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「あの――」
「契約が先っす」
質問をしようとしても、スペードはそれだけ言って、人差し指で自分の口を押さえていた。ヒミツ、ということだろうか。
私は、小さな声で風の精霊を呼んでみた。
「風の精霊さん、居ませんかー?」
すると、クスクスクスと笑う声と、ともに一陣の風が吹いた。
「珍しいな、珍しい。でも、もう契約してる人間が、風の精霊に何の用? ぼくらは当分必要無いんだけど?」
小さな羽をパタパタさせて、十人位の小さな精霊達が姿を現した。必要ないってどういうこと?
「うん、知らないで来たの?」
「私は、闇の精霊に浄化魔法を使える様にしてもらいたいの。その為に、精霊の契約の指輪を集めているの」
「うん? あぁ、なるほど。そっちの契約か。いいよ、退屈してたし、おいらがついていってあげる」
そう言って、一人、黄緑色の髪の子がふわりとこちらに舞い降りてきた。
「はい、指出して?」
すごく、簡単に契約出来そうでちょっと怖い。でも、魔物が寝ている間に終わらせたいし、いいよね。
私は、右手をだす。
するりと、小指に指輪がはまった。
「いいよ、おいら達の名前はね、シルフィ、真名はジンだよ」
私は小さく呟いた。――この魔物と小さな魔獣を浄化して。
「ジン!」
ビュゥと、暖かい風が吹きロックウェアーモウルを包み込む。
さらさらさらと、大きな身体が砂粒のようになり、キラキラと上空の穴から天に向かって昇る。
いつもの浄化魔法の時に見られる光景だ。
あ、しまった! アリスがいない時に浄化魔法を使っちゃった。あれ、でも。
自分の手をグーパーグーパーしてみる。
少しだけ、喪失感はあるものの、普通に動けそうだ。風の浄化魔法は魔力の渡す量が少ないのかな? 火の浄化魔法のあとに水の浄化魔法も使えた時みたいに。
頭に? を浮かべていると、スペードがパチパチと手を叩いていた。
「いやぁ、流石っすね。これであの眠たがりの魔物も心穏やかに精霊に戻ることが出来たっすね」
ん? 今何て言いましたか?
「あれ? お知りじゃないっすか? 魔物は精霊が魔の力に傾き過ぎた姿だって。先程のリサちゃんの浄化魔法で、精霊として生まれ直したのを――」
「え? 初耳です……」
「あー、色々説明を受けていないっすか?」
説明と言われても、この世界にぽーんと落っこちてきて、聖女じゃないけど魔女になれ! だったし、うーん。私は何を聞いていないのかが分からない……。
「リサちゃん!」「リサ様!!」
二人の声が遠くから聞こえる。
「あー、時間切れっすね」
そう言って、スペードは帽子を深く被り直し、
ピィーーーーー
指笛を鳴らした後、風の精霊を呼んで岩を駆け上がって行く。
「これ、返却よろしくっすー」
ポイっとアリスの剣を私に向かって放り投げた。投げたら危ないですよ!!
わわっと、下で構えていると、風の魔法がかけてあったのか、ふわりと手の中に落ちてきた。
よかった、アリスの大事な物かもしれないし、私を助けてくれる時に使ってる剣だし……。私はぎゅっと、アリスの剣を抱き締めた。
「それじゃあ、またっす! リサちゃん」
スペードはそう言って、一人闇の中へと姿を消した。
またって……。正直もう、関わりたくないなぁ
でも、私の知らない精霊の事やこの世界の事、色々知ってる口振りだった。
首輪をつけてでも、捕まえておいたほうが良かったのかな?
「リサちゃん!」
アリスが、すごい勢いで走ってきた。
「アリスちゃん、大丈夫だった?」
へにゃと笑いながら私が聞くと、アリスはぎゅっと抱き締めてきた。
「アリスちゃん、痛いよ」
持っているアリスの剣が、真ん中にあって、当たってるとこが痛いです。一回、離れてもらえませんか。
「ねぇ――」
コメント
1件
うわあ、風の精霊シルフィかわいい……! しかもめっちゃあっさり契約してくれて笑ったw 「退屈してたし」って、精霊も暇なんだな〜って親近感湧いた。 魔物が精霊の濁った姿だったって初耳で、リサちゃんと同じく「え?」ってなったよ。スペード、情報小出しにしてくるところがずるい……でもまた会いたくなっちゃうキャラだね。 最後のアリスの抱きしめ、剣が当たって痛いってとこでちょっと和んだ🤍 重い展開の後の温かさが沁みる回だった。