テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
540
.
山中 Side .
インターホンが鳴る前に、もうわかっていた。
「……早すぎでしょ」
ドアを開けた瞬間、にこにこした先輩が立ってる。
「来た」
「見ればわかります」
「会いたかった?」
「……別に」
否定したのに、なぜか満足そうに笑われる。
「はいはい、ツンデレ」
「…違います」
言いながらも、自然と部屋に入れるあたりで全部バレてる気がする。
靴を脱いだ先輩が、部屋を見回してふっと息をついた。
「やっぱ落ち着くな、ここ」
「普通の部屋ですけど」
「柔太朗の部屋だからいいの」
さらっと言うから困る。
「……そういうのやめてください」
「なんで?」
「調子狂うんで」
「じゃあもっと言お」
そう言って距離を詰めてくる。
「ちょ、まだ昼なんですけど」
「昼でも夜でも関係なくない?」
「あります」
一歩下がったのに、結局ソファまで追い込まれる。
そのまま隣に座られて、肩が触れる。
「映画見るんじゃなかったんですか」
「見るよ」
「じゃあ離れてください」
「無理」
即答。
「なんでですか」
「こうしてたいから」
言いながら、自然に肩に頭を乗せてくる。
「重いです」
「嘘つけ」
図星で、何も言えなくなる。
結局そのまま再生ボタンを押したけど、内容なんてほとんど入ってこない。
時々、ちらっとこっちを見る視線が気になりすぎる。
「……先輩」
「ん?」
「僕見てないで映画見てください」
「柔太朗のほうが面白い」
「意味わかんないです」
小さくため息をついたら、くすっと笑われた。
しばらくして、ふと指先に触れられる。
「……何してるんですか」
「手、冷たい」
「普通です」
「普通でも温めとく」
そのまま指を絡めてくる。
自然すぎて、抵抗するタイミングを逃した。
「離さなくていいんですか」
「離す理由ある?」
「……ないですけど」
言った瞬間、嬉しそうにぎゅっと握り返される。
ほんと、わかりやすい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夜になって、部屋の電気を少し落とす。
ベッドに並んで座ったまま、なんとなく会話が途切れた。
「……静かですね」
「うん」
「こういうの、嫌いじゃないです」
ぽつりと呟いたら、すぐ隣で動く気配。
「俺も」
そう言って、今度はちゃんと抱き寄せられた。
「ちょっと」
「いいじゃん」
「……近い」
「今更。ずっと近いよ」
耳元で囁かれて、顔が熱くなる。
「柔太朗」
「なんですか」
「泊まっていい?」
「もう泊まる前提で来てますよね」
「バレた?」
小さく笑う声が近すぎる。
でも、嫌じゃない。
「……ベット、一個しかないですけど」
「じゃあ一緒に寝るしかないな」
「そうなりますね」
わざと淡々と返すと、少しだけ間が空く。
そのあと、優しく頭を撫でられた。
「ほんと、可愛い」
「やめてください」
「やめない」
即答。
少しだけ顔を押し付けて、誤魔化す。
「……おやすみ、はやちゃん」
「おやすみ、柔太朗」
距離はゼロのまま。
外の音が遠くなる中で、手も、温度も、ずっと離れなかった。
.
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!