コメント
3件
夢ちゃんやっぱり書くの上手! 惹き込まれる感覚ってこういうことを言うんだって思った! これからも頑張れ( ੭•͈ω•͈)੭
[今日も、雨か……]
学校の窓の外を覗き、僕はため息をついた。
雨は嫌いだからだ。
けれど……昨日、少し好きになった気がする。
あの少女が、僕を雨の世界へつれていってくれたから。
もう一度会いたい。あの少女に。
今日1日は、ずっとその事を考えていた。
ーー
放課後になり、下駄箱で靴をはきかえ、昇降口へ出る。
外は、雨特有の匂いと、音が響き渡っていた。
[今日も、雨ね]
そんな音の中でも、はっきりと聞こえた声色。
目の前には、僕がずっと会いたかった少女が佇んでいた。
[いい加減、風邪引きますよ。それに、寒くないんですか?]
[なにいってるの?寒いに決まってるでしょう!]
[なら上着着ましょうよ!?]
[私、絶対に風邪引かないので!]
[それ昨日も聞きました!全然言うこと聞かないですね!……僕の上着でも着ててください!]
僕は上着を脱ぎ、それを少女へ手渡した。
[そしたら君が風邪引いちゃうじゃん!]
[僕はいいんですよ!気にしないで着てください。むしろ着てくれないと僕の善意が無駄になりますから!]
[それじゃあ着てあげるよ!]
少女が満開に咲いた花のような微笑を浮かべた。
僕はその顔を見て少し照れくさくなった。
それを誤魔化すように、僕はぶっきらぼうに告げた。
[せいぜい着といて暖かいとで言っておいてください!]
[暖かーい!]
[素直な人ですね!]
この人と話すのはとても楽しい。
[あっ、私が雨の世界へつれていってあげる!目を閉じて!]
少女の指示に従い、僕は目を閉じた。
[目、開けていいよ!]
僕はゆっくりと目を見開いた。
[……!]
その美しさに、圧倒された。
紫陽花が咲き誇った神社に、雨が降っていた。
それも、天気雨だ。
晴れているのに雨が降っている。
[綺麗でしょー!ここ、好きなんだ☆]
天真爛漫な表情を浮かべ、無邪気に笑い声をあげる少女。
[ああ……!本当に……綺麗だ…]
少女と風景があまりにも美しすぎて、僕は涙をこらえ、呟くのだった。