テラーノベル
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気まづい沈黙が流れ続ける。僕はちらりと彼女の方を向いた。すると彼女は少し寂しく微笑みながらやっとの事で口を開いた。
「…はは、私は普通の人間だよ…って言いたいけど、バレてるよね」
寂しそうに微笑みながら話す彼女をじっと見つめ、次の言葉を待つ。
「…私は、死ぬ。君の足が治ると同時に。」
その言葉に僕は言葉を失う。
( 僕の足が治ると同時に彼女の命は尽きる…?)
信じられなかった。それじゃ、まるで人魚のお話じゃないか。
自分の未来を知っている。やっぱり彼女は普通の人間なんかではない。
「…私が天気を当てたのも、君の足の復活も、私の寿命を予測できたのも全部…」
ごくりと喉を鳴らす。僕と彼女の間に緊張が走る。彼女はただ未来が見える。僕はその考えしか思い浮かばない。
「…私、未来から来たんだ。」
全てが繋がった瞬間だった。彼女は未来が見えるわけではない。直接未来から現代へやって来たんだ。
「…未来から…来た…?」
彼女は小さく頷く。彼女は寂しそうに笑いながら続ける。
「嘘みたいな話だよね。でも、本当なの。これから起こることを…全部知ってる。」
そして彼女は夜空を1度見てから僕を見た。
「私は明守蒼太くん、君のことが好きだよ。」
照れくさそうに笑う彼女と、その事実を受け入れられない僕。
気まづい沈黙が流れる。彼女が僕のこと好き?僕だって君のことが好きだ。ずっと好きだ。でも、叶わない。君はもうすぐ…いいや、この先は言わないでおこう。
「…僕も、君が好きだ。」
つい、口から零れてしまった。彼女は一瞬、驚いた表情を浮かべたあと寂しそうに微笑む。
「そっかぁ…」
少し沈黙が流れたあと、彼女が先に口を開く。
「…私たち好き好き同士なんだねぇ…」
彼女が両思いではなく、好き好き同士という言葉を使うと、つい子供らしくて笑ってしまう。
そして彼女は、最初で最後の恋をした。
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