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『妖様へ願事』〜人を呪わば穴二つ〜
最終章 『人間と妖』
第二話 ムカシバナシ
バシンっ!
『この忌み子が…っ!親が親なら子も子ね!』
『……。』
私の父親は犯罪者だった。父は貴族を刺し殺し、処刑され、母は自殺した。両親がいなくなり、私はずっと一人で生きてきた。
街の人は私を忌み子と罵った。
『父親を犯罪者にしたのは……貴族よ。
貴族が私のお父さんを陥れたのよ。そんな奴、刺されて当然なのよ…っ。』
『おい。そこの汚ぇガキ。』
『!』
『あの父親の娘だよな?生きてたのか。』
『な、何よ……っ。』
『お前の親父が刺し殺した貴族は俺の父親だ。その父親は処刑されたが、俺のやり場のない怒りは募るばかりだ。だから…お前で発散させてもらう。』
『ひっ、嫌…っ!』
子供の力で大人に叶う訳もなく、私は大人達に虐げられた。
痛い、苦しい、助けて、誰か――。
『おい、やべぇんじゃねぇの。こいつ息してねぇ。』
『あ?いいんだよ。こいつの父親のせいで親父は死んだんだ。それに、こんなやつ死んでも構わねぇだろ。行くぞ。』
『お、おう……。』
どうして、誰も助けてくれないの?
私のお父さんが罪を犯したから?私が…要らない子だから?
許せない…。私が不幸なのはお前らのせいだ…っ。お前ら人間なんて、死んでしまえばいい――!!
と、その時だった。
『それなら…人間なんて辞めますか?』
意識が朦朧とする私の前に現れたのは着物を纏い、角を生やした男性。
『…貴方は――?』
『私はベリアン。鬼の妖です。貴方が妖になり、奪ってやればいいんです。幸せも、富も、全て。』
『私、が…全て…?』
『奪われる側から、奪う側になればいいのです。歓迎しますよ。我が主、お狐様。』
『奪う側に、私が……』
差し出された手を握る。
私は人間を許さない。あんな欲にまみれて汚くて最低な者。私が全て奪って、不幸にしてやる――。
こうして私は人間の願いを叶える代わりに代償を奪うお狐様として生まれ変わった。
『ぎゃぁぁぁぁ!!』
『……。』
人間の苦しんでる様はとても見ていて愉快だった。私が受けた苦しみをもっと味わわせてやりたい。
『た、助け――』
グシャッ。
『汚い手で触れるな…穢らわしい。』
命を助けて欲しいと乞う醜い姿…たまらなくゾクゾクした。もっと…不幸になれ。
私が受けた苦しみ以上のことを味わえばいい!
『がぶっ!むしゃ、むしゃ、ごくんっ。』
『満たされますか?人間を喰らうのは。』
『…こんな不味い肉、食べなきゃ私は生きていられないなんて、どうして教えてくれなかったのよ。』
『我々妖の命を繋ぐものは人間の命。普通の食べ物では簡単に満たされません。最初に教えてあげれば良かったですね。』
『……でも、構わないわ。私の手でこうして…人間を手にかけるのは…中々に悪くないもの。だけど、もっと美味しいものが食べたいわ。』
『清い人間の肉の方が美味と聞きますからね。』
『はっ。そんな人間…いたらとっくに喰らってるわ。』
この世に清い人間なんて、いないわ。
みんな自分本位で、他人の命なんて容易く切り捨てられる。そんな連中ばかりなんだから。
『これがあのお狐様の人間だった時の過去だ。』
『ベリアンさんが人間だったお狐様を…妖に…。』
『うん。それなのに赤子を拾ってくるなんて、どうかしてるんじゃないのかな。』
『…それなら、目の前で壊してあげればいいじゃないですか。』
『ラト…っ!』
『人間のことを心底憎んでいるなら、あの赤子を壊したって構いませんよね。』
私は主様の部屋へ向かった。
『っ、おい、待て、ラト――!』
次回
第三話 アナタラシクモナイ
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コメント
1件
お狐様の過去がこんなに重かったなんて…胸が締め付けられました。人間に虐げられた子どもが妖となり、今度は奪う側に回る皮肉。それでも赤子を拾うお狐様の行動に、心のどこかで「人間を信じたい」気持ちが残っているのかな、と感じました。ラトの「壊してあげれば」の一言が次回への禍々しい伏線で、続きが気になって仕方ないです。