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[今日も、雨か……]

学校の窓の外を覗き、僕はため息をついた。

雨は嫌いだからだ。

けれど……昨日、少し好きになった気がする。

あの少女が、僕を雨の世界へつれていってくれたから。

もう一度会いたい。あの少女に。

今日1日は、ずっとその事を考えていた。


ーー

放課後になり、下駄箱で靴をはきかえ、昇降口へ出る。

外は、雨特有の匂いと、音が響き渡っていた。

[今日も、雨ね]

そんな音の中でも、はっきりと聞こえた声色。

目の前には、僕がずっと会いたかった少女が佇んでいた。

[いい加減、風邪引きますよ。それに、寒くないんですか?]

[なにいってるの?寒いに決まってるでしょう!]

[なら上着着ましょうよ!?]

[私、絶対に風邪引かないので!]

[それ昨日も聞きました!全然言うこと聞かないですね!……僕の上着でも着ててください!]

僕は上着を脱ぎ、それを少女へ手渡した。

[そしたら君が風邪引いちゃうじゃん!]

[僕はいいんですよ!気にしないで着てください。むしろ着てくれないと僕の善意が無駄になりますから!]

[それじゃあ着てあげるよ!]

少女が満開に咲いた花のような微笑を浮かべた。

僕はその顔を見て少し照れくさくなった。

それを誤魔化すように、僕はぶっきらぼうに告げた。

[せいぜい着といて暖かいとで言っておいてください!]

[暖かーい!]

[素直な人ですね!]

この人と話すのはとても楽しい。

[あっ、私が雨の世界へつれていってあげる!目を閉じて!]

少女の指示に従い、僕は目を閉じた。

[目、開けていいよ!]

僕はゆっくりと目を見開いた。

[……!]

その美しさに、圧倒された。

紫陽花が咲き誇った神社に、雨が降っていた。

それも、天気雨だ。

晴れているのに雨が降っている。

[綺麗でしょー!ここ、好きなんだ☆]

天真爛漫な表情を浮かべ、無邪気に笑い声をあげる少女。

[ああ……!本当に……綺麗だ…]

少女と風景があまりにも美しすぎて、僕は涙をこらえ、呟くのだった。


雨が好きな彼女と雨が嫌いな僕

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