」
しかも、ムーは主にしっかりと抱き締められているので、ちょっとした嫉妬心も入り、主からムーを引っ剥がした。
すると、ムーはロノさんの作ったご飯を食べに行きますと言って、キッチンの方へ向かって行った。
主はムーがカバンの中に入っていて、主の居る世界に来てしまった事を話した。すると、アモンは少し考えて突拍子もない事を言った。
「…じゃぁ俺も、主様の世界に行ける可能性もあるって事っすよね!俺も主様の世界に興味あるっす。…連れてってくれないっすか?」
アモンは甘えるように主の腰に両手を回し、顔を近付けてきた。主は胸の高鳴りを抑えながら、視線を背けた。
「…行けるかどうかは分からないよ?ムーの時はたまたまカバンの中に入ってただけだし、それにどうやって連れてけば良いのかなんて分かんないし…」
アモンは主をギュッと抱き締めながら、耳元で話しながら、主の指と自身の指を絡ませていく。
「このまま指輪外したらどうなるんすかね?主様の居る世界に連れて行って下さいっす。ダメっすか…?」
主の胸の高鳴りがどんどん大きくなっていった。普段のアモンからは感じられないくらいの色気を感じた。頭がクラクラする程に─
「っぁ、アモン…」
主はただ声を出すだけでもやっとだった。
横を向けば、キスをしてしまいそうな距離に主の胸の高鳴りはなかなか収まらない。そして、主はゆっくりと指輪を外した。
主とアモンが居た場所は─
みー
8
Codeレイ
46
MAKO
219
コメント
1件
うわぁ、これは…いきなり胸が熱くなる展開ですね!朝のバタバタから、まさかのムーがカバンに紛れて職場へ行っちゃうハプニングが可愛くて、ほっこりしました。でもラストのアモンの甘くて色気のある迫り方がすごく印象的で…主様の戸惑いと高鳴りがひしひし伝わってきて、もう続きが気になって仕方ないです!この世界の仕組みや指輪の秘密も気になりますね〜。