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〈smile side〉
彼奴と過ごしていく中で、ずっと違和感を覚えていた。
なぜこんなにもオーラが似ているんだろう。
なぜこんなにも不思議と落ち着くんだろう。
その違和感は彼奴を殺す前に答えが出ていた。
彼奴がよく居座るこの教室。それは朝の登校の呼びかけをし、放課後は生徒の背中を見送る放送室だった。
俺たちは普段そこで話をしていたけれど珍しくその日は俺が早くついてた。
sm 「、、まだいないのか」
sm 「なんだこれ、、、写真?」
そこに置いてあったのは年季の入って黄ばみが目立つ一枚の写真。
sm 「戦時中、、、?なのか」
色褪せていて、明らかに現代とは言い難い昔ながらの家と無表情の家族写真だった。
玄関前に映る見慣れた中坊の制服。扉に書かれている名前を見て俺は目を疑うしかなかった。
sm 「霧雨、、、、 」
きりやんと同じ苗字だ。
、、、そうか。あの懐かしい感じはこのせいだったんだな
俺はそっと写真を伏せて窓辺の机に突っ伏して寝たふりをした。
カラカラ
長 「今日は早いじゃーん!スマイルくんっ」
長 「って寝てるのかよ」
気づきたくなかった。
オーラが似ているのは俺も、彼も特別だから。
そして不思議と落ち着くのは、 俺が殺めようとしている此奴がきりやんと血が繋がっている家系のひとりで、幼い頃に死んでそのまま居座っている。
本当に悪いやつじゃないし、何より俺を助けようとしていることだってわかっていたよ。
だから今も
…………………………………………………*
ーーーついに逝ってしまったんだね。
sm 「ちょうどいいところに来てくれた」
sm 「お前を待っていたよ
七不思議の怪異さん。」
長 「何その呼び方、やめてよ」
いつも通りに笑うと細くなるその目も、毎日袖を通しているその制服も、よく見ると青白くて細い首も、すごく哀れに感じた。
sm 「俺さ現世に戻ろうと思う」
長 「、、ぇ」
sm 「でも残念ながら信頼を得てた怪異はもういなくなっちゃったんだ」
長 「じゃあもう無理だよ。だって道をつなぐには2体の犠牲が必要なんだ」
sm 「俺には特別な力があるんだろ?怪異の2体分の力が。」
長 「っ、、そんなことあるわけない」
sm 「資料室で見た。わかりやすく付箋も貼られてた」
あれは確実にお前の筆跡だった。性格とは真反対に教養の良さが伺える整った字。
俺のことをあまり知らなかったお前が、前から書いていた「すまいる」という書き方。
なぜ俺を助ける方法をわざわざ調べるのか、そんなのは偽善で終わらせるにはあまりにも大きすぎた。
長 「っ、、たとえ二人分の力を持っていても、使い切ったら帰れないだろ!!」
sm 「だからお前がいる。」
…………………………………………………*
〈nakamu side〉
負け試合なんか好きじゃない。
絶望が待っているその先に進むか、留まるかの選択なんて無意味でしかない。
だって俺にできることは何一つないから
外部からの助けをただ待つだけの戦いに自分の価値を見出すことなんて無理に決まってるだろ
でも今こうして何もできずに時が過ぎるのを待っているだけ。
そんなこと俺にはできなかった
nk 「ちょっと歩いてきていいかな」
kr 「だめだ。今はぐれるのは危ない」
nk 「怪異もいない。リセットも終わりが近づいてる、、、」
nk 「ただ、いつもの場所に行くだけだよ。思い出の場所に、、、、だめかな」
こんなにも情けない自分は見たことがなかった
それでもきりやんはその場所に以外は行くなよ。とだけ伝えて俺の背を押した。
鬱陶しいほど聞いた雨の音が、当たり前のように聞いていた雨の音が、嘘のように姿を消す。
夏の太陽が早く顔を出したいと言わんばかりに夜空がほんのりと色づきはじめる。
草木は溜まった水分をこぼさないように蓄え、風は朝と夏の気配をはこぶ。
いつも通りの校舎なのに、いつもとまったく違う場所に一人取り残されてしまった。
そこにあるのは孤独。
胸の奥に穴を開け続ける靭い孤独感。
瞳を閉じながら、まだ残る記憶の中の彼を再生し続けた。
nk 「ぁあ、、、
せっかく素直になれたのにっ、、。」
ぽつぽつと音を立てるのは雨ではなく、机に落ちる冷たい雫の声だった。
ーーーかむ、、、なかむ
夢の中で声が聞こえる。優しくて温かい手に頬がぬくもりを覚える。
ーーー返せよ。それ俺のヘッドホンな
いいだろ。
どうせもう使わないんだから。
どうせもう使えないんだから。
これは俺がもらう
ーーーいい加減起きろ。もう朝になるって
しゃけのいない生活に目を覚ましたって意味ないんだ。ただぽっかり空いた穴をひとりで誤魔化して生きていくしかない。
nk 「しゃけのいない世界なんて起きたってしょうがないだろ、、、、」
ーーー何言ってんだよ
あぁ。ケラケラ笑うその感じまで、俺は鮮明に覚えてたんだな。
自分の記憶力のよさに喜ぶ反面、憎くなった。
これじゃあ一生忘れらないじゃないか。って
nk 「やっと素直になるはずだったのに」
そんな後悔の念を口に出してはそれを塞ぐかのように唇に蓋をされた。
、、、なんだ?俺はキスの感触ですらこんなにも鮮明に覚えてるのか。
もう、これ以上苦しめないでくれ。
nk 「全部、忘れさせて」