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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「…は?お前ほんとにイカれたのかよ」

「真希さん、コイツは元々ですよ」



現在午前5時、普段ならまだ寝ているであろうこの時間に俺たちは食堂で何をしているかというと、任務のお知らせを受けている。

それも長期に渡る出張任務、当然朝早くに叩き起された俺たちは不満マックスなわけで。



「いい加減にしろバカ目隠し!そういうのは1週間前ぐらいから言っとけ!!」

「何でよりにもよって当日なのよ!ふざけてんじゃないわよ!?せめて前日にしなさいよ!」

「しゃけしゃけ!!明太子ツナマヨ!」

「アンタ…マジで頭おかしいんですね」



全員目の前でにやにやと笑っている目隠し野郎に向かって文句を言い放つ。五条はそれを宥めるでもなく、ただ一言。



「上層部やっつけられるかもしんないよ?」






てなわけで様々な交通機関を乗り継いで、飛行機で7時間、ようやくお目当ての国に到着した。朝ご飯も昼ご飯も全部飛行機の中で済ましたので、後はもう依頼主の所へ行くだけだ。



「はい着いたー、ここだよーん」

「……いやいやいや!?どう見ても城じゃん!」

「依頼主って王様とかだったりするのか?」

「パンダ…惜しい!残念!ま、会えばわかるよ」



相変わらずろくな説明もなしにデカすぎる門へと向かっていった。門には6人の屈強な男達が立っていて、一睨みされただけで足がすくみそうなぐらい目つきが悪い。その怖い人たちに臆することもなく五条は、ふらーっと近づいて行った。



「やぁやぁ!遅くなってごめーん!」

「…五条悟様でいらっしゃいますね、どうぞ。中でグルッペン・フューラーがお待ちです」

「おっけーありがとね!…ほら置いてくよー?」



グルッペン・フューラーという聞き覚えのある名前に全員でなんだったかと首を傾げていると、いつの間にか門をくぐって居た五条から声がかかった。俺たちはこんな異国で迷子になってたまるかと駆け足で門をくぐって行く。



建物へと続く通路には大量の監視カメラと、何十人もの人間が居た。全員微動だにせず、目だけで俺たちを追ってきている。人生で初めて感じるこの異様な空間に違和感を覚えた。

長い石畳の道を進み切ると、上から監視カメラがウィーンと音を立てて降りてくる。パンダがそれに驚いて狗巻と衝突してずっこけていた。



『――生体認証、クリア』

『名前をご記入ください。――ゴジョウサトル』

『――年齢29歳、生年月日1989年12月7日、所属東京都立呪術高等専門学校一年担任。生得術式無下限呪術、領域展開無量空処、反転術式使用可能。好きな食べ物甘いもの、嫌いな食べ物アルコール。趣味・特技無し、ストレスは上層部絡み。

データベースから、個人情報を確認しました。本人確認を開始いたします。』


『五条悟と乙骨憂太との関係は』

「超遠い親戚」

『――五条家の奥義と呼ばれる技は』

「虚式 茈」

『本人確認完了。――認証コードを入力してください』

「やっと終わったー…」



『はい通ってどうぞ。10秒後に扉閉めるからはよ入りや、…生徒さんボーッとせん!閉まるよー』



ツッコミどころの多すぎる現象に生徒は全員ポカンと呆けた表情で、五条とAI?のやり取りを見ていた。すると突然流暢な関西弁が監視カメラから流れてきたと思えば、10秒で扉が閉まると言う。慌てて俺たちは扉に滑り込んだ。



「…ちょ、悟!今のなんだよ!?」

「え?あぁ、ここセキュリティ重視だからねー」

「セキュリティ重視で済まして良いの!?」

「高菜!こんぶしゃけ!!」

「毎回こんな感じだし、慣れたら別にかな」



流れるように五条先生の個人情報が筒抜けになっていたが、それでも良いんだろうか。術式のことまで全てバレているし、というか何でそんなに詳しいんだ。俺たちですら五条先生と乙骨先輩の関係が超遠い親戚だなんて知らなかったのに。



「良い?マジのガチで偉い人だから暴言とか絶対ダメだからね??」

「1番心配なのはアンタでしょ」

「いや僕は大丈夫、でも君らは多分無理かな」



真希さんと釘崎が盛大にオラついていると、遠くからザッザッという規則的な足音が近づいてきた。



「なになに何の音!?足音!?」

「お久しぶりですね、当主様。それから初めまして生徒の皆様。遠くからよく来てくださいました、朝から疲れたでしょう?会談を終えたら談話室でごゆっくりお過ごしくださいね。…客人を総統室までご案内しろ、危害を加えれば殺す」

「ハッ!!…それではご案内させていただきます。こちらです。」



先頭に立っていた女性が俺たちに向かって敬礼をし、とても丁寧に挨拶をしてくれた。細身でほわほわとした雰囲気の人だから、少し緊張がほぐれた。と思ったらくるりと後ろに居た十五人の男性に向かって、先程のほわほわした雰囲気など欠片も見せない語気の強い口調で命令をしていてビビり散らかした。



「あの隊長いつ見てもカッコイイよね〜」

「はい、我らが隊長は頭脳が発達しておられるのです!戦闘面でも素晴らしい…ってすみません、つい…」

「あの人可愛かったわよね〜、肌綺麗だったし」



どうやら部下はあの隊長をとても慕っているらしい、全員楽しそうに彼女のいいところを口々に言い合っている。先程の緊張感も薄れ、総統室に着く頃には和気あいあいと談笑できるレベルになっていた。



