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みら

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kaede🍁
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りゅず
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深澤は家を飛び出してから、しばらく夢中で歩き続けていた。
冷たい夜風が頬を撫でる。
息も少しずつ落ち着いてきた頃、不意に立ち止まる。
「……あ。」
ようやく自分の姿を見下ろいた。
部屋着のスウェット。
足元はサンダル。
財布もない。
スマートフォンもない。
鍵さえ持っていなかった。
「……俺、何やってるんだろ。」
苦笑しようとしても、笑えなかった。
帰る場所はある。
でも、今は帰れない。
照の顔を見る勇気がなかった。
誰かに会いたい。
でも、誰でもいいわけじゃない。
頭の中にメンバーの顔が浮かぶ。
(ここから一番近いのは……。)
(佐久間。)
一瞬そう思った。
けれどすぐに首を横に振る。
「……ダメだ。」
「男一人の家に、この時間に行くのはさすがにまずい。」
佐久間なら笑って迎えてくれる。
それは分かっている。
でも、恋人がいる身として、それは違う気がした。
深澤はもう一度歩き始める。
行き先は自然と決まっていた。
___________
一時間ほど歩き続けた。
サンダルのせいで足が痛い。
夜風で身体も冷えてきた。
ようやく見慣れたマンションが見える。
深澤は震える手でインターホンを押した。
ピンポーン。
静かな廊下に音が響く。
数秒。
いや、数十秒にも感じる沈黙。
「はい。」
インターホン越しに宮舘の声が聞こえた。
「……だて。」
それだけ言うのが精一杯だった。
「……ふっか?」
驚いた声が返ってくる。
すぐにオートロックが解除された。
エレベーターへ乗り込み、部屋の前まで歩く。
ドアが開く。
「ふっか!」
最初に飛び出してきたのは渡辺だった。
その後ろには宮舘が立っている。
二人とも深澤の姿を見た瞬間、言葉を失った。
部屋着のまま。
サンダル姿。
何も持たず。
髪も乱れ、目は真っ赤だった。
「……どうした。」
渡辺が駆け寄る。
その声を聞いた瞬間だった。
張り詰めていた糸が、ぷつりと切れた。
「っ……。」
深澤の目から、大粒の涙があふれ出す。
「ふっか!」
渡辺が咄嗟に肩を支える。
深澤はその場にしゃがみ込み、声を殺して泣き始めた。
「ごめん……。」
「ごめん……。」
それしか言えない。
宮舘もすぐ隣へしゃがみ込む。
「謝らなくていいよ。」
穏やかな声だった。
「まず、中に入ろう。」
「身体が冷えてる。」
深澤は何度も頷きながらも涙が止まらない。
渡辺は深澤の肩へ自分の上着を掛けた。
「今日は何も考えなくていい。」
「俺たちがいる。」
その一言で、深澤はとうとう声を上げて泣き出した。
宮舘は静かに深澤の背中へ手を添える。
「大丈夫。」
「ここでは無理に笑わなくていい。」
「話せるようになったら、ゆっくり聞く。」
玄関先で泣き崩れる深澤を、二人は急かすことなく支えながら、静かに家の中へ迎え入れた。
___________
「ふっか。」
宮舘は優しく声を掛けた。
「先にお風呂に入ろう。」
「身体、冷えてる。」
深澤は泣き疲れたように小さく頷く。
「……うん。」
「翔太。」
宮舘は渡辺へ視線を向けた。
「ふっかのこと、少しお願い。」
「任せろ。」
渡辺は深澤の隣へしゃがみ込む。
「ふっか。」
「立てる?」
深澤は涙を拭きながら、小さく頷いた。
「……うん。」
渡辺は深澤の肩を支えながら、リビングまで連れて行く。
その間に宮舘は浴室へ向かい、お湯を張り始めた。
___________
浴槽へお湯が溜まるのを待つ間。
宮舘はスマートフォンを取り出す。
迷わず岩本へ電話を掛けた。
数回の呼び出し音のあと、すぐに電話が繋がる。
「……館さん。」
岩本の声はひどく焦っていた。
「ふっか、そっちにいるのか?」
宮舘は少し安心したように息を吐く。
「うん。」
「今、うちにいる。」
電話の向こうで、岩本が大きく息を吐く音が聞こえた。
「よかった……。」
「本当に。」
「一時間くらい外を探してた。」
「スマホも財布も持ってないし。」
「事故にでも遭ったんじゃないかって……。」
その声は震えていた。
宮舘は静かに答える。
「玄関で泣き崩れてた。」
「かなり精神的に参ってる。」
岩本は何も言えなくなる。
宮舘は続けた。
「今日は。」
「翔太に任せた方がいい。」
「今のふっかは、照と話せる状態じゃない。」
岩本は苦しそうに返事をする。
「……分かった。」
「今日はそっちで泊めてもらえる?」
「もちろん。」
宮舘は穏やかに答えた。
「明日のことは、また明日考えよう。」
「ありがとう。」
岩本は小さくそう言って電話を切った。
宮舘は画面を見つめ、小さくため息をつく。
「二人とも。」
「苦しそうだな……。」
___________
しばらくして。
「お風呂、入ってくる。」
深澤は小さくそう言い、浴室へ入っていった。
浴室のドアが閉まる。
シャワーの音が聞こえ始めた。
宮舘はリビングへ戻る。
ソファには渡辺が静かに座っていた。
「翔太。」
「照と話した。」
渡辺は宮舘を見る。
「どうだった?」
「一時間くらい外を探してたみたい。」
「かなり焦ってた。」
渡辺は目を伏せる。
「……そう。」
少しの沈黙が流れる。
宮舘は隣へ腰を下ろした。
「ふっか。」
「何があったか話した?」
渡辺は深澤から聞いた話を、一つひとつゆっくり話し始めた。
知らない香水。
服のポケットから出てきた女性用のイヤリング。
ドラマの守秘義務で何も聞けないこと。
照を信じたいのに、不安が止まらないこと。
そして今日、阿部の指輪を見て、自分には何もないと思い込んで泣き出したことまで。
宮舘は最後まで一度も口を挟まず聞いていた。
話が終わると、小さく息を吐く。
「なるほど……。」
「そういうことだったんだね。」
渡辺は静かに頷く。
「ふっか。」
「照を疑いたいんじゃない。」
「信じたいのに信じ切れない自分を責めてる。」
宮舘は深く頷いた。
「だから余計につらいんだ。」
「照も理由が分からないままふっかが出て行ったから。」
「きっと同じくらい苦しい。」
二人は浴室から聞こえるシャワーの音へ耳を傾ける。
今はまだ、どちらが悪いという話ではない。
大切だからこそ。
失いたくないからこそ。
二人とも傷ついてしまっているのだと、宮舘と渡辺は静かに感じていた。
コメント
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みらさん、第4話読みました……もう、本当に胸が苦しくなりました。深澤のあの「帰る場所はあるけど、今は帰れない」という感覚、すごくリアルで。サンダルで一時間歩いて、泣き崩れて、それでも二人が迎え入れてくれた温かさが沁みました。特に渡辺が「無理に笑わなくていい」と言ったところ、ぐっときましたね。一方で岩本からの電話のシーンがまた切なくて……二人とも苦しそうで、でもこの距離感がすごく自然だなと思いました。続きが気になります!