蛍光灯の光がちょっと眩しい会議室。モニターにはステージのセット図。テーブルにはびっしり貼られたメモと、開きっぱなしのノートPC。
そのど真ん中で、塩﨑太智は腕を組んでうんうん唸っていた。
「……あかん。ここどーしよ。」
何かを掴みかけてるのに、あと一歩で届かない。
そんな空気の中で時間だけが過ぎていく。
そこに、ふらっと顔を出したのが吉田仁人。
「太智、まだやってんの?昼からずっとじゃね?」
「そーなんよ。ここの曲でなんか特別なことしたいんやけど、 何してもピンとこーへんねん。」
ため息まじりに答える塩﨑。
仁人はその様子を見て、椅子の背もたれに軽く寄りかかりながら言う。
「……ずっとやってたの?やば。ちょっと休憩したら?」
その一言に、塩﨑がパッと顔を上げた。
「せやせや!!休憩しよ!!!」
いきなり大声を出して、思いきり椅子に体を預ける。
仁人が思わず吹き出す。
「切り替え早すぎるだろ!」
「いや切り替え大事やねん、こーゆー時こそ!」
そう言って笑う太智に、仁人もつられて笑った。
空気がふっと緩む。
少し静かな時間が流れてから、仁人がぽつりと呟く。
「……いやー、太智ってすごいよな。」
「え?なになに!?急にどした!?」
びっくりしたように体を起こす塩﨑。
「だってさ、アイドル本人が演出まで関わってるグループなんてそうそうないぜ?それにさ、太智っていつも“楽しいライブにしたい”って言ってんじゃん。それ、ちゃんと形にしようとしてるのすごいと思うよ。」
仁人が笑いながらも、真面目な目で言う。
その顔を見て、塩﨑は一瞬だけ照れたように口をゆがめた。
「……なんやねん、急にそんな褒められたら照れるわ。」
「俺褒めて伸ばすタイプだから」
「吉田さんそう言うの自分で言わない方がええで」
2人で声を出して笑う。
笑いながら、塩﨑は小さく息をついた。
「よっしゃ。もうちょい考えてみるわ。」
「うん、でもちゃんと寝ろよ?倒れたら元も子もねーぞ。」
「はーいリーダー。」
その軽い返事に、仁人も満足そうに笑って会議室を出ていった。
扉の向こうに消える背中を見送りながら、
塩﨑はノートPCに視線を戻す。
コメント
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4個ともめちゃくちゃ良かったです。仁ちゃんがみんなの事を心配しててリーダーだなぁーとあらためて思いました。 次回も楽しみにしています。