「到着いたしました、ここが総統室です」

「それでは我々はこれで」

「案内ありがとねー!」



全員が同じタイミングで敬礼をして、速やかに退却していった。総統室の扉には豪華な装飾が施されていて、人目見ただけでも圧がすごい。扉の両隣りに居た男性が、扉に手をかけてゆっくりと扉を開いて行った。





「…久しぶりだな悟。アイツらは元気か?」

「相変わらず老害共は元気いっぱいですよ」

「はぁ……全員心不全で死ねと願っておこうか」


「さて、本題に入ろう」




目に飛び込ん来たのは、輝かしい金髪に血のような赤黒い目。とんでもないイケメンだ、ヤバい五条先生レベルでイケメン。というかお前…!!敬語使えたのかよ…っ!?バリトンで話しかけてくる度空気が重くなる気がする。

本題とは、一体なんのことだろうか。




「今回もただの護衛だ、あいつらに近付く化け物共を蹴散らしてくれれば良い」

「簡単に言いますけど…あの人達エグいの引き寄せるから大変なんですよ?」

「当然だ、我々は戦争国家。多くの人間を葬ってきている、志半ばで死んだ奴らの呪いは恐ろしいものだな」

「前回のゾムさんが巻き込まれたアレ、特級ってレベルじゃなかったですからね??」

「しょうがないだろ、ゾムは一人で10万でも20万でも殺せる奴だ。背負う呪いは段違いさ」

「術式もなしでそれホント化け物ですからね?」



淡々と進んでいく話に全くついていけず、全員は?という顔をしている。それがどうにも面白かったらしい総統様は、ふふ、と笑っていた。

術式もなしに一人で10万なんて人じゃない、人を殺しているなんて、そんな…と全員嫌悪の目を向けている。



「あぁ、彼らは戦争を受け入れられない様だ」

「当たり前でしょ、ただの学生なんだから」

「お前の生徒だからいけると思ったんだが」

「…俺と違ってまともなんだよ」



こんな人達の護衛をしろなんて、出来ない、人殺しを護るなんてしたくない。気持ち悪い、何でそんな平然としているんだろう、何百万の人を殺してきている癖にのうのうと生きていられるのは、なんでなんだろうか。



「…人殺しを護れとか無理」

「…何で生きてられるんだよ」

「拒否権は無いぞ?護らないとお前らを殺す」

「は?グルッペンそれ聞いてねぇよ!?」

「……仲間を罵倒されてキレないとでも?」



ビリビリと肌が焼けるような殺気を感じる、ヒュッと息を飲んだのは一体誰だろうか。息が詰まって上手く呼吸が出来ない、これが何百万も殺してきた奴の殺気だと思うと、末恐ろしいものを感じた。人の体温を感じさせない冷たい目が俺たちを射抜く、たら…と静かに冷や汗が流れた。


バンッという音が部屋に鳴り響く。



「グルッペーン!!悟来たってホンマ〜………え、何この空気。怖、何殺気向けてんのお前?」

「ゾム…いや何でも無いゾ!悟はお前の横だ!」

「な、なぬぅ!?…怖い怖い怖いなんでそんな怖い顔してんの皆、何?俺なんかした?」

「ゾムひっさしぶりー!」

「無理無理無理この空気でそのノリは無理やって悟!?」



ゾムが入ってきた瞬間、張り詰めていた空気が一気に緩くなる。俺たちは腰が抜けて床に座り込んでいた、ついさっきまでのさっきが嘘の様に朗らかに笑うグルッペンは、別の人間のように思えた。何人も殺してきた奴が入ってきた、と俺たちはゾムを睨みつける。最低だ、人間のクズだと言うように嫌悪感を丸出しにした。



「……え、なん、な、何でこんな嫌われてんの…?俺、マジで身に覚えがないんやけど…」

「あー…ヒント、戦争を知らない子供たち」

「…成程納得かたつむり。はぁ…グルッペン、お前そこに正座しろ。早く、正座」

「ハイ」

「…お前俺の紹介再現してみろ」

「『ゾムは一人で10万も20万でも殺せる奴だ』」

「お前ホンマええ加減にせえよ、この子達は悟とは違うねんぞ。何怯えさすような紹介の仕方してんねん、ぶっ殺すぞ。そんで挙句の果てには仲間罵倒されたって殺気向けたんか?最低やぞやってる事。分かってる?戦争を知らへん子供にそんな言い方したらそら嫌われるわな。お前もし自分の居らんとこで『アイツはロリに人気のないところで近付いた』って説明されたらどう思う?言葉足らへんねん、おい、聞いてんのか?」

「…すみませんでしたあああ!!!」

「俺に謝ってどうすんねん、この子らに謝れや」

「大変申し訳ございませんでした」



怒涛の説教に睨む気力もなくなって、しおしおと項垂れるグルッペンと総統に向ける目じゃない目をしながら淡々と説教をするゾムを怪訝な表情で見る。

五条先生はやっぱこうなるか…みたいな遠い目をしていた。もしかして、俺たち、とんでもない勘違いを起こしていたのでは…と血の気が引くまでそう時間はかからなかった。



「「「「「「すみませんでした/ツナマヨ」」」」」」

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