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🖤視点
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入室の許可がおり
阿部ちゃん、康二、ラウール、俺の順で病室に入る
ふっかさんの言葉が気になっていたが、久しぶりの再会が嬉しくて、康二もどこか嬉しそうにしていたが、佐久間くんを見た瞬間に全員が固まった
白い病室
白いベッド
真っ白な包帯が至る所から覗いている
暫く…と言っても俺は海外撮影も合わせて10日程しか経っていないにも関わらず、痩せたのが分かる
派手なピンクの髪はいつの間にか黒に染められて、白い頬には擦り傷が瘡蓋を作っていた
「皆、来てくれてありがとう」
そんな姿で微笑むから、余計に痛々しい
なんで?
どうして?
俺は言葉が出なかった
俺がいない間に何が起きたの?
「うっ」と嗚咽が聞こえる
見ると康二が既に泣き出していた
痛々しい姿に、失踪中、何があったのかを想像してしまったんだと思うが…どんな想像だったんだろう
「ざっぐ~ん」
両手を付き出して、佐久間くんの元に駆け寄った
「待っ、バカ」
阿部ちゃんの静止の声は遅かった
康二を止めようと出した手も空をきった
康二は抱きついた
相手は至る所に包帯を巻いた怪我人だ
確かに重傷って訳じゃない
でも、配慮は必要だろうに
康二も普段は周りを見て、きちんと気遣いのできるタイプなので、佐久間くんの姿にそこら辺がごそっと抜け落ちたのかもしれない
案の定、佐久間くんは痛そうに顔をしかめたが、すぐに困った顔にかわり、ぽんぽんっと子供をあやすように背中を叩く
「こーじ、ごめんね。心配かけたね」
優しいお兄ちゃんがいる
「ずるいよ、康二くん。一人だけ」
ラウールも佐久間くんの方に歩いていく
佐久間くんを見下ろし、少し辛そうに顔を歪めたが、持ち直して笑顔を作った
「おかえり、佐久間くん」
康二にホールドされて動きづらそうな佐久間くんだったけど、動ける範囲で手をラウールに向けた
ラウールはその手を握る
「心配したんだからね」
「うん。ごめん…ありがとう」
ラウールを見上げて笑う
目がキラキラして見える
涙が浮かんでいるから
それを我慢しながら、ふんわりと
控えめな笑顔はどこまでも儚くて、どこまでも綺麗だ
嫌た
見られたくない
佐久間くんは俺のものなんだから!!
無意識に一歩を踏み出して
ぐっと袖をひかれた
振り返ると
笑っていながらも鋭い目をこちらに向ける阿部ちゃんがいた
『佐久間の邪魔をするな』
唇が動く
佐久間くんが捨て身で練った計画
それを穏便に終わらせるため
これはメンバーにだって知られてはいけない
『台無しにするな』
阿部ちゃんは俺の腕を引いてから、自分が一歩踏み出した
「佐久間」
「阿部ちゃん」
ただ名前を呼びあっただけ
ただ視線を合わせただけ
それだけで会話が成立するような空気に、俺はぎゅっと自分の腕を掴んで、感情をセーブする
阿部ちゃんの言う通り
ここで台無しにしてはいけない
グループとして最後のお別れなのだから
「佐久間、お前…怪我した自分、ちょっとカッコいいとか思ってるだろ?」
気安い口調で阿部ちゃんが言うと「バレた」と佐久間くんはおどけてみせる
「お前らしいよ。また会えて、本当に良かった」
「うん。俺もーーーー蓮」
阿部ちゃんに向かって微笑みかけた後、真っ直ぐに俺を見た
「蓮も、こっちおいで」
佐久間くんがやっと俺を見た
💗視点
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こーじやラウに先を越され
後ろの方で何やら必死に感情を抑えこもうとしている
ぎゅっと自分の腕を掴んで
