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「ここは、ショールームだ」
ワンフロアを丸ごと使ったそこには、幾つものスーツがハンガーに掛けられて並んでいて、人型をしたトルソーにはまだ仮縫いのスーツが着せかけられていた。
「……圧巻ですね」
色とりどりのスーツの合間を、スタッフさんたちが忙しそうに立ち働いている光景を眺めた。
『紳士服HASUMI』と言えば、それまでビジネススーツにはなかったカラフルさを取り入れたのがセールスポイントで、カラフルながらも洗練されたシックな色合いで、カラースーツのややラフなイメージを一新して、モノトーンばかりだったビジネススーツに”HASUMI”が革命を起こしたと言っても過言ではなかった。
「やっぱりHASUMIのスーツは、色合いが良くて素敵です」
傍らの彼の今日のスーツは、落ち着いたモスグリーンの上下に、明るめなイエローグリーンのネクタイが映えていて、
本当のことを言えば、あなたが一番素敵なんですが……と、心の中でこっそりと思った。
「そうか、ありがとう」
私の言葉に、蓮水さんはわずかに照れたように微笑んで、
「そういえば今週の金曜には、社内オフの新作の発表会があるんだが、君も参加しないか?」
ふと思い出したように、そう口にした──。