テラーノベル
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シリアスだ〜い好き♡
ということで、またもやえちちはありませんわ。
アメ日と中日とイギ日が混在しております、あしからず。
「──日本を離すヨロシ、ぶち殺すアルよ」
資料室に、冷たい声が浸透した。
カチャリ…と微かな音がして、アメリカの後頭部に、鉄の塊が押し付けられる。
気配を察知できなかったこと、そして良い所に邪魔が入ったことに苛立ちを覚えたアメリカは、眉をひそめて舌を打った。
「チッ、邪魔するな──チャイナ」
「邪魔者はお前アル、美国」
アメリカに突きつけられたのは、拳銃。
飄々と嗤った中国は、しかし確実に怒りを胸に秘めているようで、そのトリガーに手を掛ける。
険悪なムードが漂う中、日本がひょこりとアメリカの影から顔を出し、パチパチと目を瞬かせた。
「あ、中国さん!どうかされましたか?」
「ふふ、日本を追いかけてきたアルよ」
中国は、さっと拳銃を懐にしまい込むと、切れ長の瞳を細めて微笑む。
そのピストルは、日本からは見えないように、巧みに隠されていた。
「……この偽善者が」
「ふん、美国が言えることアルか?」
日本はアメリカから離れ、中国に駆け寄る。
米中の殺伐とした会話には、もちろん気づかない。
世界一空気が読める国なのに、自分に向けられる感情には、すこぶる疎いようだ。
「すみません中国さん!もしかして、書類不備でもありました……?」
「いや、謝ることはないヨロシ。我と一緒に来てくれるアルか?」
引き継いだ仕事にミスがあったのでは、と慌てる日本を、安心させるように微笑む中国。
そして、アメリカに見せつけるように、日本の肩を抱いて、資料室の扉までエスコートする。
それを見たアメリカは、中国を鼻で笑った。
「先を越されたからって怒るなよ、チャイナ」
「……良い気になるなよ、美国」
「?中国さん?」
すかさず中国は、日本の耳を両手でふさぐと、アメリカを振り向き、厳しい視線を向ける。
中国の行動に、日本は首を傾げるが、有無を言わさぬ彼の笑みに押し黙るしかない。
「HAHAHA, 負け犬は黙ってろ」
「馬鹿言うな、 勝負はここからアルよ」
再び?を浮かべる日本。
優勝景品が自分だとは、全く気づいていない。
「行くヨロシ、日本」
「え?あ、はい」
バタン、と資料室の扉が閉まる。
アメリカも中国も、密かに笑みを浮かべた。
「へ〜!こんなことになってるんだぁ〜! 」
国際連合本部の、とある一室。
国際連合は、監視カメラの映像を見ながら、にやにやと悪い笑みを浮かべる。
革張りの立派なチェアに背を預け、背後に佇む真面目そうな青年に、問いを投げかけた。
「ね、どう思う?ドクター!」
「ボス、貴方という人は……」
ドクターと呼ばれた男は、世界保健機関。
白衣をまとい、眼鏡をかけ、アスクレピオスの杖をいつも携帯しているのが特徴的だ。
そんな彼は、どうしようもない上司に向かって、呆れ声を上げた。
オフィスの監視カメラの映像には、昨夜、アメリカと日本が絡み合う様子が映っている。
「な〜に〜?悪い〜?」
「いや、悪いでしょう……」
さて、この世界保健機関。
国際連合に巻き込まれた、哀れな被害者である。
現に彼は今、キリキリと疼く胃を抑え、ズキズキと痛むこめかみを指で揉んでいる。
「部下の様子を気にかける、いい上司でしょ?」
「ボス。一旦、頭の検査しましょうか」
日本の二次創作に感銘を受けた国際連合。
これぞ、ジャパニーズカルチャー!と叫びながら、WHOに飛びかかってきたのが、三ヶ月前。
「ひどいなぁ!ボスをもっと敬ってよ!」
「業務中に、部下のエロ動画を見る上司を敬え、ですか。お注射しますか?」
「ひぃ!ごめんって!注射やだ!」
国際連合に頼まれて、否、脅されて、バース誘発剤を作らされたのは、世界保健機関である。
国連の一機関でしかない世界保健機関は、いくら尊敬できない上司の言う事と言えども、従うしか道はないのだ。
「こんなに上手くいくとは!いやぁ〜面白い面白い!面白いぞ!」
「……この上司、叩いたら治るだろうか」
手を叩いて喜ぶ国際連合。
その頭を叩こうか悩むWHO。
「で、イギリスはどうなってるのかな〜?」
「本当に申し訳ない……」
被害者に黙祷を捧げつつ、世界保健機関は嘆く。
一方の国連は、ふんふ〜ん♪と鼻歌を歌いながら、カチカチとマウスを操作して、本部中に設置された監視カメラの映像に目を通している。
