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ベルツが「廃村」と呼んだ場所は、砂塵に埋もれかけた石造りの残骸の集まりだった。
ルイは、マイロを腕の中から下ろすことを拒むように、一軒の崩れかけた民家に足を踏み入れた。
「……ベルツ、ここか」
「ええ。僕の『可愛いお友達』が管理しているはずなんですがねぇ……おや?」
ベルツが灯した魔導ランプの光が、埃の舞う室内を照らし出す。
そこには、ボロボロのキャスケット帽を目深に被り、
ぶかぶかのポンチョに身を包んだ少女が、樽の上に座って優雅にリンゴを齧っていた。
「……遅いよ、ベルツおじさん。お腹空いて死ぬかと思ったじゃん」
銀髪のボブヘアを揺らし、少女――ネネが樽から飛び降りる。
彼女の視線がルイに止まった。
「わぁ……っ! すごい、本物だぁ!」
「…いや、誰だよ!?」
「ネネは世界一可愛い情報屋だよ。」
ネネはルイの耳元に顔を寄せた。
「『守らなきゃ』って顔に書いてあるよ。でも、さっきからあの子を追いかけて『好きだよ』って叫んでる。」
「……っ!?」
図星を刺され、ルイの身体が強張る。
義務が七割、抑えきれない情愛が三割。
その「こちゃこちゃ」とした不器用な葛藤を、初対面の子供に見透かされた羞恥と恐怖。
「可哀想なマイロちゃん。守ってくれてるつもりのお姉様に、こんなに『欲情』されてるなんて知ったら、どう思うかなぁ。」
その瞬間、空気が凍りつくような、鋭い破裂音が響いた。
ネネの指先から数ミリの距離。ルイの頬をかすめるように、巨大な銀の棘が床から突き出していた。
「ルイ姉から、その汚い手を離せと言ったはずですが、聞こえませんでしたか?」
マイロはそのままネネを締め上げる。
「う…うげっ…ゲホッ」
マイロの周囲に、どす黒い銀の魔力が渦巻いている。
彼女の翡翠色の瞳は、かつてないほど激しい怒りに燃え、その視線だけでネネを圧殺せんばかりの勢いだった。
「…ありえないですね、私のルイ姉を辱めるような真似をして。大罪ですよ!」
マイロの叫びが廃屋を震わせる。
あまりの怒りに、マイロの目からは水色の涙が零れ落ちていた。
「ルイ姉の心にあるものは全部私だけのものなんですから!」
天神みねむ!クリスタルがない人