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『妖様へ願事』〜人を呪わば穴二つ〜
最終章 『人間と妖』
第三話 アナタラシクモナイ
『ん……。よく寝たわね…。』
(嫌な夢を見たわ。クロウザーが変なことを言うからよ。私は、後悔なんてしてない。人間で居たあの頃より、今の方がもっといい。)
幸せとは呼べないけど、虐げられていたあの頃よりずっといい。
と、その時――。
『おぎゃぁ、おぎゃぁ!』
『!赤ん坊の声……。』
私は急いで寝室から出て、隣の部屋へ向かう。
『おぎゃあ、おぎゃぁ!!』
『こんな五月蠅くて耳障りなものなんて壊してしまいましょうね。』
私は赤子を片手で持ち上げ尖った爪で切り裂こうとする。
『っ、おやめなさい――!!』
『……!!』
ザシュッ!!
気付けばその子を庇っていた。
ポタッ、ポタッ……。
『つぅ…。』
顔に爪痕が残り、痛々しい傷が残る。
畳の上に鮮血が滴る。
『ふぎゃ、ふきゃ…っ。』
『…主様。どういうおつもりです?』
『ラト、誰の許可を得てこの子に危害を加えているのかしら。』
私はラトを睨み付ける。
『おや怖い顔をしますね。私は試しただけですよ。貴方が人間の味方か、妖なのか。』
『!』
『貴方は人間が憎くて妖になったのに、人間の子にうつつを抜かすなんて。』
『……。確かにそうだわ。私は人間が憎くて妖になることを選んだ。人間なんて今でも嫌いだわ。でも。この子は…まだ何も知らない純粋無垢な赤子よ。いくら人間の子だろうと、この子に手をかけていい理由にはならない!』
『……。』
『本気で仰ってるんですか?』
『貴方はご自分の立場を理解していないようですね。』
『残念だよ。主様。』
『きっとその子に気を当てられたんだよね?』
部屋の外から鬼の妖であるベリアン、ルカス、ミヤジ、ベレンが私を冷たい表情で見つめる。
『っ……。』
『人間であることを憎んだ貴方は妖になったのに。今更そんなことを仰るなんて。』
『ベリアン…あの時私を助けてくれたことは感謝してるわ。でも、私はこの子を手にかけることは出来ない!』
『…そうですか。残念です。それなら仕方ありません。』
ベリアンは私の腕を引く。
グイッ。
『な、何を……っ。』
『思い出させてあげましょう。貴方が人間にどんなことをされたか。』
ベリアンが私の頭に手をかざす。
『解・夢幻の誘。』
『ぁ、ぅ……っ。』
(ベリアンの妖術…頭が、クラクラ…する。)
ドサッ。
『おやすみなさいませ、お狐様。』
私は主様をその場に寝かせる。
(ん、あれ、ここは…?)
バシンっ!
『痛っ!』
『この忌み子が!』
『痛い、やめて…!』
(これは、私の人間だった時の…ベリアンの妖術…過去を見せる幻…っ。)
ドカッ、ゲシッ!
『痛い、やめて!誰か、助けて――!』
『おい、これ使ってみようぜ。』
『お、いいなそれ。いてぇだろうな〜。』
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#願いを叶える
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『ひっ!』
(い、嫌…あれは、焼印…っ。今でも思い出す。あの痛みは……っ。)
『ああああああっ!!!』
(いやぁぁぁ!!やめて!こんなの見たくない!!)
『苦しいですか?主様。嫌でも思い出すでしょう。貴方が人間にされたこと。』
私は主様を見つめる。
(助けて、誰か――!!)
『主様。』
『はぁ、はぁ…べり、あん…』
私は目を覚まし眠りにつく赤子を見つめる。
『はぁ、はぁ……。』
『選んでください。』
『選ぶ…?』
『はい。これからも妖として人間の命を弄ぶか。それとも、あの赤子を助けるか。』
『っ……。』
『…ただその代わり代償として貴方の命は頂きます。』
『……。』
『さぁ、どうしますか?』
次回
第四話 セマラレルセンタク
コメント
1件
うわあ、すごく重くて切ないお話でした……。主人公が人間に傷つけられた過去を思い出させられながら、それでも無垢な赤子は守りたいと願う気持ちに胸が締め付けられました。「人間が憎くて妖になった」という台詞が、今の選択をより苦しくしているんだなあ。代償として命を差し出す選択肢……次回、どうなるんでしょう。続きが気になります。