「日本はさ、やっぱりアメリカに噛まれると思うんだよね!」
「……さようでございますか」
「イギリスは誰かな〜?ドクターは誰だと思う?」
長年のライバルに、か。
密かに憧れるあの方に、か。
拗らせてしまった実の子に、か。
ふ腐腐…と笑う国際連合に。
「はぁぁぁ……」
世界保健機関は、もう、何度目かわからぬため息をついた。
さて、時を進めよう。
時刻は定時の17時──なのだが、気づけばイギリスの周囲には人っ子ひとり居なかった。
いつもならば、フランスやらドイツやら、たいそう喧しい方々が彼に声をかけてくるはずなのだが。
あいにくと今日、二人はお休みのようだ。
「ふふ、栄光ある孤立、なんちゃって」
死ぬほどつまらないブリティッシュジョークを飛ばしながら、イギリスはPCの電源を落とす。
そして、さあ帰ろうと腰を上げた──その時。
「イ、イギリスさんイギリスさん……っ!」
パタパタと足音がしたかと思えば、ヨーロッパ諸国らの業務部屋に、アジアの日本が飛び込んできた。
ここ国連本部では、国々は基本的に、地域ごとに区分された部屋にて事務作業を行うことが多い。
だから、イギリスはヨーロッパ諸国に、日本はアジア諸国に充てがわれたオフィスルームで、一日を過ごすことが多いのだが。
「た、助けてくださいっ……!!」
「おや、日本さん、どうされまし──」
「しーっ!!声を抑えて!」
必死の形相でイギリスの元へ駆け込んできた日本は、何故か声を潜めている。
それどころか、声が大きいと言って、唇に人差し指を当ててしーっと言う。
その姿はなかなか可愛らしいものではあるが、日本はそれどころではない。
「ど、どうしたのです……?」
「あ、アメリカさんがっ!」
「……察しました」
先程走り込んできた先の扉を指差して、日本は必死にイギリスに訴える。
というのも、今日の日本は、先程の騒動と同様に、やたら滅多らアメリカに絡まれていたのである。
そして日本が帰宅しようと席を立った、この数分前。
『Hey, ジャパン!一緒に帰』
『みぎゃぁぁぁぁぁぁああああああっっっ!!!』
──背後にはアメリカがいて、日本は思わず発狂した。
その瞬間は驚いていたアメリカも、一緒に帰ろうぜ、なんて怪しい笑みを浮かべて、日本を追いかけてきたのである。
そうして今日本は、イギリスのもとにSOSを求め、駆け込んできたというわけだ。
「取り敢えず隠れていて下さい。あの子は……私が何とかします」
「神ですか……!?ありがとうございますっ!」
日本をデスクの下に押し込んで、イギリスは再び、PCを立ち上げた。
まだ仕事中ですよ感を取り繕って、もう間もなくやって来るアメリカを追い払うために。
三辺をしっかり区切られているワークデスクの下は、かくれんぼには最適であろう。
「──よ、親父」
「……アメリカ」
そうこうしているうちに、扉がガチャリと開かれて、アメリカが顔を出す。
そして彼は、そのコンパスのように長い脚で、イギリスのもとに悠々と歩みを進めた。
「珍しいですね、貴方がこちらにいらっしゃるなんて。反抗期は終わりですか?」
「ん〜?ちょっと探し物」
「へぇ……まーた物を無くしたんですか。貴方、これで何回目です?」
イギリスは、周囲を物色する息子に声を掛けた。
あくまで自然に。
自分の足元に、日本が息を潜めている、なんてことを勘付かれないように。
もっともイギリスは、こういう演技は得意なのである、が。
「いや?──俺のCuteな猫ちゃんが、こっちに逃げ込んでっかなー、と思ってな」
イギリスは、動揺を隠すように瞬きした。
アメリカの意図することは、日本以外の何物でもないだろう。
ピリピリとしたムードが漂う中、イギリスは涼しい顔でそうですか、と相槌を打つ。
「そういえば貴方、昔から猫さんには好かれませんでしたものね」
「……わかってるだろ、親父」
「なんのことだか」
特に意味もない、PCのフォルダ整理で時間を潰しながら、イギリスはアメリカを素気なく躱す。
語気を強めたアメリカが、イギリスの耳元で脅すように囁いても、イギリスはどこ吹く風である。
流石は元大帝国、たかが生まれて200年ちょっとの息子が、敵うわけがないのである。
「なぁ親父……親父はさ、息子の恋路を応援しようとか思わねぇの?」
「恋路?恋愛と所有は違いますよ。
本気で彼を51州目に据えるおつもりなら──私も黙ってはいられませんね」
ブルーアイズが交差して、僅かな沈黙が訪れる。
