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入念な下調べもあってか弦さんの教室まで思いの外すんなり辿り着けた。
コンビニや歯医者さん幼稚園などの分かり易い目印があったので私にとっては有り難かった。
迷う事が想定内なためけっこう早く出たので15分前には着いていた。
白い一戸建て。
出窓には色とりどりのお花が置いてある。
窓から中の様子をうかがってみると壁には一面に絵が飾られている。
(生徒さん達の絵かなぁ、どれも上手。)
(どうしよう、もう入ってもいいかな、まだ準備とかあってお邪魔したら悪いし…)
そんなことを考えて迷っていると窓越しに中の
弦さんと目が合った。
「いらっしゃい、由布ちゃん。早かったね!」
と弦さんがドアを開けてくれた。
「少し早く出できたので…。早すぎました?」
「全然!早く会えて嬉しいよ!」
(まただ。そうそうこの感じ。どっちの弦さんも嬉しくなるようなことをさりげなく言うのよね…。)
中に入ると絵の具の匂いが立ち込めていた。
「由布ちゃん、匂い大丈夫かな?今油絵の具で
作品を仕上げていたからさ。慣れていないと気になるだろうから。」
「いえいえ、なんか芸術家って感じで素敵な匂いです。」
(芸術家って感じで素敵な匂いって…。 なんかイマイチだったかな。)
もう少し気の利いた事言えば良かったかなぁなんて思っていると、
「油絵の具の匂いは苦手な人も多いけど、そーかそーか。由布ちゃんは素敵な匂いって思ってくれるんだな…。」
弦さんは少し驚いた表情ではあったが嬉しそうにでもどこか切なそうな…なんかそんな表情をしていたように私は感じた。
その表情の理由が後々にわかるなんてこの時はまだわからなかった。
そして、私は確認しなければならないことがある。
弦さんの手を見てみると何も’光るもの’はついていなかった。
ひとまずホッとはしたが確かにこの前は見た気がしたけど今は絵の具で汚れてしまうから作業中はとっている場合もあるし…。
結局モヤモヤは晴れなかったが教室が始まるのはもちろん楽しみだったのでいちばん後ろの席に座って生徒さん達を待っていた。
コメント
1件
うわあ、由布ちゃん、ちゃんと迷わず辿り着けたんですね!しかも15分前到着って、しっかり者だなあ。でも窓から中を覗いて「入っていいかな…」って迷う感じ、すごくわかります。あの一歩がドキドキしますよね。 それにしても弦さんの「早く会えて嬉しいよ!」ってセリフ、さらっと心にグッとくるやつです。由布ちゃんの心の声で「まただ。そうそうこの感じ」ってツッコんでるのも可愛い。そして油絵の具の匂いを「芸術家って感じで素敵」って言った後のモヤモヤと、弦さんの切なそうな表情…。なんであんな顔したんだろう、すごく気になります。