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フルーレ 第1回探索
[いかがですか!?自信作の防護服です!!
生地には毒や酸の耐性はもちろん、内部を快適な温度に保ちつつ、防塵・防水加工、防弾・防刃加工も施しました!
探索用リュックも同じ素材で作っちゃいました!大容量で軽量の優れモノですよ!]
トリコの体調も落ち着き、テンションが上ったファクトリーAIは超高性能の防護服をドヤ顔でお披露目してくれた。
「「「おお・・・」」」
執事たちは初めて見る素材の防護服に感心したり、デザインがダサいと嘆いたりしていた。
ベリアンは心配そうにファクトリーAIに耐久性を確認している。
「これは、どのくらいの攻撃に耐えられるのですか?」
[かなり鋭利な刃物でも、一般的なレーザーでも、溶鉱炉でも、低温保管庫でも大丈夫なように作ってます!]
「・・・実際に着てみて、模擬戦をしてみたら良いのではないでしょうか」
「俺もそう思ってたところです」
その様子を見ていたハウレスとフェネスが模擬戦で強度の確認をすることを提案し、2人は実戦用の武器を構えた。
「では、俺がフェネスの腕を切ってみますね」
「うん、分かった」
周りの執事たちはハラハラしながらその様子を見守る。
「やあっ!!」
ハウレスの剣はフェネスの左腕に振り下ろされた。
「痛っ」
フェネスは痛そうに腕を擦るが、防護服には傷一つ無い。
「大丈夫か?」
「うん、木の棒で殴られたみたいだったよ」
「・・・大丈夫か?」
「うん、大丈夫だけど・・・?
じゃあ、次は俺がハウレスの胴体を切ってみるね」
「すまん、痛かったよな、頼む、命だけは・・・」
「あはは、何言ってるの・・・
大丈夫だよ、死にはしないから」
割と本気で剣を振り下ろされたことと、それがかなり痛かったことでフェネスは若干キレてしまったようだ。
大斧を構え、ブンッと勢いよくハウレスの脇腹に叩き込んだ。
「ぐはっ・・・」
ハウレスは横に吹っ飛び、蹲る。
フェネスはハウレスをひっくり返し、脇腹を確認する。
「あ、すごいね!傷一つ無い!」
嬉しそうに笑うフェネス。
「じゃあ、鋭利なものも試してみようね」
懐から小型のナイフを取り出し、笑顔のままハウレスの胸部に刃先を当て、引いた。
「っ!!」
強く引っかかれたような感覚にハウレスは悲鳴を噛み殺す。
「おお!これでも大丈夫なんだ」
フェネスは面白そうにハウレスの防護服を観察し、ハウレスを引きずってベリアンに報告しに行った。
「ベリアンさん、ハウレスの剣でも、俺の斧でも、ナイフでも傷一つ付いてませんでした!」
「そうですか・・・!
・・・ハウレス君は大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ、多分」
それ以上口にするな、と笑顔の圧を感じたベリアンはこうでもしないと休まないハウレスも悪いよね、そうだよね、と心の中で繰り返していた。
「トリコ、兄はしばらくお出かけするね」
『ん・・・』
「帰ったらいっぱい遊ぼうね。
そうだ、フェネスさんが新しい絵本を買ってきてくれたそうだから、読んであげるからね」
『あい・・・』
このやり取りは一体何度目だろうか。
朝から事あるごとにラトはトリコに別れの挨拶を繰り返している。
最初は寂しそうに抱きついたりしていたトリコも流石に困惑した様子で、フルーレに助けを求めるような視線を向けている。
「ラト、いい加減にしろって!