「親父には関係ねぇだろ、口出すなよ。……ワシントン会議と同じことになるぞ」
「二回目の四カ国条約ですか。フランスはまだしも、私は調印しませんよ」
要するにアメリカは、日本との関係に口を出すな、と暗に仄めかしているのだ。
挙句の果てに、日英同盟が破棄された、件の軍縮会議と条約を持ち出して圧力をかける。
が、イギリスはやはり、変わらぬ微笑を浮かべながら、おもむろに口を開いた。
「そうそう、アメリカ。一つ忠告しておきます」
ゆっくりと瞬きを一つ、それからイギリスはアメリカに一瞥をくれた。
そして、ヴィクトリア時代によく見せた、不敵な笑みをたたえて嗤う。
「猫は、追えば追うほど逃げますよ。こちらは動かず、寄ってくるのを待つのみです」
アメリカが追えば追うほど、日本は逃げる。
だからもう、追うのは辞めろ─という牽制か。
それとも──日本が寄ってきたのは、アメリカではなく自分だという当て付けか。
どちらにせよ、含みのある微笑みとともに、イギリスはアメリカに帰れと視線で促した。
「……You sly old man」
「Wash your mouth out with soap.」
捨て台詞を吐いて、その場を後にするアメリカ。
余裕の笑みを浮かべたイギリスは、その背を見送って、もう大丈夫ですよと足元に声を掛ける。
「ふぅ〜!ほんとに助かりましたイギリスさん!
いやぁ、つい逃げてしまいました。昨日の今日ってなると、やっぱり気まずいので……」
「いえいえ、うちの愚息がすみませんね……良い判断だったと思いますよ」
デスクの下で気配を殺していた日本は、安心したように息を吐いた。
イギリスが椅子を引くと、日本はぽてぽてとデスク下から這い出してくる。
「僕あんまりお話聞こえなかったんですけど、ど、どんなこと仰ってました……?」
「いえ、大したことでは──Oh」
しかしその時、日本の肌に──あるものを見てしまったイギリスは、すーっと視線をそらすしかなかった。
「イギリスさん?」
「日本さん良いですか、首は冷やしてはいけません。ええ息苦しいとは思いますが、ちゃんとボタンを閉めなさい」
「え、あ、はい?」
らしくもなく早口でまくし立てながら、イギリスは、寛げられていた日本の第一ボタンを閉めてやる。
そんなに慌ててどうしたんだろう?なんて平和ボケ思考で、日本は曖昧に頷いた。
「さ、帰りましょうか。迎えの車を寄越しているので、送っていきます」
「い、いえいえ!そんな!申し訳な」
「送っていきます」
「……ハイ、お願いします」
家まで送ると言われ、そんな迷惑はかけられないと遠慮した日本。
だが、イギリスがにっこりと微笑み、有無を言わさぬ圧力をかけてきたので、恩恵に預かるしかなかった。
その日の夜。
「ふんふふ〜ん♪」
日本は、自宅のバスルームで鼻歌を歌っていた。
昨夜は意識のないまま身体を清められたので、一昨日ぶりの一人だけのバスタイムだ。
ちゃんとした(?)お風呂時間に、ついテンションが上がってしまうのも頷ける。
「次のヒートは、絶対勝つ!」
もはや目的がなんだか分からないが、 日本はとてつもないフラグを打ち立てた。
そうして、ふと風呂場の鏡を見やった。
いつも通りの自分の体が映っている。
いつも通り、いつも通りの姿。
「──って、うぁぁぁぁあああっっっ!?!?」
日本は絶叫した。
それもそのはず、彼の全身には──キスマークが大量に散らばっていたのである。
あらあらお盛んねウフフ、って馬鹿野郎。
鬱血痕だけではなく、完全なる噛み跡もある。
確かに、アメリカとの行為では、やたらと噛みつかれたけれども!
「あ、あ、あっ……」
道理で、イギリスがボタンを閉めろと言う訳だ。
己の息子が、日本に付けたキスマークを目にしてしまったイギリスは、さぞかし気まずかったに違いない。
「アメリカさぁぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!」
狭い浴室に、日本の悲痛な声が響き渡った。
これにてアメ日は一区切り。
次回はイギリス編に移りますわよ。
コメント
19件
あの質問なのですが… 例えばこれだと英語を書いた後上に小さく日本語で書いてますが…この日本語の表示の仕方ってどうすればいいんでしょうか…よければ教えてくださいませ! あと最高ですぐへへ(殴
アカウント消えたので腹癒せに一気読みしました!! 神作をありがとうございます!! 過去にコメントしてたらすみません!!
って馬鹿野郎 好き