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※先輩の名前は創作です。
実際の方には関係ありません。
スタジオは独特の熱気に包まれていた。
リハ終わりの出演者たちが行き交い、
笑い声とスタッフの声が重なる。
佐野はペットボトルを持ったまま、少し離れた位置でメンバーを探していた。
──いた。
曽野、山中、吉田。
でも。
「えー!ほんとですか?」
知らない女性タレントと三人が楽しそうに話している。
距離が、近い。
笑いながら肩に触れて、
ツッコミみたいに腕を叩いて、
自然に距離が縮まっている。
(……近くない?)
胸の奥がざわっとする。
自分と話してる時より、楽しそうに見えるのが嫌だった。
目をそらそうとしても、視線が戻ってしまう。
喉が少し熱い。
そのとき。
「佐野くん?」
振り向くと、先輩の中島が立っていた。
柔らかい笑顔。
「今日も一緒だね。お疲れ」
ぽん、と肩に手が置かれる。
優しい声。
それだけなのに、張っていた気持ちが少し緩んだ。
「……お疲れさまです」
うまく笑えない。
中島はすぐ気づいたみたいに首を傾ける。
「なんか元気ない?」
目線を合わせるように少しかがむ。
その距離の近さに、さっきの光景が重なった。
楽しそうなメンバー。
置いていかれた感じ 。
気づいたら、口が先に動いていた。
「……ちょっと」
小さく息を吸う。
「ここにいていいですか」
中島は一瞬だけ目を細めて──
ふっと笑った。
「いいよ。楽屋行こっか」
まるで全部わかってるみたいに。
楽屋前
扉が閉まる。
外のざわめきが遠くなる。
「座りな?」
ソファを指されて歩き出した瞬間。
コードに足が引っかかる。
「あ、」
バランスを崩く。
倒れそうになったところを中島が反射的に支えて──
そのまま。
どさっ。
ソファに倒れ込む形になった。
佐野が下。
中島が覆いかぶさる体勢。
距離ゼロ 。
「……っ」
顔が近すぎて息が止まる。
中島は一拍置いてから、くすっと笑った。
「危な」
離れるどころか、肩を支えたまま。
わざと少し顔を近づける。
「そんな焦ってどうしたの?」
耳元で低く言われて、佐野の耳が一気に赤くなる。
「ち、違…」
その時。
ガチャ。
楽屋の扉が開いた。
「佐野いま──」
吉田の声が止まる。
沈黙。
曽野、山中も後ろで固まる。
目の前の光景。
ソファ
押し倒されてるみたいな体勢。
距離ゼロ。
三秒。
完全停止。
「……は?」
吉田の低い声。
空気が凍る。
中島は状況を理解しているのに、まったく慌てない。
むしろ楽しそうに。
「あ、迎え?」
そう言いながら、佐野の肩をぽんぽんと軽く撫でる。
わざと。
完全に。
わざと。
「佐野くん、寂しかったみたいでさ」
にこっと笑う。
三人の空気が一段階下がる。
「……離れてもらっていいですか」
山中の声が笑ってない。
「ん?怖いなあ」
中島はゆっくり立ち上がる。
でも最後に。
佐野の髪を整えるみたいに触れて、
「ちゃんと迎え来てくれるじゃん。よかったね」
小声で囁いた。
完全に理解した顔。
佐野の顔が真っ赤になる。
次の瞬間。
ぐいっ。
腕を掴まれる。
「帰るぞ」
吉田。
「え、ちょ──」
抵抗する間もなく引っ張られる。
後ろから曽野がドアを閉め、山中がため息。
廊下。
壁に追い込まれたままの佐野。
逃げ場、ゼロ。
吉田の手が壁についたまま動かない。
近い 。
近すぎる。
「……何してたの」
低い声。
さっきより静かで、逆に怖い。
「だから…別に…」
目をそらそうとした瞬間、
ぐっと顎を軽く持ち上げられる。
「目、そらすな」
距離が一気に縮まる。
鼻先が、もうすぐ触れそう。
呼吸がかかる。
佐野の心臓が跳ねる。
「……みんなが」
声が震える。
「楽しそうだったから」
一瞬。
三人が止まる。
山中が小さく息を吐いた。
「それで先輩んとこ行った?」
黙る。
図星。
曽野が額を押さえる。
「はーーー……まじか」
吉田は動かない。
ずっと近いまま。
視線を外さない。
「嫉妬?」
その一言で。
佐野の目が揺れる。
「ち、違…」
否定しきれない。
その反応に、吉田の眉がわずかに下がる。
怒ってる顔じゃない 。
困ってる顔。
「俺らが他の人と話してただけで?」
さらに近づく。
──鼻と鼻が、かすかに触れる。
「っ…!」
佐野が息を止める。
逃げようとすると、後ろは壁。
逃げられない。
山中が横からぼそっと。
「近すぎでしょ」
でも止めない。
吉田、小さく笑う 。
「そんな顔すんなよ」
親指で、目元を軽くなぞる。
「泣きそうだったぞ」
佐野の耳が真っ赤になる。
「だって…」
小さな声。
「俺いなくても楽しそうで…」
沈黙。
次の瞬間。
ぐい。
肩を引き寄せられる。
軽くぶつかる距離。
でも抱きしめる一歩手前で止まる。
「ばか」
優しい声。
「お前いないと成立しねぇだろ」
曽野が後ろで頷く。
「むしろ探してたし」
山中も苦笑。
「先輩に取られかけて焦ったわ」
佐野、目を丸くする。
「……え?」
吉田がさらに顔を近づける。
また鼻先が触れる距離。
わざと。
完全にわざと。
「次、寂しくなったら」
低く
ゆっくり
「先輩じゃなくて、最初にこっち来い」
一瞬、静止。
心臓の音だけ大きい。
そのとき。
遠くからスタッフの声。
「本番五分前でーす!」
空気が一気に戻る。
吉田が離れる。
でも最後に。
ぽん、と頭を軽く叩く。
「行くぞ、姫」
佐野 「姫言うな!!」
後ろで山中が笑う。
「さっき完全にお姫様だった」
曽野 「泣き顔危なかったなー」
佐野 「もういい!!」
チョットなに言ってるかわかんない🤨🤨