主様が困ってるだろ!」
フルーレはラトをトリコから引き剥がす。
「酷いなぁ・・・妹が心配な気持ちはフルーレも分かってくれると思っていたのに・・・」
「気持ちは分かるけど、そんなに何度も言わなくても大丈夫だって」
「そうですか?」
目を離すとすぐにトリコにベッタリとくっついているラトを止めるのは面倒だ。
フルーレはため息を吐き、早くミヤジが防護服を持ってきてくれないかな、と現実逃避し始めた。
「済まない、遅くなってしまって・・・」
「「ミヤジ先生!」」
そこにやっとミヤジがやってきて、ようやく探索に行く準備を始められるようになった。
「それでは、今回の探索の目標の確認をするよ。
今回は薬の材料を持ち帰ることよりも、廃墟の構造やどんな敵が居るのかを実際に確認することが優先だ。
積極的に敵と戦って特徴を掴み、戦闘で有利になるためにどうしたらいいかを考えて動いてみてほしい」
「「はい!」」
「あと、少しでも危険を感じたら無理に戦わないで逃げること。
そして、できるだけ固まって行動すること。
いいね?」
「「はい!」」
ミヤジの言葉にいい子のお返事が返ってくる。
「それじゃあ、出発しよう」
防護服を着た3人は転送装置に乗り込み、機械を作動させた。
ガガガガガガガ
バシュ―――――ン
眩しい光が収まると、3人は大きな瓶の中に立っていた。
「・・・これが、テラリウム?」
「ここで主様が暮らしていたんだね・・・」
「何だか、ちょっと殺風景でさみしい感じがしますね・・・」
瓶の口から外に出ると、誰かの声が聞こえてきた。
「・・・ファクトリーAIさんの声です」
ラトがすぐに反応し、声のする方に向かっていく。
ラトを追いかけ、地面が光っている場所まで来ると、声がはっきり聞こえた。
[いらっしゃいませ!執事さん!]
「!ファクトリーAI君・・・!?」
「こんな、姿だったんですね・・・」
地面の四角い光の中に笑顔が出ている。
[さてさて、今回の探索は廃墟に慣れることが目標でしたよね!]
「あぁ、そうだね」
[初心者向けの廃墟をいくつか見つけておきました。
どれもかつて人間の居住区だった廃墟なので、面白い遺物が見つかるかもしれません。
では、無理せず頑張ってきてくださいね!何かあれば、オセワッチで連絡をください!できる限りのサポートはしますから!]
ファクトリーAIに見送られ、3人は居住区の廃墟に入った。
「うわ、足場が悪いですね・・・」
フルーレは植物が生い茂り瓦礫が放置されている、入り組んだ道に眉を寄せる。
「・・・なにかの音がします。
ファクトリーAIさんが言っていたロボットでしょうか」
ラトも耳を澄ませて周囲を伺う。
「気を付けて進もうね」
3人は慎重に歩いていく。
「・・・わっ!?」
しばらく歩いていると、フルーレがなにかに躓いた。
「大丈夫?フルーレ」
ラトがすかさず腕を掴んでくれたため、転ぶことはなかった。
「うん、ありがと・・・」
「躓いたのは・・・これかな?」
ミヤジが拾い上げたのは小さな鉄球だった。
「・・・持ち手が付いてる?」
「武器にできそうですね」
不思議な形の鉄球に首を傾げつつ、護身用にと持っていくことにした。
3人があれやこれやと話していると、4本脚のロボットがこちらに向かってきた。
「・・・私がやります」
ラトがロボットに飛びかかり、蹴りをお見舞いする。
しかし、トドメにはならず、ロボットはラトに前足で攻撃してきた。
ラトは攻撃を躱して後退する。
「次は俺がやるよ」
フルーレが鉄球を手にロボットに近づく。
「やぁっ!!」
真下に叩きつけるように投げつける。
ロボットはペシャリと潰れて、どこかに消えてしまった。
転がっていった鉄球を回収し、3人はまた話し合う。
「壊れたロボットは消えるのですね」
「そうみたいだね・・・
フルーレ君、もしかしたら鉄球ごと消えてしまうかもしれないから、紐か何かを付けようか」
「そうですね。振り回したりできたらもっと武器になりそうですし」
その後、丈夫な鎖を見つけて鉄球に結びつけることができた。
フルーレが片っ端から敵を吹き飛ばしている間にミヤジとラトで遺物を探した。
テラリウムに帰還する頃にはラトとミヤジのリュックはパンパンになっており、フルーレは返り血が滴っていた。
初回とは思えぬ成果を上げて帰ってきた3人にファクトリーAIは大層驚き、執事達はやはりアンドロイドではないだろうかとプラグの差込口を探したり、金属探知をしてみたりしたのだった。
[・・・ニンゲン、ですよね?]
「人間・・・だと思うよ?」
[?そうですか・・・]
ミヤジの歯切れの悪い返事にファクトリーAIは不思議そうにしていたが、追求することはなく屋敷に戻る3人を見送ったのだった。