星崎視点
本当にいつぶりだろうと思うほど、
僕は久しぶりに心地よい眠りにつけた。
優しくて甘い匂い、
包み込んでくれるような体温、
頭を撫でられる感触がして、
僕はハッとする。
(傍に誰かがいる?)
そう気づいたが、
まだ起きたくない気持ちが勝ってしまう。
もう少しだけこの穏やかな時間を堪能していたかった。
その人物が僕の顔に触れる。
目元のクマを優しい手つきで撫でてくれた。
まるで僕を労るように、
それはとても気遣いが込められた触れ方だった。
(もっと触られたい)
目元を何度か撫でた手は、
スッと静かに離れていく。
名残惜しさを感じていると、
離れる時に指先が僕の耳を掠めた。
「⋯⋯んんっ!」
耳が敏感なため、
僕は思わず反応して声を抑えられなかった。
「あれ⋯起こしちゃったかな?」
え?
この声って藤澤さん?
何でいるの?
てっきり次の現場に行ったものだと思っていたのだが、
なぜかここにとどまっていた。
身動ぎをして誤魔化すが、
僕は起きるタイミングを見逃してしまった。
「え?
ここで何してんの?
っていうかそれ⋯星崎だよね」
「膝枕してるって一体どういう状況?」
飲み物を買いに来たのか、
大森さんと若井さんが困惑しながら、
彼に聞いていた。
(それは僕も知りたい )
休憩所のベンチをベッド代わりに寝ていたはずなのに、
気づいたら僕の頭はベンチではなく、
彼の膝の上にあるのだから、
状況を全く理解できなかった。
それに対して彼は慌てふためくばかりで、
要領の得ない説明をしていた。
「や、
め⋯て」
それは突然のことだった。
何故か急にフラッシュバックで魘される。
息苦しくなって辛い。
額にジワリと汗が滲む。
こういう時どうやって自分を落ち着かせたらいいのか分からず、
戸惑っていると彼は肩を抱き寄せる。
「大丈夫⋯大丈夫だよ。
僕がついているからね」
しばらくそうやって声をかけながら、
僕の腕をさすったり、
頭を撫でたり、
どうにか落ち着かせようとしてくれた。
彼のおかげで息苦しさがなくなり、
僕は安心した。
「⋯⋯ん」
狸寝入りがバレないうちに、
僕はいま目を覚ましたように起きる。
正直もう少しこのままでいたかった。
「藤澤さん?」
「あ⋯ベンチは硬いから首痛めちゃいそうで、
それであの⋯」
しどろもどろになる彼が、
とても可愛らしいと感じる。
そこに一切の恋愛感情を含まない、
ただの後輩への気遣いだったとしても、
おかげで熟睡できた。
彼の優しさがじんわりと僕の中で広がり、
心が温かい気持ちで満たされていく。
この感覚が幸せを実感できる瞬間なのかもしれない。
雫騎の雑談コーナー
はい!
ということで、
読者様方の「幸せ」を感じる瞬間ってどんな時ですか?
俺はやっぱ小説書いてる時と、
ギター弾いてる時かな。
余計な雑音を気にしなくていいから最高!
まあ⋯適当にこの辺にして、
本編行きましょうか。
藤澤さんの膝枕により寝つきが悪い普段よりも、
熟睡できた星崎ですが、
ここでも鈍感ちゃんなのでね、
藤澤さんの愛情からくる膝枕でさえ、
後輩への気遣いだと勘違いしてるんです。
一目惚れ同士でお互いに好意があることに全く気づいていません。
さてここからどうなることやら。
ではでは〜
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