テラーノベル
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数週間が経った。彼女は姿を見せる回数が減ってしまった。そろそろ…なのだろうか。嫌な予感はしていた。覚悟はしておこう。そう思っていたはずなのに、覚悟なんかできない。
その時、僕を呼ぶ声に従って振り向く。彼女ではないということは振り向く前からわかった。
「…明守蒼太だな?」
「…えっと…?」
この人は誰なんだろう。どうして僕の名を知っている?一度も話したことは無いし、見たこともない。誰なんだ。
「そう…ですけど…」
震える声で答えると、その人は深く頷く。
「そうか、君が…」
彼は深く頷いたあと、顔を上げる。
「俺は木下大志だ。」
木下大志さんの後ろからひとつの顔がひょこっと出てくる。どうやらお友達さんのようだ。
「私は木下志音!」
「…えっと、兄妹…?」
「まぁ、そんな感じだ。」
なんなんだ、そんな感じってなんだよ。そうならそうって言えよ。
「あ、私たち、双子なんだぁ…」
なんだよちくしょう。双子かよ。友達だなんて思った僕が馬鹿だったじゃないか。
「君のことは明花からよく聞いていたよ」
明花を知ってる…?
「明花のことを…知ってるんですか?」
気付いたら口に出していた。
「まぁ、幼馴染ってところだな。」
なるほど。僕は深く頷く。
「ところで…君は明花のことをどこまで知っている?」
その質問に何故だかドキッとする。どこまで知っているか…
「…病気なこと。先が長くないこと。僕が好きなこと。」
これは自分で言うのは恥ずかしかった。けど、あとひとつ大事なことがある。
「そして…未来から来たこと。」
その2人は互いに見つめあって頷いたあと、大志の方が口を開く。
「ほう、もうそこまで知っているのか。」
沈黙が走る。どうしよう。その時、沈黙を破るように大志が口を開く。
「…あいつはな、同じことを繰り返してるんだ。」
「え?」
よくわからなかった。その後を付け足すように志音の方が口を開く。
「…前の人生でもね、病気で他界したの。それに、前の人生で君にも会ってたんだよ。」
大志が口を開く。
「前の人生でお前は、下半身不随ではなく病気だった。明花よりもずっと早く死んだ。」
「え…僕が病気…??死んだ…?」
信じられなかった。意味がわからなかった。僕は今下半身不随なのに、前の人生では病気…??
星乃明花は、あんなに弱々しい体で大きなことを背負っていたんだ_。