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本気にさせたい恋

171 - 第171話  新しい家族のカタチ⑪

2024年10月23日

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「あの・・・一つだけお聞きしていいですか?」


すると、透子が親父に声をかける。


「何でしょう」

「会社の屋上。あの場所に樹さんに連れて行ってもらったんです」

「あぁ。あの場所は私のお気に入りの場所でね」

「ハイ。とても素敵な場所で。それで・・あの屋上のフェンス越しに見えるある場所が気になって・・・」

「・・・あぁ。もしかして気付かれましたか?」


親父は透子がもう何を言おうとしているのかすぐ察して言葉を返す。


「あの場所から見える景色は私にとって特別でね。ずっと変わらずそこに在り続ける景色が私にはずっと支えで力をもらえる存在だと言えば、もうわかって頂けますかね?」

「はい。素敵です。とても」


二人で分かり合ってるかのようなやり取りをする。

そして、前に屋上で二人で話していた時のことだと気付く。


「私もあのREIジュエリーの看板を見つけた時から、ずっと憧れです。私もずっと変わらずに輝き続けられるそんな女性になるのが理想です」

「そうですか。あれを見つけてしまうなんて凄い方だ。あなたならきっと叶えられるでしょう」

「REIジュエリーってうちの看板・・・? もしかして、会社を立ち上げた時からあるあの看板のこと?」


そして母親もそこでようやくその話だと気づいて尋ねる。


「あぁ。ちょうどあの看板がうちの屋上からよく見えてね。君が頑張っているんだなとあの場所から見つけた時は嬉しくてね。それから何年経っても変わらずあのまま存在してくれてることで、随分救われたよ」

「そう・・・。ちゃんと見つけてくれてたのね。どうしてもあの場所がよかったの。あなたの少しでも側に存在していたかった。私の存在を忘れてしまわないように。私のあなたへの想いをあの看板に込めて。ずっと変わらずあの場所で存在したかった」


透子の言った通りだった。

屋上から見えるあの場所の看板は、母親からのメッセージだった。

そしてそれをちゃんと受け取っていた親父。

もう変わってしまったと思ってた二人の想いは、ずっと何年も変わらずそこに存在し続けていた。

誰にも知られず、誰にも気づかれず、お互いにも言わずに。

それは言葉にする必要もなくて、ただそこに在り続けることで、二人の想いはずっと証明されていた。

何十年も変わらずそこでお互いを想い合っていた。


「透子。すごいね。ホントに二人そうだったんだ」


やっとその事実を確認出来て嬉しさが込み上げる。

決して目に見えるモノがすべてではなくて。

誰にも知られなくても、お互いがわかっていればその想いは存在し続ける。

一緒にいなくても、離れていても、きっと心だけは常に二人は寄り添っていた。

透子に出会わなければオレも知ることが出来なかった。

逃げなければ、ちゃんと向き合えば見えてくること。

一生気付くことが出来なかったことかもしれない事実。

だけど透子がただいてくれることで、自分で気づけない大切なことをオレに気付かせてくれる。

これからはオレもそんな存在でありたい。

オレがいることで透子の大切なモノを一緒に守っていきたい。

そして、親父や母親みたいに、どんな時もお互いを想う気持ちを大切にしていきたい。


どうなるかと思った食事会は、オレにとって、オレたち家族にとって、とても意味ある時間になって。

それはきっと透子がいてくれたからだと、改めて実感する。


食事会から帰って来て、まだ二人でいたくて、透子の部屋で一緒の時間を過ごす。


「透子。今日はホントにありがとう」


そしてソファの隣で座っている透子に改めて気持ちを伝える。


「こちらこそ。すごく素敵な時間が過ごせて嬉しかった」


そう言いながら笑顔で返してくれる透子。


「なんかさ。いろいろありすぎてオレの中でまだ全然整理出来てないんだけど」

「私も。なんかビックリすること多くて」

「だよな。まさか透子とそんな昔に出会ってたなんて思ってなかった」

「ホントに。まさかあの時の美少年が樹だったとは」

「もしかして、その時からすでにオレに惚れてたとか?」

「はっ!? 樹いくつだと思ってんの!? 私が高校生の時にその当時の樹ってただの子供だし。そんなん絶対ありえない」


いや、わかっていても、面と向かって子供だとか、ありえないとか、そんな全力で否定されるとちょっと傷つく・・・。


「そんなムキにならなくても。そっか、そうだよな。子供だったか、オレ」

「ハルくんと変わらなかったからね。でも可愛い子だなぁとは思ってたよ」

「ホント? あ~あ、その時もう少しオレが大人だったら、その時の透子とどうこうなれてたかもしれないのに」

「いや、なってないでしょ(笑)」

「だって、オレ透子、初恋だよ?」

「えっ!!??」


そんなに驚くこと?


「今思えば、きっとあの感情初恋だったんだな~って思う」

「えっ? それホントに言ってんの? 冗談じゃなくて?」

「冗談なワケないじゃん。あの時はそれが恋だなんてわかんなかったけど」

「恋愛まともにしたことなかった樹が?」

「透子がそれ言う? でもまぁそうなんだけど。でもそれってさぁ、もしかしたら透子のせいだったのかも」

「はっ!? 私!?」

「そう。オレも小さい時の記憶でさ。なんとなくうっすらとしか実は憶えてなかったんだけど。どこかの店であの当時オレに優しく接してくれたお姉さんがいて。ずっと笑顔で元気に楽しそうにしているその人がやけに目に入って眩しく見えたんだよね。それで優しい笑顔でオレに話しかけてくれたのが、子供ながらにやけにドキドキしてさ。オレ子供の時から素直じゃなくてちょっと冷めた子供だったっていうか、他人にもそんなに心開けなくて。そんなオレに唯一そんなこと気にせずに明るく優しく接してくれたのが、多分透子だったんだよね」

「ホントにそれ私?」

「当たり前だろ。母さんと話してた時、どんどんその時のこと想い出して繋がっていった。あの店だよ。そのお姉さんと出会ったのは」

「そっか・・・。ホントにそうなんだ・・・」


あの頃は当然そんな気持ちよくわからなくて。

ただ、よく行く店によくいるお姉さんがいたら嬉しかったとか、そんな程度の気持ちだったけど。

でも、小さいながらに、その姿を見つけると嬉しくなって、気にかけてほしくて、笑いかけてほしくて。

今思えば、そんな風に感じたのは、きっとそれっきり。

それからは、同じように感じた相手は現れなかった。


そっか。だから、オレは誰にも好きだなんて感情を感じなくて、本気にもなれなかったんだ。

無意識にオレはきっとそんな誰かを好きになる気持ちを、あんなクソガキの時にすでに味わっていた。

きっとそれが俗に言う、初恋ってやつなのかもしれない。



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