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「「触んなや。俺の女や」」
「……まだか」
夜の駅前。
スマホの画面には🌸からの短いメッセージ。
『今終わった!少し待ってて!』
侑は腕を組んで、
気だるそうに溜息をついた。
(俺のペース乱してくるんほんま嫌いやわ)
でも迎えに来てる時点で、
もう彼女最優先なのがバレバレだ。
「……早よ来いっての」
そこで、聞き覚えのある笑い声が聞こえた。
🌸の声──
そして、男の声も混じっている。
侑の眉がぴくりと動いた。
「は?」
視線の先、
酔った男が🌸の肩に手を回していた。
「え〜、帰るの? ちょっとだけいいじゃん」
「や、離してください!」
嫌がる彼女。
侑の中で何かがぷつんと切れた。
履き慣れたスニーカーが
音もなく男たちの前に止まる。
「……何しとんねん」
低音。獲物を見据える目つき。
「誰? 彼氏?」
男が笑う。
侑の喉から、苦笑が漏れた。
「……彼氏以上や。
触んなや。俺の女に」
手を掴んで、男の腕を無理やり引き剥がす。
骨が軋む音がした。
男が睨むと、侑は逆に一歩近づき
にやりと笑った。
「お前らのショボい手ぇで触れるほど
軽い子ちゃうねん。わかるか?」
笑顔なのに殺気があった。
男たちは舌打ちして去っていく。
侑はすぐに🌸へ向き直り、
声を少しだけ柔らかくした。
「……大丈夫か?」
「侑……怖かった……」
肩が震えた瞬間、
侑は迷わず抱きしめる。
「アホ。呼べや。
俺がすぐ来たるって言ったやろ」
撫でる手はあたたかいのに、
言葉には独占欲が滲んでいた。
「俺以外に触らせんな。
視線すら向けさせたくないんや」
🌸が少し顔を上げると
侑が睨むように見てくる。
「俺のペース乱さんで。
……俺が狂うやろ」
胸の奥の熱が伝わる距離で、
彼は低く囁いた。
「帰るで。
離れんなよ」
手をつなぐというより、
絡め取るような強い指。
(誰にも奪わせへん)
夜風が冷たくても
侑の腕の温度が全てを追い払ってくれる。
そして歩きながら、
少し照れたように呟いた。
「心配で迎え来たんや。
……🌸。俺のことだけ見ろ」
その声は
嫉妬だけじゃなく、
確かな愛情を孕んでいた。
家に着くなり、
侑は靴を脱いで即座にリビングへ。
ソファに座らせると同時に、
じっとこちらを見つめてくる。
腕組みして。
足を組んで。
明らかに怒ってる。
「……説明して?」
「……えっと、職場の人たちと普通に飲んでて……
帰るときにちょっと絡まれちゃって……」
「絡まれた“だけ”なん?」
「だけだよ……」
侑はふっと笑った。
けれどそれは怒った時の笑み。
「俺がおらんかったら、
どうするつもりやったん」
「……」
言えない。
言葉が詰まる。
すると侑はゆっくり近づいてきて、
頬を両手で挟んで視線を合わせてくる。
「頼れやって言うたよな?」
「……うん」
「困ったら俺呼べ言うたよな?」
「……うん」
「呼ばんかったんはなんで?」
声は低いのに、
触れる手は優しい。
「侑の邪魔したくなくて……」
そう答えた瞬間。
侑の表情が、ぐしゃっと変わった。
「邪魔なわけないやん」
息が詰まるほど近い距離。
「俺が迎えに行ったんは、
お前が心配やからや」
「……侑」
「俺の女が困っとんのに、
俺以外が触れてくるとか……無理やろ」
嫉妬も独占欲も、全部そのまま言葉にしてくる。
「俺以外に助け求めんでええ。
俺“だけ”呼べばええ」
熱い声が胸に落ちる。
🌸は、彼の服をぎゅっと掴んで小さく頷いた。
「ごめんね。これからはすぐ侑を呼ぶ」
「……うん。それでええ」
納得したように笑い、
おでこをこつんと重ねて囁く。
「お仕置きは……後でな」
「えっ」
「反省会はまだ終わってへん」
くすっと笑う侑。
その笑顔が好きで、
少しだけ怖くて、
胸の奥が熱くなる。
「🌸。
俺に守らせろや」
真っすぐな目でそう言われたら
もう何も逆らえなかった