希の一件があってから1週間。
俺はずっと考えていた。
彼女の側に俺何かがいて良いのか?
希に告白して今までずっと隣にいた。
何気ない会話も楽しい事も悲しい事も分かち合って来た。
でも良く考えてみると、希は花道家の娘でお金持ち・俺はごく一般の市民。
こんな身分の差がある俺達が堂々と付き合っている。
おかしいとは思っていた。
入学式のあの日、告白して俺達は恋人同士になった。
普通に過ごしていたけど気付いてしまった。
彼女との格差に。
それに思い返してみればじゅりあも夢香も音羽も裕介も俺にはもったいない人だ。
これまた気付いてしまった。
そして俺は決心したのだ。
次の日。
「おはよう!」
希が俺の机に来て挨拶した。
前までの俺なら笑顔で挨拶を返していただろう。
でも。
「おはよう」
そっけなく真顔で挨拶を返した。
彼女を見ずに。
本当は笑顔を希に見せたい。
今笑顔を見せたら放課後言う言葉にししょうが出てしまう。
最後ぐらいは楽しくして別れようとも思った。
だけど今放課後まで希と楽しく過ごす事でせっかく覚悟を決めたのに迷いが生まれてしまうんじゃないかと思った。
「何でいつもみたいに優しい眼差しを向けてくれないの?」
希は予想通りこう言った。
「別に
ちょっとお前が面倒臭くなっただけ」
そんな事思ってもない癖に!
「何で・・・
こっち向いてよ・・・
ねぇ!」
希は俺の肩を揺すった。
それでも俺は彼女の方を向かなかった。
「爽・・・
私何か悪い事した・・・?」
悪い事何かしてないさ・・・
ただ・・・ただな・・・
希は崩れ落ちた。
そこへ。
「のんのん!
大丈夫?
何があったの?」
今教室に入って来た音羽が飛んで来た。
「う・・・
おとはぁ〜
爽が私に冷たいの・・・」希は音羽に抱き付いた。
ごめん・・・
ごめん・・・
本当にごめんな・・・
「え!
何で・・・」
「分からない・・・」
希は泣いている。
ちょっと爽!
えっ」
「マジ!
何でお前泣いてんの?」
音羽が俺に声をかけたのと裕介が教室に入って来たのはほぼ同時だった。
俺・・・
泣いてるのか・・・
自分の頬に触れてみると濡れていた。
嘘だろ・・・
知らぬ間に・・・
「別に
何でもない」
俺は涙を拭いて答えた。
「のんのん泣かせて自分も泣いて何もない訳ないでしょ!」
「またそれ・・・
別に
理由を教えてよ・・・」
「だから」
キーンコーンカーンコーン。
チャイムが鳴った。
「あっ」
「面倒臭いんだって!
それだけ!
理由何てものはない!」
涙声で声を震わせて叫んだ。
「もう!
のんのん
こんな奴もうフってやりな
相手の気持ちも考えれない奴は
後で痛い目に見るから」
音羽は感情的になって言った。
「え・・・」
「あぁ
フッてくれ
その方がせいせいするぜ」
希が気付くと分かっていながら、彼女にとって矢となる言葉をぶつけた。
「爽・・・」
希は俺を切ない目で見つめた。
「ほら!
座れ!
チャイム鳴ってるだろ!」
笠原先生が教室へ入って来て俺達に注意した。
「はい・・・」
希は肩を落として隣の席に座った。
音羽・裕介も。
お互い隣同士で気マズい空気になってしまった。
「なぁ、爽
本当は理由があるんじゃないのか?」
1時間目終わり、裕介が俺に聞いて来た。
「もうその話するな」
「だってこのままじゃあいつが可哀想だから」
裕介はそう言って椅子に座っている希に目をやった。
「ハァ〜
お前にだけは言っとくか」
「何で俺だけ?」
裕介は不思議がった。
「裕介と俺は似たもの同士だから
何かお前には素直に話せそうな気がする」
「そうか
嬉しいよ」
「本当はな
希の事が心臓飛び出しそうなぐらい好きだ
一緒にいると楽しいし、ありのままの自分でいれる・・・
誰かと取り合いになっても譲らないし勝てる自信がある」
「さっきの態度今言ってる事と真逆の態度だったけど?」
「そう
でもこの前の一件で気付いてしまったんだ・・・
彼女とは住む世界が違うって・・・
俺が隣にいちゃいけない気がした・・・
希を好きになっちゃいけないんだって・・・
だから・・・」
「なるほどな
でも人を好きになっちゃいけない何て絶対にない
例え身分が違ってもそんな事は関係ないんじゃないのか?
それにせっかく希が心から笑える様になったのに・・・」
「お前の言う通りだよ・・・
でもやっぱり・・・
じゅりあ達にも申し訳なくて・・・」
「何で?」
「だってあいつらは夢に向かって羽ばたいてる
裕介だって沢山苦労して来たのに頑張って前向いて努力してるだろ?
それに比べて俺はただのんびり生きてるだけ・・・
一生懸命何かに打ち込んでるあいつらの側に俺がいるのが申し訳ないんだ・・・」
俺は肩を落とした。
「そんな事気にする必要ないのに・・・
それで最近爽からは話しかけないし話しかけられても遠慮してたのか」
「うん・・・」
「別に爽がどうしようと自由だけど、希にしっかり納得して貰ってから別れろよ」
「あぁ
こんな話聞いてくれてありがとな・・・」
「うん」
放課後。
俺は覚悟を決めて希の元へ行った。
「希」
「爽・・・」
彼女は俺を見て少し安心した表情を見せた。
「今日は1日悪かったな・・・
辛かっただろ?」
「うん・・・
朝からあんな態度とられたから・・・」
「そうだよな・・・」
「そうだよ!」
彼女は頬を膨らませた。
可愛いな・・・
「あのな
大事な話があるんだ」
「何?」
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