何でもない、何にも気にしてませんって素知らぬ顔してるけど、すぐに分かるんだ
「蓮も、こっちおいで」
真っ直ぐに目を見て言うと、蓮はおずおずとこちらに向かってくる
阿部ちゃんは未だ俺に抱きついて泣きじゃくる康二の耳元に顔を寄せて
「康二、気持ちは分かるけど、めめにも譲ってあげて」
ポンッと肩を叩くと
漸く顔をあげた康二の顔は涙でぐちゃぐちゃだった
「本当にごめん。心配かけて」
涙で濡れた頬を撫でると頭を横に振る
「さっくんは悪ないよ。俺、会えて、嬉しかった」
「うん。俺も嬉しいよ」
「ほら、康二。おいで」
阿部ちゃんが誘導するように康二の肩を抱いて、俺から引き剥がすと、空いた場所に蓮が来た
俺を見下ろして、眉間に皺を寄せている
「ん」
俺が手を広げると、素直にそこに収まった
「佐久間くん…会いたかった…」
たった10日離れていただけなのにね
演技、ではなく多分これは本心
約3ヶ月の間、ずっと側いたから
たった10日でも長く感じてしまうんだ
俺も、寂しかったよ
「うん。俺も」
鼻をくすぐる蓮の香りに胸がきゅんとする
やっぱり俺は
何を捨ててでも、こいつの側にいたい
大した話も出来ないまま
コンコンッとノックの音が響く
ドアを開けて入ってきた看護師さんが終わりを告げる
蓮は俺を抱き締めたまま動こうとしないし、その後ろでは
「全然話せへんかった」
「もうッ!!康二くんのせいだよ」
末っ子がぷんすこしている
可愛い風景を見ていたいのだが、お見舞いに延長制はない
「ラウもおいで」
折角なので、末っ子も呼ぶと
ラウは蓮ごと俺を抱き締めて言った
「佐久間くん、大好きだよ」
「うん。俺も好き」
俺はラウに言ってから、すぐ側で不服そうな顔をする蓮の頬撫でて
「もちろん、蓮も大好き」
微笑みかけると
「俺は~?」
と、八の字眉で問いかけるこーじ
「ふは、こーじも好き。あべちゃんもね」
「俺はついでか」
苦笑気味のあべちゃんに目配せすると、あべちゃんは小さく頷いた
「ほら、皆行くよ」
あべちゃんの掛け声に素直に離れるラウと
「あと数日の我慢」
蓮に聞こえるぐらいの小さな声で耳打ちすると、渋々俺の身体から離れる蓮
「今日はありがとう」
最後に声をかけると、笑顔で頷き、「またね」と退室していった
「嵐が過ぎ去ったみたいねぇ」
急に静かになって、のほほんと母ちゃんが呟く
「楽屋とかもいつも賑やかだったよ」
しんみりとした別れとなった年上組と
少しばかり賑やかな年下組
やはり付き合いが長い分、苦労を共にした6人との方が思い出も多い
あべちゃんも共犯でなければ涙の別れになっていたことだろう
「そう言えば、結構抱きつかれていたけど身体の方は大丈夫なの?」
「うん。痛いけど大丈夫」
色んな傷が痛んだが、どれも全治2週間程度の軽いものだ
頬の擦り傷も痕は残らないと言われている
記憶喪失、記憶障害という事になっているのでうまく理由をつけて、会見を開くつもりはない
流石にボロでそうだしね
俺はそのまま引退し、再び姿を消すつもりだ
Snow Manは解散になっても、メンバーはそれぞれの個性を生かした仕事が幾らでもあるって、その実力を俺は信じている
先輩方はもちろん、後輩たちだって育っているのだ
アイドルはいわば水物
世間を楽しませるアイドルは次々に生まれ、消えていくのが運命
何年、何十年後に
「ピンク髪の元気なアイドルがいたな」
「好きだったな」
なんて、思い出して貰えたら本望だ
俺はこれから
狂ってんなぁって思うぐらいの
重苦しい程に俺を愛してくれる人のために生きるつもり
早く、あの俺を閉じ込めるだけに造られた部屋に帰りたいと願った
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