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羊と亀のお遊戯会
23
奏音•*¨*•.¸¸♬︎💙
10
映え無し
1
【短歌】
花びらを一枚拾う春の日に君と出会えたそれだけで春
【短歌をテーマにした物語】
桜の花びらが、一枚、私の足元に落ちてきた。
拾い上げると、薄い桃色の花びらは、風に吹かれてしまいそうなくらい小さかった。
「何してるの?」
突然、後ろから声がした。
振り返ると、君が立っていた。
「花びら、拾ってたの」
「へえ。なんで?」
「なんとなく」
そう答えると、君は笑った。
「変なの」
「変じゃないよ」
私は少しだけ頬を膨らませた。
君と初めて話したのは、去年の春だった。
入学したばかりの私は、まだ学校にも慣れていなくて、休み時間も一人で過ごすことが多かった。
ある日の帰り道、桜並木の下で立ち止まっていた私に、君が声をかけてきた。
「桜、好きなの?」
それが、私たちの最初の会話だった。
「うん。好き」
「俺も」
たったそれだけ。
それなのに、君はその日から、私を見かけるたびに挨拶をしてくれるようになった。
朝、教室で。
廊下ですれ違ったときに。
帰り道、校門の前で。
やがて挨拶だけではなく、授業の話や、好きな音楽の話もするようになった。
君と話す時間が増えるにつれて、学校へ行くのが楽しみになった。
春が過ぎ、夏が来て、秋になり、冬になった。
季節が変わっても、君は変わらず私に話しかけてくれた。
そして、また春が来た。
「ねえ、何ぼんやりしてるの?」
君の声で、私は我に返った。
「去年のこと、思い出してた」
「去年?」
「君と初めて話した日のこと」
そう言うと、君は少し驚いた顔をした。
「そんなこと覚えてるの?」
「覚えてるよ」
「最初、桜の話しかしてなかったのに」
「だからだよ」
私は手のひらの花びらを見つめた。
「あの日、君が話しかけてくれて、嬉しかったから」
君は何も言わなかった。
代わりに、少し照れたように笑った。
「……そっか」
風が吹いた。
桜の枝が揺れ、花びらが二人の間を舞い落ちていく。
「今年も、桜がきれいだね」
君が空を見上げた。
「うん」
「来年も一緒に見ようよ」
何気ない口調だった。
まるで、明日の約束をするみたいに。
でも、私にとっては違った。
来年も、君と一緒に。
その先の春も、またその次の春も。
そんな未来を想像しただけで、胸がいっぱいになった。
「……うん。約束ね」
私は笑って答えた。
君と並んで、桜並木を歩き始める。
拾った花びらは、手帳に挟んでおこうと思った。
今日のことを忘れないように。
君と出会えた春を、いつまでも覚えていられるように。
特別なことがあったわけではない。
花びらを一枚拾って、君と話して、並んで歩いただけ。
それなのに、世界がいつもより少し明るく見えた。
春は、桜が咲くから来るのだと思っていた。
けれど、今は少し違う。
君と出会えたこと。
君と笑えたこと。
来年も一緒に桜を見ようと、約束できたこと。
私にとっての春は、そんな小さな幸せの中にある。
風に舞う花びらを見上げながら、私はそっと思った。
花びらを一枚拾った、あの日のように。
これからも、君と一緒に春を見つけていけたらいい。
君と出会えた。
それだけで、今年の春はこんなにもあたたかい。
コメント
1件
ああああもう最高すぎた!!!😭💕✨ 「花びらを拾う」っていう何気ない動作から始まるのに、そこに去年の出会いが重なって、さらに未来の約束へとつながっていく構成、エモすぎるよ…!! 「来年も一緒に見ようよ」って何気なく言える関係性、尊すぎて胸がギュッてなった。しかも「それだけで春」っていう短歌が全体の核になってて、まじで美しい……!! 特別なことは何もないけど、君と出会えただけで世界が明るく見えるっていう感覚、めっちゃわかる〜〜🌸 水曜さんの紡ぐ春の空気感、大好きです!!